一般に「相場」と言えば、政治・経済・金融政策を本にしたファンダメンタルズが相場を組み立てていると思われていると思います。それは、決して間違いではありません。しかし、すべてではありません。
実は、企業や、金融機関やファンドなどの会計年度の始まりや新年、そして逆に中間決算や本決算が、相場に大きく影響を与えています。
こうした財務によって影響を受ける相場を、私の造語ではありますが、「財務会計相場」と呼ばせていただきます。
この財務会計関連は、年の半分以上の相場に影響を及ぼしています。
それなのに、個々には、年に一度か二度しか起きないため、うっかり忘れてしまいい、相場でやられて初めて、そう言えば、去年も同じことでやられたではないかと思うことが、私も若いとき、よくありました。
そこで、忘れぬよう頭にすり込もうと調べてみると、結構こうした財務会計の相場があり驚きました。しかも、財務会計という事務的な作業のみならず、局面的にはメンタルにも多大な影響を及ぼしていることです。
それでは2018年も始まったばかりですので、2回に分け、まず1月から見ていきましょう。
【1月】
欧米勢の新年度は、正確には前年のクリスマスを終え、翌日の英ボクシングデーも終えて、土日が重ならなければ12月27日から始まります。
ただし最近は、実質的な欧米勢の新年度は、新年最初の営業日である土日が重ならなければ1月2日からで、この日から猛烈な投機相場が始まります。
この新年であり欧米勢の新年度でもある1月早々のマーケットは、マーケット参加者のメンタルに大きな影響を及ぼします。それは、「(気持ちも新たに)さあやるぞ!」という心理状態に陥ることです。
「さあ、やるぞ!」の気持ちは心機一転頑張ろうということで、一般社会では良いこととされます。
しかし相場の世界では、マーケット参加者の多くが同じ気持ちになってマーケットに同方向に飛び込むと、一気にマーケットのポジションが一方に偏ってしまうため、逆に反動でやられてしまうことが散見され、できるだけ冷静な対応が必要です。
こうしたことは、4月の本邦勢の新年度や9月の欧米勢の実質的な下期スタートでも見られ、警戒が必要です。
なお、1月の投機相場は、1月中旬に一服するのが一般的です。
【2月】
本邦の投資信託(投信)の本決算になり、海外に投資していた資金を戻し円に換えて確定して決算します。これを、レパトリ(レパトリエーション、資金の本国回帰)と言い、まさに円買いが強まるため、相場は円高になりがちです。
【3月】
本邦の多くの企業が本決算を迎え、2月同様レパトリによる円買いが強まります。
【4月】
本邦の新年度になりますが、機関投資家や実需の新年度の計画が決まるのは早くても20日頃ですから、それまでの相場は投機筋ばかりでしかも、本邦の新年度となります。
そのため、1月と同じように「(気持ちも新たに)さあ、やるぞ!」とばかりに、マーケット参加者が大挙して一方向にポジションを傾けることが多く、結局売り過ぎあるいは買い過ぎとなるため、相場は反転しやすくなり、4月は結構やられやすいと言えます。
【6月】
6月末が欧米勢にとっての中間決算となり、1月~6月までの上期の決算を行います。
7月~12月までの下期は7月・8月が夏休み、そして12月後半はクリスマス休暇で休みであり実働日数が少ないため、実質的に中間決算が一番大きな決算処理が行われます。
以下が、2012年の例になります。
2012年4月頃からスペインの財政危機が表面化し、このファンダメンタルズ的な理由から、ユーロ/ドルは大きく4月~5月に掛けて売られました。ところが6月に入り、6月末の中間決算に向けて、売ってきたユーロを買い戻して利益を確定する動きが活発になりました。
この決算絡みのユーロ買いが6月1日から始まったため、上記のチャートのように、ぽっきりと相場がユーロ安からユーロ高に転換していることがわかります。
これなどファンダメンタルズで相場を読もうとしても説明がつかず混乱しますが、実は財務会計相場が影響している典型例だと言えます。今回は年初から6月までを見ましたが、次回は7月以降12月を見てみたいと思います。