リーズナブルでヘルシーな優秀食材である一方、調理法によっては硬くなったり、ぱさぱさとした食感にもなりがちな、鶏むね肉。これをどう、しっとり柔らかく調理して食べるかは、我々人類の永遠のテーマとも言えるかもしれません。

僕もこれまで、いろいろなレシピを目にしては、そのたび作ってみたりしてきました。すると、ちゃんとした料理人の人が考えたちゃんとしたレシピってすごいですね。毎度、おぉ~なるほど! これはしっとり柔らかだ! と感動する。しかしながら同時に、やっぱりどうしても、味がさっぱりしすぎているというのかな。端的に言うと、脂、油、アブラ感がもう少し欲しい。それをカバーするため、合わせる食材やたれを工夫する。というのが、これまでの鶏むね肉に対するイメージでした。

なので、僕のなかでこれまで、鶏むね肉を使った料理でいちばん満足感があるのは「天ぷら」という結論でした。鶏むね肉をそぎ切りにして、ちょっと面倒だけど、両面にスッスッスッと斜めに隠し包丁を入れ、衣をつけて揚げる。これはもう、強制的にサクサクジューシー感が追加されますからね。ふわっとした肉と相まって、文句なく美味しいです。

ただですね、毎度毎度天ぷらを作るわけにもいかないじゃないですか。そこで先日、“出来心”とでも言うんでしょうか。ちょっと思いついたことがあって、結果がどうなるかもわからないまま試してみたんですよ。その出来心というのがですね、鶏むね肉に「強制的に油を足してやれ」というもの。つまり、ゆでた肉を、オイル漬けにしてみてはどうか? と。

僕はプロの料理人とかではないですし、食材にどういう調理をほどこすと、どういう反応が現れるというような、化学的な知識も持ち合わせていません。すべては興味本位&フィーリング。ところがこれが、なんとぶっちゃけ、めちゃくちゃうまくいってしまったんです! もう、鶏むね肉のベストな調理法はこれかも!? と思ってしまうほどに。

しっとり柔らか、アレンジ幅も無限大

それでは、何度かの試行錯誤した後にたどり着いた「ゆで鶏むね肉のオイル漬け」のレシピをご紹介していきましょう。

まずは、鶏むね肉をぱさぽさにならないよう、柔らかくゆでます。ここに関しては、それこそ世の中には無限と言えるほどのやりかたが紹介されていますので、お好みの方法でけっこう。「ラップをかけて〇〇ワットのレンジで〇分チンして、ひっくり返してまた〇分チン」とかね。ただ、僕が最終的に落ち着いた方法は、「弱火で30分ゆでるだけ」というもの。鶏肉を鍋に入れたら、あとはタイマーをかけてほっとけばいいだけなんで、めんどくさがりの自分にぴったり。かつ、仕上がりも特に文句なし。

具体的な方法はというと、まず、鍋に鶏肉がきちんと浸るくらいのお湯を沸かします。

  • お湯を沸かして

そうしたら、火をいちばん弱火にして、そこに鶏むね肉をぽちゃんと入れます。経験上、常温に戻したりせずとも、冷蔵庫から取り出したもので大丈夫。ただ、ご家庭のコンロや冷蔵庫の性能には差があると思いますので、同様の手順でやってうまくいかなかったらすみません。まぁ、失敗も楽しんじゃおう! の精神で、くれぐれも僕に恨みなどは抱かないようお願いします。

  • 弱火にしてぽちゃん

で、そのまま最弱火で、まぁ、一般的なサイズの鶏むね肉であれば、30分ほどゆでます。ぐつぐつと豪快にゆだらない鍋を見て不安になるかもしれませんが、大丈夫。肉に柔らかく火を通す方法ってそもそも、「弱火でじっくり」が基本なんですよね。

  • 30分後

  • 無事ゆであがりました

ちなみにこのゆで汁には疲労回復効果があるそうなので、塩コショウなどで味を整えて捨てずに飲むことをおすすめします。

さて、肉のほうは水気をふきとり、適当な場所をカットしてみて、もしも中心がまだ生だったりするようなら、鍋に戻して様子を見つつさらにゆでてください。

きちんと火が通っていれば、肉を薄切りにカットしていきます。

  • うんうん、しっとりゆであがっている

そうしたらですね、全体にひとつまみの塩をふり(なんとなく下味があったほうがいいだろうくらいなので、なしでもOK)、清潔な容器に入れ、肉が浸るくらいのオリーブオイルを注ぎましょう。

  • こんな感じ

  • もしくはこういう料理用のジッパーバッグでも

はい。このまま冷蔵庫で一晩ほど置けば、「ゆで鶏むね肉のオイル漬け」は完成。

実は、下味についてもいろいろと試してみたんです。漬ける際に塩コショウやハーブを入れたり。醤油やめんつゆを入れてみたり。けれども最終的にたどり着いたのは、「ほんの少しの塩のみ」というこのスタイル。というのもですね、このオイル漬け肉が全てのベースとなるというか、これをどういう味つけで食べても美味しくて、シンプルゆえに汎用性抜群なんです。

たとえば、肉をお皿に盛って、そこに塩コショウ&ハーブをプラスする。

  • 今回はディルを加えて

それだけでもう、なんていうんだろう、前菜でこの料理が出てきたら、その店に末永く通う! ってくらい、本気でうまいんです。

あとものすごく重要なのが、「しっとり柔らか感の持続」に関して。いくら上手にゆでたところで、それを冷蔵庫にしまっておいたら、やっぱりだんだんと硬くなっていってしまうじゃないですか。肉って。ところがこのオイル漬け、保存食ではないので2、3日で食べきってしまったほうがいいにしろ、その間、しっとり柔らか感がずっと変わらないんです! というか、むしろ、調理直後より柔らかくなってる?

そのあたりのこと、どういう理屈なのか、プロの人にどういうことなのか分析してほしいわ?(という他力本願)。

まぁ、そういうわけなので、たとえばシンプルにわさび醤油でいくも良し。

  • わさび醤油あえ

サンドイッチの具にするも良し。

  • 野菜やチーズを加えれば、味つけは塩コショウくらいでじゅうぶん

なんだかよくわからないけど美味しそうで買った、中華風調味料などをかけるも良し。

  • どう味つけてもうまい

本当に、洋風和風中華風、アレンジの幅無限大の、お手頃&激うま食材となっておりますので、ぜひお試しあれ~。

作りかた

【材料】

・鶏むね肉:1枚
・塩:ひとつまみ
・オリーブオイル:肉が浸るくらい

【作りかた】

1.鍋にお湯を沸かし、沸騰したら弱火にして鶏むね肉を入れる
2.そのまま30分ゆでる
3.ゆでた鶏肉を薄切りにし、清潔な容器に入れ、塩ひとつまみを加え、肉全体が浸るくらいのオリーブオイルを注ぐ
4.半日後くらいからが食べごろ。保存食ではないので早めに食べきる