メンタルタフネス。これだけ聞くと「打たれ強さ」のようなイメージがわきますが、実は日々私たちが受けているストレスを受け止める大事な力、すなわち「ストレス耐性」のことを指します。ここ一番で失敗できないスポーツ選手などが取り入れている「環境に左右されない」メソッドを取り入れてみましょう。

目標は「ストレスをセルフコントロール」

私たちの体と同じように、メンタルにも「体力」があります。それが「ストレス耐性(タフネス)」、ストレスを受けた際に気分を元に戻す作用とその力です。体と同じように「負荷」と「休憩」を繰り返すことで鍛えることができますが、そのために必要なのが「切り替え」です!

「毎日ずっと悩み続けている」「息を抜く暇がない」……というメリハリのなさがメンタルには一番の大敵ですが「気分が乗らなくて、だらだらと仕事している」「明日のことで緊張して今から焦る」というシーンは、ビジネスでも日常でもよくあること。そんな「環境からのストレス」を振り切って、自分の集中できるゾーン(理想的な心理状態)に切り返るメソッドが『ルーチン』と『サイキングアップ』です。

メンタルタフネスは、いわば「脳と気分の切り替え力」です。ルーチンとサイキングアップを生活に取り入れて、乱されない「心の型」を身につけましょう。

ルーチンでベストな「いつも通り」を発揮

だらだらと仕事をしてしまう原因の一つに「仕事に集中できない」「気持ちが切り替えられない」などがあげられると思います。特に朝起きたときや、休み明けは誰だって気分が乗らないもの。「集中するスイッチ」があれば、もっとサクサク効率よく日々を送れますよね。

私たちの体や心は、とても複雑な認識や理解を日々行わなければならないため、「決まった動作」と「感情や集中力」を結び付け、脳内を整理しようとするシステムを持っています。この機能を活用して、集中・やる気・リラックスのスイッチ・ルーチンを作りましょう。

■ルーチンで心の準備運動を。スムーズなオンオフは「習慣化」がポイント

ルーチンの作り方は簡単。「仕事を始める前にすること」を順番に書き出しておき、毎日その通り実行した後、仕事を始める(集中する)だけです。注意しなければならないのは、「その手順をした後、短時間でも必ず仕事に着手すること」と「スイッチになるまで続ける」の2つだけ。

最初のうちは仕事に手を付けても、ずっと集中する必要はありません、始めて15分で気がそれてしまっても大丈夫。ルーチンをした直後にスマホを見たりしないで、ちゃんと「仕事」をする習慣をつければ、またルーチンをしたときによりスムーズに集中できるようになっているはずです。むしろ気がそれてしまったらルーチンを繰り返すチャンス! 休憩をはさんでルーチンを行い、また集中しましょう。

ルーチンとして脳が覚えるまで、早い人で2週間、だいたい3カ月はかかります。なるべくなら毎日、できるだけ3日は空けずに繰り返せれば習得は目前です。

■やる気を上げるだけじゃない! リラックスのスイッチにもなるルーチン

ルーチンのレシピを決めておくことは、プライベートでも役に立ちます。例えば気になるタスクを残したままで週末になってしまうと、ずっとそのことを考えてしまう……という人にこそルーチンが役立ちます。

「仕事終わり」用のルーチンを決めておけば、集中と同じようにリラックスモードにもすんなり入ることができます。しっかり休んでこそのメリハリ。ルーチンは自分でやりやすいように順番を変えることもできるので、日々の行動をルーチンにしてしまえば安心感があります。

長く続かせるコツは、「ルーチンの中に一つ楽しみを入れる」こと。ハンドクリームを塗ったり、お気に入りの文具を使ったりなど、デスクでもできる工夫はいっぱいあります。

■プレッシャーに感じたら逆効果、一度離れて考えよう

ルーチン行動で注意してほしいのが「プレッシャー化」。「これをやらなかったから失敗した……」「絶対やらなきゃダメ!」と思っている自分に気がついたら、その時点でストップしましょう。

ルーチンはあくまで「自分をその気にさせる」スイッチ。義務でも仕事でもないのですから、自分でストレスを増やすことはありません。ストップしたら1週間ほど、ルーチンにした行動から離れて過ごし、改めてレシピを見直してみてください。

サイキングアップで「クリアな思考」を引き寄せる

「ここ一番!」というときに緊張しすぎや考えすぎでナイーブになってしまう……。よく聞く実力を発揮できない原因に「緊張」を上げる方も多いでしょう。悪者にされがちな緊張ですが、実は落ち込み気味の気分を引き上げ、思考をクリアにしてくれる「圧力(テンション)」にもなるのです。

■緊張≠悪! 思考をクリアにするのは脳の状態がカギ

良い緊張がかかると「体」と「頭」のエンジンが起きだして、一番能力を発揮できる「ゾーン」まで自動的に運んでくれます。緊張をプラスに変える分け目は「気分」。集中できる精神状態(ゾーン)に入る原動力を得るには、緊張を「楽しい!」と受け取る必要があるのです。

「ドキドキ」を「ウキウキ・ワクワク」に変えるのに使えるのが、緊張感と気分のスイッチを作る「サイキングアップ」というメソッドです。ルーチンと同じように、自分の気分を上向きにする「刺激」と「動き」を組み合わせたプロセスを作って、普段から繰り返しましょう。その際に「うまくいく」イメージと組み合わせることで、脳内が盛り上がると思考がクリアになる・ポジティブになるといったプラスの効果も。

気分と体の状態はかなり密接ですので、「これをするとテンションが上がる!」というプロセスを一つ持つだけでも自信が持てたり、体調に左右される不安感が軽くなったりします。自分なりの「好き」を組み合わせて、サイキングアップ・プロセスを作ってみましょう。

■コツは「アップテンポ」、五感を駆使してゾーンに入ろう

上手なサイキングアップ・プロセスの作り方は、「アップテンポ」に注目すること。体を動かしたり五感への刺激があったりすると、体は起きだす準備をします。特に心拍は自分で意識して調節しやすく、脳への影響力が強いので、軽い運動などをプロセスに取り込むと効果的。プレゼンや面接といった緊張するスケジュールがある日は、ビートが速くノリのいい曲を聴きながら、少し早足で出社してみるなどはどうでしょう。緊張のドキドキを「自分でコントロールしたワクワク」にすり替えることができます。

また、「仲間との挨拶」「ちょっとした雑談」なども実用的です。「人とコミュニケーションをとる」というのは、頭を素早く起こす重要なポイント。「ハイタッチ」や「円陣を組んで声をかける」といったスポーツでよく見られる光景は、このメソッドを使用しているのです。

いつもの日常を「成功へのテンプレート」に

ビジネスの世界で緊張や悩みの種は、実力を発揮するうえでの大敵です。突然のプレッシャーや長引く案件に立ち向かうときも、日常生活でルーチンができていれば、嫌なことを引きずらずにすみますね。気持ちのスイッチングでメンタルをセルフコントロールして、ストレスをメリハリに変えていきましょう。