このように、店で「ラーメンがまずい」などと騒ぐような人は、家に帰ってからもそのことを周囲に言いふらすケースがあります。特に最近では、ネットの口コミサイトに投稿をしたり、自分のブログやSNSで自分の意見を拡散したりする人が多いので注意が必要です。

その場で騒がれただけならその場にいた客に聞かれる程度ですが、ネットに書き込まれると世界中の人が閲覧できるわけですから、将来の見込み客が大きく減ってしまうおそれが発生します。

ネット上に風評被害となるような書き込みをした場合も、近所の人に言いふらした場合も、名誉棄損罪が成立する可能性があります。ネットも公共の場所なので「公然と」の要件を満たしますし、事実の摘示や罵倒によって店の社会的評価を低下させたら名誉毀損罪になりかねないのです。

侮辱罪が成立する可能性もある

侮辱罪とは、公然と「事実の摘示以外の方法で」人の社会的評価を低下させる言動をとることです。名誉毀損罪との違いは、事実を摘示したかどうかです。事実を摘示していない単なる罵倒なら侮辱罪になります。

たとえば、この女性が本当に「あそこの店のラーメンは食えたもんじゃない」と近所の人に言いふらした場合、「食えたもんじゃない」というのは、事実ではなく、この女性の評価ですので、侮辱罪が成立する余地があります。

また、ネットの口コミサイトに、「あそこの店のラーメンは食えたもんじゃない」とか、「まずい」といった内容を書き込んだ場合にも、侮辱罪に該当する可能性があります。

侮辱罪の刑罰は「拘留または科料」です。拘留とは30日未満の期間、刑務所に収容される刑罰で、科料は1万円未満の金銭支払いの刑罰です。

刑事告訴の要否について

飲食店が客から誹謗中傷の被害を受けたときの「刑事告訴」の要否についても押さえておきましょう。

犯罪の種類の中には、被害者が告訴しないと処罰されない「親告罪」と、被害者が告訴しなくても処罰される「非親告罪」があります。「名誉毀損罪」と「侮辱罪」は親告罪です(民法第232条第1項)。

Oさんが犯人の女性を処罰してほしいと望むなら、相手を特定して警察に告訴する必要があります。処罰を希望するならば、早めに警察に相談に行くのがよいでしょう。