廃線跡の錆びた線路と生い茂った草……。なんとも哀愁ただよう風景で、多くの鉄ちゃんたちの心を掴むことでしょう。廃線探訪のエッセイを読んで、実際に歩いて撮影してみたいと思った人も多いのではないでしょうか。しかし、最近では鉄道の歴史的価値の再評価や、"金属ドロボウ"などの犯罪もあり、昔とは事情が違ってきました。今回は廃線跡での撮影について解説します(記事中に登場する鉄道名や駅名などの設定は架空です)。
廃線跡 - 入れそうな雰囲気だけど……
9月末で、とうとうマイコミ支線が廃止になってしまいました。有名作家の廃線跡探訪のエッセイを読んだことのあるテツヤくんは、「いつか自分もあんな冒険がしてみたいな」と憧れており、さっそく出かけてみました。以前訪れたことのある雄鹿土駅に行ってみると、線路や駅名板は一部撤去されているものの、まだほとんど解体されず、手がつけられていない様子。柵が設けられ「立入禁止」とは書いてあるものの、無防備な状態です。
最初は柵の外から望遠レンズで中の様子を見たり、撮影していましたが次第に気が大きくなり、「もう列車は通らないんだから安全だよね」と中に入ってしまいました。ついには「記念に何か持って帰ろう」と倒れた標識に手をかけたその時です。
「何しているんですか!! 」と背後から声が。「ここは産業遺産として調査中なんですよ」と立入許可証を持った調査員。言い訳の言葉もなく、恐縮しきりのテツヤくんでした。
列車が走っていなくても、線路や駅構内は私有地。立入禁止の場所に入れば、咎められても当然です。そこでよい写真が撮れたとしても、不法侵入の証拠写真となるだけです。また近年は、役割を終えた鉄道を「産業遺産」として調査・保存し、新たな観光資源とする試みや、「廃線跡ウオーキング」などのイベントが行われることもあります。個人的な冒険心で廃線跡を楽しめたのは昔の話。今、所有者の許可もなく同じことをしたら「不審者」や「金属ドロボウ」と間違えられてしまいますよ。
次の休日、テツヤくんは調査員の方に教わった「マイコミマインパーク」に行ってみました。ここはファミリー向けの古い遊園地ですが、実は廃止になった鉱山と軽便鉄道の跡地を利用したものだったのです。子どもの頃遊んだ時には何とも思いませんでしたが、大人になって知識も付いた今、かつてヤードや線路があったことが十分に想像でき、知的好奇心も十分に満足させられました。
散策や撮影には、このように公園や道として整備された廃線跡をおすすめします。鉄道の跡地だったことすら一般の人には知られていないところも少なくありませんが、森林鉄道や軽便鉄道も含めれば、全国にはかなりの数の廃線跡があるのです。そういった情報を得るには、鉄道本よりも「○○市史」といった地誌が確実。図書館や郷土資料館などに置いてあるのでぜひ。こうやって調べてみるのもまた1つの「冒険」なんですよ。
ミニ情報
成田山新勝寺に行く「電車道」
初詣などで、JR成田線の成田駅および京成本線の京成成田駅から成田山新勝寺まで歩く場合には、にぎやかな参道を通るのが一般的です。それとほぼ平行するように「電車道」と呼ばれている廃線跡の車道があるのをご存知ですか。途中2カ所にあるレンガ造りのトンネルは、複線分と思われる幅があり、鉄道の規模を想像できます。トンネルの脇には解説もあり、歴史探訪が楽しめます。