似たケースで、新幹線で一般席の切符しか持たないのにグリーン席に乗車した場合にはどのような扱いになるのか、考えてみましょう。

この場合も先ほどの自由席と指定席のケースと同様に、一般席の権利しか購入していないのに無断でグリーン席に乗車するとJRとの契約違反になるので、JRから退去請求をされたり損害賠償請求をされたりする可能性があります。

また一般席とグリーン席を比べると、座席の「ランク」が異なりグリーン席の方が上質となっています。低質な座席の切符しか持たないのに乗務員の許可なく優位な座席に乗車すると「鉄道営業法違反」となり、刑事罰の対象にもなります(鉄道営業法29条2号)。一般席の切符でグリーン席に乗っていたら、刑事罰が適用されて罰金を払わされ、前科がつく可能性もあるのです。グリーン席が空いているからといって、新幹線内で勝手に座席を移動するのは控えましょう。

指定席の切符を持った人が自由席に移る場合は?

以上のケースとは違い、「指定席」の切符や「グリーン席」の切符を持っている人が、あえて一般の自由席に座る場合はどのように評価されるのでしょうか? たとえば指定席の切符を買ったけれど、隣に座った人の体臭やイヤホンから漏れ出る音などが気になってどうしても耐えられないから自由席に移りたい場合もあるでしょう。

新幹線内では、基本的に自分の購入した切符に示された場所にしか座ってはなりません。旅客営業規則第172条第1項にも、「指定急行券を所持する旅客は、その券面に指定された乗車日、急行列車、旅客車、座席及び乗車区間に限って乗車することができる」と規定されています。そのため、自由席に移るということも規則としては認められません。

指定席やグリーン車に乗る権利を持つ人が自由席に移ることを認めてしまうと、事実上、1人で2席確保していることになってしまうため、上記の規則は合理的だと言えるでしょう。ただし、列車内が混雑していない場合には事実上、自由席に移っても車掌さん等に咎められず、誰にも迷惑をかけず、問題なく過ごせるケースも多いと思います。

以上のように、身近なケースでも法律が問題になるトラブルはたくさん起こります。問題を起こさないよう、モラルをもった行動をしていきたいところです。

※記事内で紹介しているストーリーはフィクションです

※写真と本文は関係ありません

監修者プロフィール: 安部直子(あべ なおこ)

東京弁護士会所属。東京・横浜・千葉に拠点を置く弁護士法人『法律事務所オーセンス』にて、主に離婚問題を数多く取り扱う。離婚問題を「家族にとっての再スタート」と考え、依頼者とのコミュニケーションを大切にしながら、依頼者やその子どもが前を向いて再スタートを切れるような解決に努めている。弁護士としての信念は、「ドアは開くまで叩く」。著書に「調査・慰謝料・離婚への最強アドバイス」(中央経済社)がある。