このように複数の薬を用いているなかで、最低限必要な薬は使いつつ、弊害(副作用)を避けることはできるのでしょうか。

厚生労働省医薬・生活衛生局は先般、2018年度予算概算要求として前年度比17.1%増の102億6,200万円を計上しました。その中には、ポリファーマシーなど高齢者の薬物療法の実態について、国のナショナルデータベースから得られた副作用報告を解析するためのシステム改修経費も計上されています。ポリファーマシーなどを減らすための具体的な指針は、分析結果なども踏まえ、2018年度末の策定を目指すとのこと。

多剤併用で副作用が出るメカニズムは完全には解明されていませんが、きっかけになりそうな薬剤はいくつかあります。日本老年医学会は2015年、医師・薬剤師・看護師向けに「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」をまとめ、「特に慎重な投与を要する薬物」と「開始を考慮するべき薬物」を載せています。例えば、うつ・吐き気・精神疾患・不整脈など広い範囲で使われている「坑コリン薬」は、副作用で認知機能を低下させる可能性があります。

一部の医療機関(病院など)では、医師・薬剤師・看護師などによる「ポリファーマシー対策チーム」を始動したところもあります。病院内だけでなく、地域のクリニックや薬局との連携にも取り組んでいるようです。取り組み始めて処方の見直しを行うと、処方される薬の種類を実際に減らせるとのことです。薬の数を多くとも5種類程度に抑えることを目標にしている医療チームもあります。こういった取り組みが今後も継続的かつ漸進的に進んでいくといいですね。

自分が使う薬の情報を一元化しよう

ところで、あなたには「かかりつけ医」や「かかりつけ薬剤師」がいますか? かかりつけ医やかかりつけ薬剤師に依頼して自分の薬の情報を集約してもらう(情報を一元化する)と、無駄な薬の数を減らしやすくなります。今の病気の症状が悪化しない程度に薬の数を減らし、副作用も減らしていけば、おのずと経済的負担も軽くなります。悪い話じゃありませんね。ぜひ薬剤師さんや医師に相談してみましょう。

「特に副作用も出ていないので、今のままで構わないです」って? それはそうですが、もしあなたが5種類以上の薬を飲んでいるのなら、ちょっと検討してみる価値はあると思いますよ。

※写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: フリードリヒ2世

薬剤師。京都薬科大学薬学部生物薬学科卒。徳島大学大学院薬学研究科博士後期課程単位取得退学。洋画と海外ミステリーを愛す。Facebookアカウントは「Genshint」。主な著書・訳書に『共著 実務文書で学ぶ薬学英語 (医学英語シリーズ)』(アルク)、『監訳 21世紀の薬剤師―エビデンスに基づく薬学(EBP)入門 Phil Wiffen著』(じほう)がある。