連載「ワーママのモヤモヤ整理します」は、託児付きランチサービス「ここるく」の経営者で、育休復帰・働き方改革のコンサルティングも手掛ける山下真実さんが、ワーママのモヤモヤを整理・解消に導いていく企画です。
今回、新型コロナウイルスの感染拡大によって、子どもの保育園事情や働き方が変わってモヤモヤしているワーママがオンライン上に集合! 働き方や家族に訪れた変化、未来に向けた山下さんによる提言について、前編に引き続き、レポートします。
『みんなが在宅勤務』になったことによるメリット
この日、オンラインツールを用いて開催された座談会には、4人のワーママが参加。「緊急事態宣言」が出された後は、全員が保育園から登園自粛要請を受け、自宅で子どもをみながら生活しています。
座談会では、「育児と仕事の両立が難しい」という声が寄せられた一方、在宅勤務になったことによるメリットを感じている人もいました。
「以前に比べて、働きやすくなった」と話すのは、2歳と4歳の子どもがいるCさん。Cさんは企業の人事部でフルタイム勤務をしていますが、以前から時間制約のない他の社員との間に溝を感じていたそうです。
「上司といる時間が長い人は、その場の空気を読んだり、上司の機微を汲み取ったりした上で、報告・相談がしやすいと感じます。でも私は残業ができないので、どうしてもコミュニケーション不足が起こりがちで……残業できる人の方が上司も使い勝手が良いなと半ば諦めていました」。
そんな中、新型コロナウイルスの影響で部内の多くの社員が在宅勤務に切り替わり、職場の環境も大きく変わったといいます。
「在宅勤務が推進されたことで、テキストやオンラインでのやりとりが当たり前になり、コミュニケーションが均質化された気がします。さらに、通勤時間がなくなったことで業務時間も増えたので、これまで感じていた壁のようなものがなくなり、悩みが改善されました」。
山下さんは、Cさんのケースと同様に、職場の風土が変わる企業も増えるのではないか、とコメントしました。
「上司に"必死で働いています"というポーズを見せるためだけに残業する、といった風習は、まだまだ残っていると思います。今回の緊急事態をきっかけに、こうしたさまざまな職場の風習・風土に変化が訪れ、社内の風通しが良くなるということも、あるかもしれませんね」。
『家族の時間』に変化も
また、家族の時間が増えたことを、前向きにとらえる意見もありました。
自身も夫もマスコミ勤務で忙しい毎日を送っているというDさん。2歳のお子さんと夫、家族みんなで過ごす時間をとることがなかなか難しかったそうですが、緊急事態宣言の影響で変化があったといいます。
「私は有給休暇を使いつつ、娘を家でみながら頑張れそうな日に仕事をしています。夫は本来、在宅勤務が難しい職場で働いているのですが、夫婦で話し合って、週1日は在宅勤務にしてもらうことにしました。いざ始めてみると、夫も家でご飯を食べられるし、子どもと過ごせてうれしく感じているようです」
またCさんも、夫と共に在宅勤務をすることで、夫婦で協力しながら家事・育児ができるようになったと話します。
「私も10日に1回程度ですが、夫に在宅勤務をしてもらっています。2人いれば、子どもの相手はどちらかがすればいいので、なんとかなります。朝もゆっくりご飯が作れたり、ちょっとした夫婦の会話ができたりと、よかったこともありますね」と話します。
そして子どもがいながらの仕事については、「今は子どものペースに合わせて仕事するしかないです。パソコンを持って仕事をしながらおままごとに参加することも。そんな日常は、仕事とプライベートの境界線が溶けていくような感覚があります」と語っていました。
これに対して山下さんは、「子どもが病気になったら、お母さんが休むという家庭がまだまだ多いように思いますが、夫の方が休んでもいいんですよね。今回の事態をきっかけに、夫側の価値観や働き方も変わっていく気がしています。女性だけでなく、男性だって、"たまには在宅でもいいのでは"と思える家庭が増えるのではないでしょうか」とコメント。
そして、家族のコミュニケーションについても言及。「共働き家庭では、これまで忙しくて、夫婦でなかなか雑談ができていなかったという人も多いと思います。大切な話ってなかなか本題から切り出すのは難しいので、さりげない雑談ができる今だからこそ、日頃話せていなかったシリアスな話をしてみるのもいいかも」とアドバイスをしていました。
『今、心地よくいること』が重要
最後に山下さんは、アフターコロナの社会を見据え、このようにエールを送りました。
「個人的には、日本人のマインドセットがもっと『家族』を重視する方向に変化するのではないかと思っています。今回のことをきっかけに、感染防止目的に限らずあらゆる場面で非接触型にシフトしていくことは恐らく避けられないでしょう。だからこそ接触する相手、すなわち家族との関係性はより重要になってきますし、STAY HOMEでそれを実感した人は多いでしょう」。
「大切なことは、これから起こるさまざまな変化に順応できるよう意識しておくことではないでしょうか。社会のあり方、家族のあり方が変わっていく中でも、ママやパパが『今、心地よくいること』が重要だと思っています」。
今回の座談会では、どの参加者も想定外の事態による戸惑いを抱えながら日々奮闘していることがわかりました。
なかなか収束しない新型コロナウイルスの感染拡大によって自粛が続き、疲れを感じている人も多いことと思います。でも、そんな疲れを感じているのは自分だけではないのだと、座談会を通じて参加者の気持ちがほぐれていく様子を目の当たりにしました。
今回、座談会を取材した筆者自身も、小学生と保育園児の2人を自宅で見ながら仕事をしていて、日々育児と仕事を両立する難しさにイライラしてしまうこともある日常です。でも座談会の取材を通じて、「コロナ後の世界に思いを馳せつつ、今心地よくいよう」と思えてから、少し気持ちが楽になりました。
笑顔でコロナ後の世界を生きる自分の様子を思い描きながら、引き続き目の前の生活を頑張っていきましょう!
山下真実
株式会社ここるく 代表取締役・社会起業家・2児の母
米国留学によるMBA取得、米系投資銀行・金融コンサルを経て、ママになったことをきっかけに子育て支援という全くの新領域へ。人気レストランから選べる託児付きランチサービス「ここるく」を2013年にスタート。サービスを通じて集まる働くママのインサイトと、MBA・コンサルで得た専門知識の両面から、ママ向けサービス開発や育休復帰・働き方改革コンサルティングなども手掛ける。
『第14回女性起業家大賞』、三菱UFJ銀行主催『Rise Up Festa』最優秀賞受賞。