普段から仕事が楽しくて仕方がない、そんな人も世の中にはいるでしょう。

しかし、仕事の多くはルーティンワークです。だから、「つまらない、めんどくさい」「上司から言われた○○をやりたくない」といった、気持ちを抱きがちです。

しかし、仕事ですから、勝手に、自分の判断だけでやめられない。でも心は動かない、困りますよね。

そこで、やりたくない仕事でも、モチベーションを保ちながらしっかり続けられるコツを、書籍『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる』(アスコム)の著者である伊庭正康氏から紹介してもらいます。

  • 仕事が「つまらない」と感じる時はありますか?

やらされ感がなくなれば仕事が楽しくなる

前回は、やりたくない仕事を、自分の価値あるものに変える方法を紹介しました。

そもそもの話ですが、つまらないこと、楽しくないことが、やりたくないのは当たり前です。 ですから、とにかく「楽しく」する工夫をしましょう。これはビジネスに限らず、勉強でも同じです。

劇的に楽しくする方法が「ジョブ・クラフティング」という理論を使ったものです。これはイェール大学経営大学院准教授エイミー・レズネスキー氏と、ミシガン大学教授ジェーン・E・ダットン氏が提唱しました。

従来の経営学では、作業効率を優先し、上司や組織が分業を進めてきました。その結果、仕事が細分化され、やりがいや喜びを見出せない人が増えてしまったのです。やりがいを見失った働く人のモチベーションをいかに上げればいいかを研究するなかで注目されたのが、ジョブ・クラフティングでした。

ジョブ・クラフティングはやらされ感のあるものを、自分で考え行動することで、やりがいのあるものに変える手法です。仕事に対する考え方を変えれば、仕事が面白くなる、やる気が出ると考え、3ステップでの見直しを提案しています。

やる気を出すステップ1 仕事の意義を見直す

武蔵大学 経済学部経営学科教授 森永雄太氏は、東京ディズニーリゾートの清掃員を例に挙げ、仕事の意義の見直しについて解説しています。清掃員はパーク内の清掃が仕事ですが、役割を掃除係としてではなく、バケツの水で絵を描いたりするなど、パフォーマンスでお客様をもてなすキャストの一員と見直すことで仕事へのやりがいを高めているのです。

誰のために仕事をしているのかを俯瞰的に見直すと、真の意義が見えてきます。例えばテレアポの仕事はあまり楽しくはないかもしれません。しかし、この電話が誰かの役に立つ、誰かを救うかも、と考えると少し見方が変わってきませんか?

やる気を出すステップ2 工夫をちょい足し

私の学生時代の体験談です。大阪のバーに飛び込み営業のアルバイトをしていました。最初はまったく相手にされなかったのですが、オリジナルの「終電早見表」を作って配布したら、だんだん話を聞いてもらえるようになりました。

当時はスマホがなく、携帯で終電を調べることなどできなかった時代です。

「ママ、〇〇線の終電何時やっけ?」

と尋ねるお客様もいるだろうという妄想から生まれた工夫でしたが、大ヒット。お店から評価され、営業に対するモチベーションも高まりました。

やる気を出すステップ3 交流を見直す

ステップ3は人間関係です。会う人を変えたり、会う人との会話を変えたりしましょう。ビジネスシーンを例にすると、おすすめはハイパフォーマーと交流することです。

私も、トップセールスを誇る先輩たちに幾度も同行させてもらいました。

「こんなことやってるんやな」
「まだまだ自分にもやれることあるなあ」

と、彼らの言動から本当にたくさん気付きを得ました。交流する人によって自分が磨かれ、少しずつ成長していくのを感じたものです。いつも会う人に対してなら、話す内容や話し方を普段と変えるのもお勧めです。

仕事の多くは実は単調な作業です。だからこそ、ジョブ・クラフティングが重要なのです。

人間は自分の過去の経験に照らして、楽しくない、好きでないと判断します。しかし、何か新しい発見や気付きを得られたとき、脳は快感を覚え、楽しみを感じるように変化します。例えば、食わず嫌いだった料理を人に勧められて食べたとき、意外なおいしさを感じ、その後そればかり食べてしまうといったことはありませんか。

嫌いだと思っていた食材も、夏バテ防止などの目的(意義)を見出すこと、調理法(工夫)、そして誰と食べるか(交流)を見直すことで、思わぬおいしさが生まれます。ジョブ・クラフティングも同様です。楽しくないなら、楽しくなるような工夫をしましょう。

既存の枠組みや慣習に縛られすぎず、自分の得意や興味を生かした工夫ができるといいですね。

著者プロフィール:伊庭正康(いば・まさやす)

株式会社らしさラボ 代表取締役
営業強化、リーダー強化等、年200回の研修・講演・コーチングに登壇。仕事の悩みに答えるYouTube「研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル」もスタート。『できるリーダーは、これしかやらない』(PHP研究所)、『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる』(アスコム)など著書多数。