「ゲームソフトを借りていった友人が翌日に引っ越しをし、ゲームソフトが戻ってこなかった」――。こういった理不尽な状況に遭遇して沸々とした怒りを覚えた経験を持つ人もいるのではないだろうか。

このケースのように、日々の生活において社会通念上、「モラルに反するのではないか」と感じる出来事に遭遇する機会は意外と少なくない。そして、モラルに欠ける、あるいは反していると思しき行為であればあるだけ、法律に抵触しているリスクも高まる。言い換えれば、私たちは知らず知らずのうちに法律違反をしている可能性があるということだ。

そのような事態を避けるべく、本連載では「人道的にアウト」と思えるような行為が法律に抵触しているかどうかを、法律のプロである弁護士にジャッジしてもらう。今回のテーマは「レンタルDVDの又貸し」だ。

  • レンタルしたDVDを知人や友人に又貸しするのはセーフ? アウト??

26歳の男性・Yさんは大のアニメ好き。お気に入りの作品の原作やゲーム、さらにはフィギュアなどを集めることを趣味としており、お金もいくらか投資していた。共通のアニメが好きな友人・Zさんと会うと、いつも好きな作品について熱く語り合っていた。

ある日、Zさんの家でお酒を飲むことになり、Zさん宅を訪問したYさん。部屋の中を見渡すと、2人の大好きな作品の最新映画のレンタルDVDが置いてあるのを発見した。「あ、これ借りたんだ。俺も劇場で見たけれど、すごいおもしろかったよな」とYさんが話題をふると、Zさんは「うん。自分も劇場で見たけど、やっぱりもう1回見たくて、ついレンタルしちゃった。何度見ても、やっぱり戦闘シーンの迫力はすごいよ。借りて正解だった」。そう聞かされ、自身も再度見たい衝動に駆られてしまったYさんは「これって駅前のレンタルショップで借りたんだよな?」とZさんに質問する。Zさんは「そうだよ」と返事した。その答えを聞いたYさんは、「じゃあこれ、俺に貸してくれない? 返却日までには俺が店に返しておくから」と切り出した。この申し出を聞いたZさんは「でもそれって店の品の又貸しじゃん。やばくない?」と不安げな表情を浮かべた。

するとYさんはこう答えた。「大丈夫だって。レンタルした作品をおまえと俺で一緒に見るのと、おまえが1人で見終わった後に俺がさらに借りて俺の部屋で見る。どちらも、結果として1人分のレンタル料金で2人見たことになるわけだろ? だから、店側からすればどっちでもいいはずだし、お前は返却する手間が省けるじゃん。ちゃんと返却したことがわかるよう、証拠として返却時の写真も携帯でお前に送るから」。この説明を聞いたZさんは「そうか……それもそうだな。じゃあこれ貸すから、絶対に期日までに返却しろよ」とYさんに又貸ししてしまった。

このようなケースでは、ZさんとYさんの行為は法律違反にあたるのだろうか。安部直子弁護士に聞いてみた。