泥酔したサラリーマンがトイレに立てこもったことは、民法上の不法行為(民法第709条)にならないのでしょうか?

不法行為とは「故意や過失にもとづく違法行為によって他人に損害を与えること」です。サラリーマンは長時間トイレにこもっていますが、この行為が「故意や過失にもとづく違法行為」といえるかが問題です。

通常、居酒屋内のトイレはお客さんが自由に使える空間なので、サラリーマンがトイレを使うこと自体は違法ではありません。また居酒屋では酔った客がある程度長い時間トイレにこもることも社会通念上相当といえるので、長時間こもっただけで「違法行為」とまでは言い難いでしょう。

ただし、他の店員がサラリーマンに対して繰り返し明確に店からの退去を求めたにもかかわらず出ていかなかった場合には、先述のように「不退去罪」が成立する可能性があります。不退去罪が成立する場合には民法上も違法行為と評価されますので、店に損害が発生していれば不法行為が成立すると考えられます。

対策として貼り紙や掲示をしておくべき

今回、サラリーマンが長時間トイレにこもったことによってCさんや店員たちは迷惑していますが、「3時間程度トイレにこもられただけ」では必ずしも民法上の不法行為が成立するわけではなく、店員が強く繰り返し退去を求めない限り不退去罪も成立しません。

今後の対策を検討するなら、Cさんたちは長時間のトイレの利用を禁じる内容の貼り紙や掲示をしておくべきです。

「1時間以上トイレを使用する場合には店内からの退去を求めます」などと、退去を求める基準をはっきり書くとよりよいでしょう。退去請求の基準をわかりやすく掲示していれば、実際にお客さんがトイレに1時間以上引きこもったときに「貼り紙にも書いてあるからわかっていたはずだ」と主張して、退去を求めやすくなるからです。客側も初めから退去請求を予想できるので、「客を大切にしないのか!」などと因縁をつけられるリスクも低下します。

貼り紙の通りに店員や店長が退去を求めてもお客さんが出ていかないときには「不退去罪」の成立を主張しやすくなりますし、不法行為にもとづく損害賠償請求も進めやすくなります。

店側は基本的にお客様へ遠慮しなければならない立場ですから、明確な掲示をしていないと強く退去などを求められないのが通常です。居酒屋などの飲食店やコンビニなどを経営されていて本件のような状況が起こりがちな場合、トイレの前に「長時間の利用を禁じます」「長時間利用される場合には退去を求めます」などと明確に掲示するようにしてみてください。

※記事内で紹介しているストーリーはフィクションです

※写真と本文は関係ありません

監修者: 安部直子(あべ なおこ)

東京弁護士会所属。東京・横浜・千葉に拠点を置く弁護士法人『法律事務所オーセンス』にて、主に離婚問題を数多く取り扱う。離婚問題を「家族にとっての再スタート」と考え、依頼者とのコミュニケーションを大切にしながら、依頼者やその子どもが前を向いて再スタートを切れるような解決に努めている。弁護士としての信念は、「ドアは開くまで叩く」。著書に「調査・慰謝料・離婚への最強アドバイス」(中央経済社)がある。