前回はデットファンドの最新状況について紹介いたしました。今回は従来の融資とは異なる資金繰り改善手段である、後払いサービスについて説明いたします。

数年前、クレジットカードに代わる後払い型の決済方法としてBNPL(Buy Now Pay Later)が注目を集めました。BNPLの代表的な特徴として、銀行に利用状況を把握されないためクレジットスコアに影響しないことが挙げられます。詳しくは独立行政法人国民生活センターの資料(国民生活2023年5月号)が分かりやすいのでご覧ください。

スタートアップの資金調達方法の多様化に伴い、従来の融資の資金使途として認められづらかった広告宣伝費について、エクイティファイナンスよりも低い要求収益率で資金調達したいというニーズが強く顕在化してきました。資金繰りを改善したい企業のニーズに応えるべく、広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」や、BtoB取引の支払いをクレジットカードで延長できるサービス「Vankable 請求書カード払い」を提供している株式会社バンカブルに話を伺いました。

「AD YELL」は割賦販売法における信用購入あっせんの枠組みに則りサービス提供されています。「AD YELL」で利用可能な広告媒体は割賦販売法における加盟店の位置づけとなる先となり、最新情報は公式Webサイトに掲載されています。

「AD YELL」の審査項目は、基本情報、財務情報、広告情報の3種類です。金融機関による融資と比較して量が少ないと言えるでしょう。「広告情報」を基に広告投資に対するリターン予測を行い、適切なサポート額を算出する点は、「AD YELL」独自の特徴です。審査期間は最短で3営業日です。サービス手数料は広告費100に対して3.0(税込)の水準です。支払は一括払いもしくは4回払いを選択でき、バンカブルによれば『支払いを延長することを目的に利用いただいているため、これまで「AD YELL」をご利用いただいた全ての企業さまが、4分割でのお支払いパターンを選択されております。』とのことでした。原則として担保・連帯保証人は不要です。

「AD YELL」のサービス利用時の会計処理について筆者の見解を述べると、短期借入金・長期借入金・社債の勘定科目は使わずに、クレジットカード利用時と同じく未払金の勘定科目を使用することが妥当だと考えます。

「Vankable 請求書カード払い」は三菱UFJニコス株式会社との協業で2024年9月17日から正式にサービス提供を開始した新サービスです(プレスリリース『バンカブル、BtoB取引の支払いをクレジットカードで延長できるサービス「Vankable 請求書カード払い」を提供開始』)。サービスの特徴を伺うと『企業間取引の請求書を、お手持ちの法人カードで決済できるサービスです。支払期限をカードのお引落日まで延長できるため、資金繰りの改善が可能です。最短1営業日で振込完了、 目前に迫った支払期限にも利用することができます。手数料は業界最低水準の2.7%(税別)です。ご用意いただくのは、法人カードとカード払いに切り替える請求書のみ。財務審査が不要のため書類提出や面談は必要なく、お申し込みはオンラインで完結します。融資やファクタリングなどの従来の資金調達手段よりも、手間なく、早期に利用が可能です。』とコメントをいただきました。

「AD YELL」と「Vankable 請求書カード払い」の利用者は、単品通販やサブスクリプションサービスを展開している企業が多く、ジムや士業といった業種の事例もあります。年商が3,000万円以上あれば利用可能です。

後払いサービスに関する情報提供は以上です。次回はレベニュー・ベースド・ファイナンスについて解説いたします。

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