読者の健康や美容にまつわる悩みを、さまざまな分野の専門医の力を借りて解消していく連載「教えて! ドクター!!」。今回のテーマは喘息です。
発作性の呼吸困難や咳などの症状が出ることで知られる喘息は、「小児がなる病気」というイメージを抱いている人もいることでしょう。ただ実は、成人後に突如として喘息になるケースもあるのです。今回は、呼吸器専門医の浜口玲央医師に話をうかがってきました。
――Q. 実は3週間も咳が続いています。小耳にはさんだ「大人喘息」について詳しく知りたいです
まずは喘息の原因や症状について詳しくお話ししていきますね。喘息とは、呼吸の通り道である気道に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなることによって喘鳴(ぜんめい: ゼーゼーする呼吸)や呼吸困難、咳の症状が出る病気です。特に夜間や早朝に症状を起こしやすく、発作性に喘鳴や呼吸困難、咳を繰り返すことが特徴です。通常でしたら発作は自然に、あるいは治療により改善しますが、長い間適切な治療をせずにいると、症状が長引き難治化の原因になると考えられています。
喘息の原因ですが、大きく分けて、環境中にある原因物質(環境アレルゲン)に対する特異的IgE抗体が検出される「アトピー型」と、検出されない「非アトピー型」に分類することができます。特にアトピー型喘息ではチリ、ダニに対する抗体を持っているケースが多く、これらが原因となって気道の炎症を引き起こします。
気道の炎症に伴い気道の収縮反応が起こりやすくなり(気道過敏性の亢進)、気道の狭窄を起こして喘息発作の原因となってしまいます。つまり、ホコリっぽい環境は喘息発作の原因の一つとなります。
咳喘息の約3割が喘息に移行
喘息とは似て非なるものに「咳喘息」があります。咳喘息は喘息の一つの型であり、喘鳴や呼吸困難は起こらず、咳だけが慢性的に続く病気です。喘息と同じように気道過敏性が亢進していますが、通常は気道の狭窄は起こっても軽度のため、喘鳴や呼吸困難が起こりません。
一般的には痰を伴わない乾いた咳で、就寝時や深夜から明け方に強く咳が出ます。冷気や暖気、タバコの煙、会話、運動、飲酒、精神的緊張などが、咳の原因となります。喘息の治療薬でもある気管支拡張剤(狭くなった気管支を拡げる薬)が効くのが特徴です。
咳が8週間以上続く場合は「慢性咳嗽」(まんせいがいそう)と呼ばれますが、そのうち大きな割合を占めるのが咳喘息です。似たような病気にアトピー咳嗽がありますが、気道過敏性の亢進がなく、気管支拡張剤が効かないことが咳喘息との違いです。そして、咳喘息の約30%は通常の喘息に移行すると言われていますので注意が必要です。