東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「アーチェリー」にフォーカスする。

選手と一体になって味わう 張り詰めた緊張感と心地よい爽快感

アーチェリーは、的を狙って弓で矢を放ち、得点を競う競技である。体力や技術はもちろん必須だが、わずかな雑念がミスにつながる競技であり、メンタルの強さが勝敗の決め手となる。一流選手たちが、重要な場面でどれだけ平常心を保って正確な矢を放てるかが見どころだ。

屋外の地面が平坦な射場で行う「ターゲットアーチェリー」、森や山などで行われる「フィールドアーチェリー」、室内で行われる「インドアアーチェリー」など競技の種類はさまざまだが、オリンピックではターゲットアーチェリーを実施している。

オリンピックにアーチェリーが採用されたのは1900年のパリ大会。1924年のパリ大会以降しばらく外されていたが、1972年ミュンヘン大会から再び正式競技として復活した。

オリンピックでは、的までの距離を70メートルに設定し競技を行う。標的は直径122センチメートルの円で、中心に当たれば10点。以下、得点となる円の帯が並んでおり、9点、8点……1点と外側に向かって点数が小さくなる。1点の外側は0点となる。

70メートルというと、オリンピック競泳の50メートルプールよりさらに長い距離である。それほど遠くからCDと同じ大きさである中心の10点部分をめがけて矢を放つのだ。まずはその壮大さ、高度な技に圧倒される。

種目は、男子/女子ともに個人戦と団体戦があり、男女混合のミックス戦も行われる。

64人の選手で行われる予選はランキング・ラウンドとも呼ばれ、トーナメントのランキングを決めるために実施される。1人が72射放ち、合計得点で1位から64位までの順位を決められ、1位対64位、2位対63位……とトーナメントでの対戦相手が決定する。

1対1で行われるトーナメントでは、1射ずつ交互に射(う)つ(1射の制限時間は20秒)。1セット3射30点満点で、得点が高いほうの選手に2ポイント、引き分けの場合はそれぞれに1ポイントが付与される。1マッチ6ポイント先取で勝利。最大5セットまで行い、両者5ポイントで引き分けとなった時はシュートオフ(タイブレーク)を行い勝者を決定する。

団体戦は12カ国が参加。ランキング・ラウンドでのチーム3名の個人得点を合計したものが団体の得点となる。1セットは3選手が各2射の計6射。これを最大4セット行い、1マッチ5ポイント先取で勝利となる。1セットは、選手が各2本射ち計6射60点満点で得点の高いほうのチームに2ポイント、引き分けの場合はそれぞれに1ポイントが付与される。4セットを終えた時点で同点の場合はシュートオフ(タイブレーク)で勝者を決定。3名がそれぞれ1射を放ち、合計得点の高いチームが勝利となる。

アーチェリーは自分との戦いというが、相手が高い点を出せばどうしても気持ちに影響するものだ。相手の得点によって、さらにいい得点を出せることもあれば、プレッシャーでミスしてしまうこともある。どれだけ相手に影響されず自分のパフォーマンスを発揮できるかが一番の見どころとも言えるだろう。シーソーゲームになることも多く、一射、一射、最後まで安心はできない。

矢をつがえ、引き、狙いを定め、引いた矢を離すまでの一連の動作を、選手は心を乱さず集中力を高めて行おうとする。その時の心身の緊張は観る者にもはっきりと伝わってくる。観戦する際は、この緊張感をともに味わうのも醍醐味だろう。また、競技場で観戦する場合は、矢が的に向かって飛んでいくスピード感や、矢が的に吸い込まれていく時の爽快感も選手とともに感じられるのが楽しい。

イラスト:けん

出典:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会