JR東日本は山手線の外側にある武蔵野線・京葉線・横浜線・南武線の環状路線をまとめて「東京メガループ」と呼び、通勤路線として強化している。コンピュータ用語で「メガ」といえば、次は「ギガ」だよね……、というわけで、今回はさらに外側の環状ルートの旅を妄想してみた。使うきっぷは首都圏のJR線に乗り放題の「休日おでかけパス」だ。

「東京メガループ」(左図)をもとに「東京ギガループ」(右図)を設定した

「ギガループ」のために、別料金で私鉄に乗る

今回の旅の行程表

「休日おでかけパス」は、土曜、日曜、祝日と、ゴールデンウィーク(4月29日~5月5日)、夏休み(7月20日~8月31日)、年末年始(12月29日~1月3日)に、東京近郊のJR線が1日乗り放題になるというきっぷ。料金は大人2,600円、小児1,300円。これで「東京メガループ」はもちろん、成田空港や木更津、鎌倉、奥多摩まで行けてしまうというお買い得きっぷだ。エリア内ならどこからスタートしてもいいけれど、今回はあえて大宮駅にしてみた。

なぜ大宮駅かというと、東京近郊のトレインビューホテルを検索したら、「アウルホテル大宮」に、「トレインビュー&鉄道博物館プラン(6,700円~)」を見つけたから。線路がよく見える部屋で、鉄道博物館グッズももらえて、翌朝は鉄道博物館までクルマで無料で送ってくれるという。だからこのホテルに泊まることにして、大宮駅をスタート / ゴールとした。

それでは、大宮駅5時36分発の宇都宮線(東北本線)普通列車宇都宮行でスタート。「えっ!? そっちは『休日おでかけパス』の有効区間だけど、行き止まりじゃないの?」と思うかもしれない。たしかにこっちへ行くとフリーエリアの端になる。ただし、小山駅で水戸線に乗り換えて下館駅で降り、別料金(1,460円)だけど関東鉄道常総線に乗れば、常磐線の取手駅に着く。これで「メガループ」の武蔵野線より外側の「ギガループ」ルートになるわけだ。

小山駅では2分で水戸線に乗り継げるけれど、駆け足になりそうだから1本遅らせた。下館駅には7時29分に到着。関東鉄道常総線の列車は7時37分発の取手行がある。

市販の大判時刻表では、私鉄の時刻は巻末に省略されて掲載されている。常総線を調べると下館駅7時37分発の列車は途中の水海道行となっている。しかし、関東鉄道の公式サイトを調べたところ、水海道駅で取手行の列車に乗り換えとなるようだ。インターネットで検索すれば鉄道会社ごとの詳細な時刻もわかるようになって、いまでは妄想旅行もリアルになった。取手駅には9時4分に到着する。

関東鉄道常総線の水海道~取手間は、全国でも珍しい非電化複線区間。架線のない複線区間の景色は、空が広く見えて気持ちいい……、だろうなあ(妄想)。

「ギガループ」のために、別料金で船にも乗る

取手駅から常磐線の電車で我孫子駅へ。次は成田線に乗り換えて成田駅へ向かうけれど、約30分の待ち時間があるので、ホームの立ち食いそば屋で遅めの朝食を取る。我孫子駅にある立ち食いそば「弥生軒」は唐揚げそばが有名。とにかく唐揚げが大きく、満足度が高い。ちなみに「弥生軒」はかつて駅弁も手がけていた。放浪の天才画家、山下清画伯が働いていた会社でもある。駅弁の掛け紙に山下画伯の絵をあしらっていたという。

我孫子駅から成田線に乗り、成田駅でさらに乗り換えて佐倉駅へ。総武本線の電車で成東駅へ向かい、東金線の千葉行に乗り換え、大網駅から外房線を少し戻って蘇我駅へ。「休日おでかけパス」のエリア内を行くなら、ここから京葉線で新木場駅へ、りんかい線で大崎駅へ、さらに湘南新宿ラインで西へ……、となる。りんかい線はJR東日本とは別会社だけど、「休日おでかけパス」のフリーエリアに含まれる。今回は乗らないけれど、東京モノレール羽田線も乗車可能だ。

しかし、ここでも「ギガループ」のために「別料金大回り作戦」を実行したい。蘇我駅から内房線に乗れば、君津駅までがフリーエリア。ここから別料金(480円)で浜金谷駅に行こう。駅近くの港から東京湾フェリーに乗れば、三浦半島の久里浜港に行ける。久里浜駅から横須賀線につながるというわけだ。料金は700円。所要時間は約40分。ギガルーブらしい、ゆったりとした船の旅だ。

遅めのランチは内房線の木更津駅で調達したい。停車時間が約3分と忙しいけれど、この駅には駅弁「万葉軒」がある。名物は「やきはま弁当」だ。他にも季節の新メニューが並んでいるはず。食べる場所は東京湾フェリーの船内がいいかもしれない。

丸1日で首都圏を一周できる

久里浜駅からは横須賀線で大船駅へ。そして東海道線で茅ヶ崎駅へ向かい、横浜線に直通する相模線の電車で八王子駅へ。横浜線の橋本~八王子間だけは「メガループ」と重複する。八王子駅からは19時23分発の八高線の電車で北へ。高麗川駅から川越線に乗り入れる。

川越駅を20時58分に発車する埼京線の電車が、今回の旅のアンカーだ。すでに外は暗く、景色も見えないだろう。でも、大宮駅に近づくにつれて街の灯が増えていく。その車窓は、夕暮れとともに寂しくなった心をほっとさせることだろう。大宮駅到着は21時18分。早朝5時半すぎに出発したから、約16時間で東京近郊を1周したことになる。電車に乗りっぱなしだけど、地図を参照しつつ、東京の東西南北方面の車窓を妄想しよう。