あんまり大きな声では言えないのですが、チャリティーに熱心な人が怖いとずっと思ってきました。たとえば、亡くなったダイアナ妃。王室の一員ですから、チャリティーに熱心なのは“お仕事”と言えるでしょう。彼女はもともとフランクな人で、プリンセスでありながらも、弱い人と同じ目線で物事を考えられるという才能の持ち主でもあった。しかし、違う方向から考えるのなら、不幸な結婚生活で苦しみを抱えた彼女が、自分より弱く非力な人に触れあうことで、自分を癒していたように見えなくもない。
チャリティーに熱心な人には“裏の顔”があることも。ジミー・サヴィルの少年少女への性的虐待
彼女のチャリティーの師は慈善の世界的な象徴、 マザー・テレサでしたが、彼女も寄付金の流用について疑惑がつきまとった人ですし、チャリティーにいそしむダイアナ妃に「もっと傷つきなさい」と言ったそうです。傷つかないと、傷ついた人の気持がわからないという意味なのだと思いますが、お金持ちも貧しい人も、幸せな人もそうでない人も、自分にできる範囲のことをし続けていくのがチャリティーではないかと思うのです。〇〇でなければ、チャリティーに参加してはいけないというのなら、それは単なる“施し”か“道楽”ではないでしょうか。
このようにチャリティーについて、一抹のうさん臭さを感じている私にとっては、チャリティー活動に熱心だった人が、実は犯罪者だったということに、あまり驚かないのです。イギリスのタレント、ジミー・サヴィルはテレビ番組の名司会者で、慈善活動に熱心な人でもありました。その功績が称えられ、王室は彼にナイトの称号を与えています。しかし、彼は自分の番組に出演していた子どもや、彼がボランティアとして活動していた病院の患者、少年院の少年少女に性的虐待を加えていたのでした。彼の生前もこのウワサはささやかれていましたが、それを正直に口にした人がテレビ局から出禁をくらってしまったため、アンタッチャブルな案件として闇に葬られてしまったのでした。まったくどこの国も一緒ですね。
子ども時代のマイケル・ジャクソンを苦しめた父の暴力と暴言
チャリティーに熱心なスーパースターでありながら、子どもに対する性加害の噂を払しょくしきれなかったと言えば、マイケル・ジャクソンを思い浮かべる人も多いことでしょう。20世紀最大のスーパースターでありながら、晩年の彼を見ていると、歌っている時以外は見ていられないというか、なんだか心がザワザワしてしまうのです。
アメリカの貧しい家庭に生まれたマイケルですが、お父さんが兄弟たちの音楽の才能に気付き、ジャクソン5として売り出しはじめます。スターの階段を順調にかけあがっていく彼らでしたが、内面はショービジネス特有の「数字で判断される」ことに傷ついていくのでした。子どもらしく遊ぶことは許されず、練習漬けの日々。特にマイケルを悩ませたのは、父親の容姿に関する暴言と暴力でした。踊りを間違えると、壁に向かって叩きつけられる。兄弟全員に暴力をふるっていたようですが、特にマイケルに対してはひどかったそうです。
リサ・マリー・プレスリーとの結婚でつきまとったある噂
世界的スーパースターとなり、恵まれない子どものためにチャリティーコンサートを開催して、収益は全額寄付するなど、慈善事業家としても名前を高めていくマイケル。ミュージシャンとしても90年代に全盛期を迎えますが、ある子どもに性的虐待を訴えられてしまいます。裁判せず和解してしまったことで「カネに物を言わせて封じ込めた」印象が強くなってしまったのです。
和解後にエルヴィス・プレスリーの娘、リサ・マリー・プレスリーと結婚しますが、これも「小児性愛をカムフラージュするためだ」と言われてしまいます。リサ・マリーと離婚した後は、看護師の女性と結婚し子どもが二人生まれますが、すぐに離婚してしまいます。2003年にイギリス人の記者がマイケルの数々の謎を解き明かすために密着した『Living with Michael Jackson』(マイケル・ジャクソンの真実〜緊急独占放送 密着240日〜)が放送され、同番組は日本でも放送されます。
マイケル・ジャクソンの言葉「父を見ると吐く」-少年への性的虐待疑惑はつきまとう
40代のマイケルは、遊園地や動物園もある自宅、通称ネバーランドに一人で暮らし、時折、この広大な屋敷に恵まれない子供たちを招き入れていました。遊園地はたまに訪れるからこそ、楽しいのではないでしょうか。無人で手入れが行き届かない遊園地は、どこか不気味ですらあります。本人は否定するものの、マイケルの顔はすっかり変わっていて、美容整形のしすぎとしか思えない。父親に対する思いは複雑なようで、ここでも肉体的・精神的暴力について触れ、「父を見ると吐く」と言っていました。マイケルは自分の子どもではない赤ちゃんの写真を欲しがり、出産後の妻を思いやることはせず、自分一人で生まれたばかりの赤ちゃんを家に連れて帰ろうとするなど、子どもへの執着も怖い。この番組がきっかけとなり、マイケルは別の子どもに対する性的虐待容疑で逮捕されてしまいます。無罪判決を勝ち取ったものの、逮捕されたことでイメージダウンにつながったことは間違いないでしょう。
子どもに対して性加害する人が生まれつきなのか、そうでないのか、まだはっきりした答えは出ていません。しかし、性加害を含めた暴力は、繰り返すことがわかっています。殴られて育った子どもが、自分が殴るほうに回るのです。今、日本で大騒ぎの“あの人”も、子どもの頃に被害を受けていたと、かつての恩人の妻がテレビで証言していました。その証言が本当だとしても、自分が被害を受けたからといって、罪が軽減されるわけではありませんが、子どもが子どもらしくいられないことや、子どもを傷つけることが、本人にとっても社会にとっても、どれだけ大きな損失なのか、思い知らされる気がするのでした。