まだまだ寒い日が続きますが、それでも梅や早咲きの桜が咲き始めたり、日中の陽光を浴びるとぽかぽかと暖かく感じたりと、日に日に春の気配を感じる季節になってきました。

そんな折、ふとスーパーマーケットに立ち寄ると、うど、タラの芽、ふきのとうなどの山菜が野菜売り場に並びはじめている。それを目にしたときの、我々酒飲みの浮かれっぷりといったらないですよね。僕はなかでも、独特の苦味のあるふきのとうで、日本酒をぐいっとやるところなんか想像してしまうともう、いてもたってもいられなくなります。

また、僕の住む東京都練馬区は、東京23区のなかではまだまだ緑の多い地域で、あちこちに農家の無人販売所がある。そういうところにも、さらっと出ていたりするんですよね。地物のふきのとうが。もう、買って帰らないわけにはいかないでしょう。

山菜って、ちょっと調理に対する気持ちのハードルが高くないですか?

  • 近所の無人販売所でゲット

ただ山菜って、ちょっと調理に対する気持ちのハードルが高くないですか? それこそ、食べ慣れたキャベツやもやしなんかの野菜みたいに、てきとうに炒めて、醤油か塩かめんつゆかあたりでなんとなく味つけして、無表情で食べる。というわけにはいかない。天ぷらにするか、おひたしにするか、ふきのとうなら「ふきのとうみそ」にするか。とにかく、いったんしっかりと向き合って、それなりの時間と労力をかけなければいけないような気がしてしまって。

確かにそのとおりだし、だからこそ1年のうち今の時期にしか出会えない喜びを感じることができる。けれども一方で、山菜だって野菜だって、「食べられる植物」であることには変わりはないじゃないですか。つまり、もっと大ざっぱに、ワイルドに調理して食べてしまってもいいのではないか? 山菜たちを。というのが、僕の近年の考えでして。

たとえば「ふきみそ」というとなんだかたいそうな和食料理に聞こえますが、自分で美味しく食べるだけならば、なんとなくで作ってしまったっていい。

フライパンにたっぷり油を熱し、ザクザクっと切ったふきのとうをさっと炒める。そこに全体がしっとりするくらいの日本酒を注いで煮詰めつつ、みそ、砂糖を目分量で足してゆく。ほら、家でみそ汁を作るとき、わざわざ水の量やみその量を計測しないですよね。ちょっと味が足りないな、と感じたら、その味を足す。そんなノリでぜんぜんいいと思うんですよ。

  • ざっくり炒めて煮詰めてざっくり味つけ

で、そうやって作ったふきみそが、さすがは旬の味。問答無用で感動的にうまいんだから、作らなきゃ損ってもんですよ。

  • 日本酒との相性よ……

山菜も野菜も「食べられる植物」

ところで、今回ご紹介するレシピについて。

そんな感じでここ数年、ふきのとうが手に入るたびにふきみそを作っていて、あるとき気がついたんです。もはや作る途中の段階。つまり、刻んだふきのとうを油で炒めただけのものをちょっと味見してみたところ、すでにめちゃくちゃ美味しい。つまりですよ、ふきのとうって、それこそキャベツやもやしと同じく、ただてきとうにざっと炒めただけでも美味しいんじゃないの? っていうこと。これ、ちょっとした革命じゃないですか? 勘違いだったらすみません。

というわけで今回はあらためて、サラダ油、ごま油、醤油、塩、めんつゆなど、オーソドックスな油と調味料の組み合わせをあれこれ試してみつつ、簡単かつより美味しい「ふきのとう炒め」のレシピを探ってみました。

ちなみにこの連載におけるそういう検証の際、以前便利そうだと買ったわりにほとんど出番のなかった、

  • 分割タイプのフライパンがすごく便利

で、現状たどり着いたベストのレシピが以下。ここからはあっという間ですからね? いきますよ?

まず、ふきのとうは刻んだ瞬間からどんどん茶色く変色していくので、全ての下準備をあらかじめしておき、手早く調理するのがポイント。そこでふきのとうを洗って汚れを落としたら、まな板に置いておき、フライパンにたっぷりめのサラダ油をひいて弱火で温めておきます。

そうしたらいざ調理。ふきのとうをざくざくっとラフに切ってフライパンに入れ、中〜強火くらいで炒めていきます。

  • じゃっと炒めはじめると

  • ほんの数十秒でしんなり

おおよそ炒まったら、そこにめんつゆを加えてよく絡ませればもう完成。

  • しんなり

油は、ごま油のような香りの強いものよりも、サラダ油など、クセのないもののほうがふきのとうの香りが引き立って良かったです。また味つけは、醤油や塩だけよりも、甘味もあるめんつゆが合いました。まぁ、このあたりは好みで大丈夫なんですが。

  • 豆腐にたっぷりのせて

この「ふきのとうのめんつゆ炒め」が、シンプルなのにうまいのなんの。油との相性がいいんですよね。ものすごくジューシーで、それを噛みしめた瞬間、あの青苦い香りが口じゅうにぶわっと広がり、甘く、そしてほのかにえぐいような大人っぽい味が、酒のつまみにぴったり。

そのままちびちびつまむのはもちろん、冷奴にたっぷりとのせてもいいつまみになるんですが、僕が今回試して感動してしまったのが、白いごはんとの相性。

  • 炊きたてのごはんにのせて

熱々の白メシと一緒にはふっとほおばると、ごはんの熱によってふきのとうの風味がさらに大爆発。また、旨味の行き渡った油がたっぷりなので、食べすすめるごとにそれが米のひと粒ひと粒をコーティングしてゆき、とろりとした口当たりに。これはちょっともう、官能的とすら言える美味しさですよ。

  • 食材はふきのとうだけなのに

ちなみに後日、もっともっと野菜炒め感覚で扱ってやれと、荒く刻んだふきのとうを豚肉と一緒に炒めてみたところ、それでもちゃんと美味しかったです。

  • ふきのとうと豚肉のめんつゆ炒め

今年は、例年にも増してどんどん消費しようっと。ふきのとう。

作りかた(ひとりぶん)

【材料】

・ふきのとう:5〜6個
・サラダ油(もしくはその他のクセのない植物油):大さじ2
・めんつゆ:大さじ1.5
※分量は目分量で大丈夫ですが、参考まで。めんつゆは3倍濃縮のものを使用しました

【作りかた】

1.ふきのとうを洗い、まな板にのせて刻む準備をしておく
2.フライパンに油をひき弱火で温めておく
3.ふきのとうを刻み、中〜強火で炒める
4.めんつゆを加え、全体をよく絡めて完成