健康診断、受けていますか。受けたものの二次健診の指示を放置していたり、「まだ元気だし」と現実逃避していたりしている人、いるのでは。クリニック院長でありながら、産業医としても活動する木村至信氏(以下、キムシノ氏)に話をうかがいました。
健康診断とは? 絶対受けるべき?
企業などの事業者は、従業員の安全面に法的責任を負い(労働安全衛生法第66条)、労働者に対して健康診断を実施しなければなりません。ちなみに、一定の基準を満たせば、契約社員やアルバイト、パートなどでも、社員と同様に健康診断の対象になります。
検査は、身長・体重、血圧の測定、採尿、採血、胃カメラかバリウム、心電図が、一次健診の一通りの内容(※施設により多少の違いはあります)。異常などが認められると、二次健診が求められます。
従業員50人以上の企業には、健康管理を行う医師である「産業医」の選任が義務付けされ、健康診断や健康、衛生に対する指導などを行います。産業医がいれば、健康診断の結果に関して面談、今後の検査や治療に対するアドバイスを得られることもあるでしょう。
もし、再検査や病院受診を求められると、「仕事が忙しいので、時間を取りにくい」「二次健診は自費なので、お金がもったいない」などと、放置してしまう人もいると聞きます。
これに対し、キムシノ氏は警鐘を鳴らします。
キムシノ氏 「医療費も時間も、病気が重くなってからの方がたくさんかかります。早期に見つけること、治療や予防をすることで、未来に重くのしかかってくる時間ロスと高額な医療費を防ぎましょう。日本は先進国の中でも、健康診断の受診率がかなり低いという現実があります。欧米では健康管理ができないと出世できない風潮があるので、健康診断や定期的メンテナンスをしっかりやります」。
AからEまでの5段階、実際どうなの?
健康診断を受けると後日、結果表が届き、「おおむね異常なし」とホッとする人や青ざめる人などがいて、職場は健康や病気の話題で持ちきりとなります。
判定は、正常(A)、要注意(B)、要観察(C)、治療中(D)、要精検(E)の5段階で判定されるケースなどがありますが、健診施設などにより多少の違いはあるようです。
ただし、「Aだった! やった!」などと安心するのはちょっと待って。
キムシノ氏 「大勢を対象にして行う会社の健康診断では、正常か否かを機械的に決められた数値だけで判断しています。つまり異常値に限りなく近い正常値であってもA判定がつくことがあります。また、他の検査項目と連動し、総合的に診断することもありません。ただ、高血圧や血糖値などは近年改正があり、正常値の範囲は多少細かくなりましたが、悪い判定を受けたら異常があることは確かです」。
――つまり、A判定だから完全に健康でリスクなしというわけではないのですか?
キムシノ氏 「例えば、お酒が好きな方や、脂肪肝を指摘されている方は肝臓の数値を気にしていると思います。肝臓の検査では、HDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪、γ(ガンマ)-GPTが検査項目に入っていると思います。A判定でもそれぞれの検査数値が正常値ギリギリであり、血糖値もギリギリ、尿酸値ギリギリで正常値なら、かかりつけ内科で再検査が望ましいです。なぜなら、脳卒中、心筋梗塞などのリスクがかなり高いからです」。
――検査の数値が正常値でも、正常ど真ん中か、ギリギリ正常かなどを見るべきなのですね。
キムシノ氏 「その通りです。それから、例年正常値の方でも、正常値の範囲内でジリジリ上がったり下がったりしている項目がないか、数値の推移もチェックしてほしいところです。1年前だけでなく、2年前、3年前と、さかのぼってと比べることも大事です。二次健診などには、数年分の検査結果を持って行きましょう」。
取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)
横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。