連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
【フラット35】Sの金利引き下げ優遇が拡大する!
2014年度補正予算案に、【フラット35】Sの金利引き下げ優遇がこれまでの▲0.3%から▲0.6%に拡大することが盛り込まれました。まだ正式決定ではありませんが、国会の審議・議決を経て、2月中に成立する見込みです。
そもそも【フラット35】(「S」がつかない)は、独立行政法人住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している「全期間固定金利型」の住宅ローン商品です。一定の技術基準をクリアした住宅であれば、都銀、地銀、信用金庫、JAバンクなど、多くの金融機関で借りることができます。金利や事務手数料は、取り扱っている金融機関ごとに異なりますが、2015年1月に最もたくさんの金融機関が提示した金利は過去最低の1.47%(返済期間21年以上、融資率9割以下の場合)です。その背景には、日本銀行の金融緩和政策で住宅ローンの固定金利タイプの金利水準に影響を与える国債の利回りが下がっていることがあります。
【フラット35】Sは、【フラット35】以上の技術基準をクリアした住宅に対する金利優遇策。【フラット35】の金利に対して、当初の5年、10年の金利を引き下げるというものです。これまでは、その引き下げ幅が▲0.3%でしたが、2014年度補正予算案に盛り込まれた内容では、引き下げ幅が▲0.6%になりました。
当初5年間、あるいは10年間とはいえ、1月金利の場合、【フラット35】の金利1.47%から▲0.6%引き下げられると、適用金利は0.87%になります。
1.0%を下回る金利は、まさに変動金利並みの金利水準です。
【フラット35】Sには(金利Aプラン)と(金利Bプラン)がある!
【フラット35】Sには、クリアすべき技術基準のレベルによって、(金利Aプラン)と(金利Bプラン)があり、レベルが高い(金利Aプラン)の金利優遇期間は当初10年間、(金利Bプラン)は当初5年です。これらの金利優遇を受けるには、【フラット35】の基準に加えて、【フラット35】Sの基準に適合することを証明するため、検査機関による物件の検査を受けて適合証明書が交付される必要があります。
なお、【フラット35】Sは、住宅ローンの借り換えには利用できません。
【フラット35】Sの技術基準<新築・中古共通の場合>
(※中古には別途、特有の基準が設けられています)
(※詳細は、住宅金融支援機構のHPを参照してください)
【フラット35】と【フラット35】Sの比較
【フラット35】と【フラット35】Sとで、総返済額の差を一定の条件の下で比較すると、2015年1月金利の場合、(金利Aプラン)は約▲175万円、(金利Bプラン)は約▲95万円、返済負担が小さくなることがわかります。
(※算出条件 借入額:3,000万円、借入期間:35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、金利:年1.47%(2015年1月)の場合)
【フラット35】Sを活用する上での留意事項
【フラット35】Sは、冒頭で述べたように、まだ正式決定していません。2014年度補正予算案の国会での審議・議決を経て決まります。
国会での成立後に開始され、開始日以降に資金を受ける取る場合に対象になります。それまでに融資を受け取ると対象になりませんので注意が必要です。
また、実施期間は最大1年間の予定です。しかも予算金額があるため、途中で予算金額に達する見込みになると終了。つまり、早い者勝ちということになります。
複数の金融機関の【フラット35】Sどうしを比較する場合には、返済総額だけでなく事務手数料も含めて検討してください。また、【フラット35】Sと民間金融機関が独自に販売している住宅ローンと比較する場合は、事務手数料、保証料、団体信用生命保険料も加えて検討してください。
住宅ローンを比較、検討するときには、金利に伴う返済総額だけでなく、コストも含めて行うことが大切です。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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