長期・積立・分散投資は、投資の3大原則と呼ばれ、現役世代が資産形成を長く続けるためのコツでもあります。中でもイメージしずらいのが「分散」ですね。セミナーでも「分散投資ってどうやったらいいの? 」とのご質問をよく受けます。

そんな時、私はご質問された方に資産形成の目的を確認します。その目的が老後資金準備なら、「GPIFの基本ポートフォリオを参考にしてはどうですか? 」とお伝えします。言わば、プロの分散投資を真似る、ということです。

ところで、GPIFってご存じですか? 正式名称は年金積立金管理運用独立行政法人、日本の公的年金制度を支えている団体のひとつです。GPIFは、公的年金の積立金を国内外の資本市場で運用しています。その運用収益や元本は、将来世代の年金を補うために使われます。現在、年金財源のうち、GPIFの積立金から賄われるのは1割程度。GPIFの業務概況書(※1)には「ある特定年度に評価益又は評価損が発生したとしても、それが翌年度の年金給付額に反映されることはありません」と書いてあります。

7月初旬に公表された概況書によると、GPIFの運用資産は2020年3月末で151兆円。この世界有数の資産規模を誇るGPIFの運用が長期国際分散投資なのです。そこで、GPIFのホームページから、これまでの長期国際分散投資の実績を確認してみました。

2001年度から2019年度までの長期的な累計収益は+57.5兆円、収益率は年率で+2.58%と悪くありません。一方、数々のショックに直面してきたことも事実です。2001年度の凹みはエンロンショック(1)、2008年度はリーマンショック(2)、2015年度はチャイナショック(3)、2019年度はコロナショック(4)になりますが、「長期投資はショックに遭遇してもマーケットに居続けなければ成果は得られない」、そういうことだと思います。

なお、GPIFでは基本ポートフォリオ(=基本となる資産構成割合)を決めて分散投資を行っていますが、この春、少し変更がありました。従来、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の割合が35%、15%、25%、25%でしたが、2020年度から4資産均等の25%ずつに変更されたのです。次回はこの基本ポートフォリオの変更について、リスクとリターンの関係から考えてみたいと思います。

※1 出所:年金積立金管理運用独立行政法人「2019年度 業務概況書」、p.3
※2 出所:GPIFホームページ「2019年度の運用状況」を筆者が加工