ラーメン店が客からの誹謗中傷や業務妨害をされたら、大きな損害が発生する可能性があります。その場にいた客や入ろうとしていた客が帰ってしまう可能性もありますし、妙な噂が広まって将来の見込み客が減ってしまうケースもあるでしょう。

そのようなときには、この女性客に対して「損害賠償請求」ができます。女性客には店に対する不法行為が成立するからです。不法行為とは、故意過失にもとづく違法行為によって他人に損害を発生させる行為です。

店内で店の名誉を低下させるような言動をとるのは違法行為になる可能性があります。これによって店に売上げ低下などの損害が発生した場合、店は不法行為にもとづいて女性客にその賠償を請求できる可能性があるのです。女性客が帰宅後に近所に言いふらしたり、ネットでラーメンの悪口を書き込んだりしたケースでも同様です。

損害賠償請求する際の注意点

Oさんが今回の非常識な女性客に損害賠償請求をする際には、以下の4点に注意が必要です。

1.相手を特定する必要がある

まずは相手を特定する必要があることです。通常、店の客の氏名や住所などはわからないことが多いです。そのままでは刑事告訴も民事損害賠償もできないので、法的措置を検討するなら、店で騒がれた時点で身分証などの提示を受けて本人情報を獲得しておくべきです。 後で探すのは困難でしょう。

2.女性客の言動が違法であること

次に女性客の言動が客の店に対する一般的な評価としての範囲を超え、違法性があったことを証明する必要があります。そもそも、言った事実すら否定されかねませんので、その場にいたお客さんで証人となってくれる人も見つけた方がいいでしょう。

3 売上げ低下を立証する必要がある

さらに、具体的な店の売上げ低下を証明しないといけません。売上げ低下にもとづいて賠償金を請求するならば、根拠となる資料によって、具体的にいくらの損害が発生したのか証明する必要があります。「何となくこれくらい売上げが下がった」という程度では損害賠償を請求できません。

4 売上低下の原因が女性客の言動にあること

最後に、売上低下の原因が女性客の言動にあることも立証しなければなりません。売上低下には一般的にはさまざまな要因が考えられますし、女性からは「売上低下の原因はラーメンがまずかったからである」と反論されかねませんので、お気をつけください。

いくらお客様とは言え、飲食店におけるあまりに過ぎた嫌がらせや侮辱、迷惑行為にまで店側が耐える必要はありません。特に今はネットなどに不当な情報を拡散されやすいので、油断できない時代です。「これは酷い」と思われたら、我慢せずに一度弁護士に相談してみることをお勧めします。

※記事内で紹介しているストーリーはフィクションです

※写真と本文は関係ありません

監修者プロフィール: 安部直子(あべ なおこ)

東京弁護士会所属。東京・横浜・千葉に拠点を置く弁護士法人『法律事務所オーセンス』にて、主に離婚問題を数多く取り扱う。離婚問題を「家族にとっての再スタート」と考え、依頼者とのコミュニケーションを大切にしながら、依頼者やその子どもが前を向いて再スタートを切れるような解決に努めている。弁護士としての信念は、「ドアは開くまで叩く」。著書に「調査・慰謝料・離婚への最強アドバイス」(中央経済社)がある。