草津町と群馬大学の研究により、「湯畑源泉には、10秒で95%以上感染力を減らす効果がある」ことが実証され、注目を集めている草津温泉。だったら、仲間とワイワイ草津温泉へ!……というのも、まだまだ心配な時期ですよね。
これまでは、お部屋でゆったり専用露天風呂を楽しめる草津の上質なお宿をご紹介してきましたが、最終回は番外編として、温泉ツウの間で「草津へ行くなら、一度はこの湯に入ってみたい!」と言われている「奈良屋」の極上湯をご紹介します。強酸性の湯をまろやかな湯に変えてしまう、不思議な湯の秘密とは!?
1.草津が誇る名旅館!徳川将軍御汲上の湯「奈良屋」
草津温泉には120軒ほどの旅館がひしめきあっていますが、「奈良屋」といえば、温泉好きの間で名を馳せる老舗の名旅館。創業は明治10年と古く、140年以上に渡って、湯畑のそばで湯宿の歴史を育んできました。
2.草津最古の湯「白旗源泉」をかけ流しで!
宿の場所は湯畑から徒歩1分。湯畑すぐ!という好立地ですが、湯畑源泉ではなく、草津最古の「白旗源泉」を引いています。「白旗源泉」は、源頼朝公が発見したという伝説があり、昔から、薬湯としても知られてきました。
現在、草津の旅館で「白旗源泉」を引いているのは、わずか10軒ほど。その中でも「奈良屋」のお湯が「ここのお湯は最高!」と絶賛される理由は、ここが強酸性の湯だったということを一瞬で忘れてしまうほど、とびきり“まろやかなお湯”だから!
筆者もこの湯の大ファン。「草津で一番おすすめのお湯は?」と聞かれると、いつも真っ先に「奈良屋さん!」と答えています。
3.湯守が仕込む、最高の状態の温泉
伝統ある湯を守り続けているのは、2人の湯守。そのうちの1人、ふんわりした優しい笑顔の菅野さんは、湯守歴おそよ10年というベテラン選手!「写真を撮らせてもえらえますか?」と聞いてみたところ、少し照れながら微笑んでくれました。菅野さんは、綺麗好きできっちりとした性格の持ち主。湯守の仕事はまさに天職なのだとか。
ふつふつと湧き上がる55度の源泉を、自然の傾斜を利用して冷ましながら、「奈良屋」まで引湯。敷地内に作られた「湯小屋」でいったん貯湯した後、一晩寝かせたお湯を、大浴場の各浴槽へとかけ流します。
湯守の仕事はここから。2~3時間に一度、温度点検をしながら丁寧に湯もみをして、浴槽温度を42度になるよう調整しているのだとか。
42度のお湯を作るのは簡単だけど、浴槽ごと湯量も異なるため、それをキープするのが大変!寒い冬には湯量を増やして、温度が42度よりも下がらないように。また暑い夏には湯をしっかり揉み込んで、熱くなりすぎないようにしているそうです。
さらに「奈良屋」の湯は、湯守の手によって、空気を含ませながら湯揉みするため、まるで赤ワインのデカンタのように酸味が和らぎます。強酸性の白肌源泉は熱くてピリピリしがちですが、同じ源泉とは思えないほど、まったくの別物!空気を含んで当たりが柔らかくなったお湯は、まろやかでしっとり肌に吸い付くような滑らかさがあるんです。一度入ると病みつきになる、本当に素晴らしいお湯。
4.支配人に聞いた!「奈良屋」の湯守が大切にしていること
「奈良屋」の湯守は、現在で7代目。そこで、「奈良屋」が代々大切にしていきたこと何か?支配人の佐伯さんに聞いてみました。
「湯守とは、行きている“温泉”そのものを子守することだと思っています。というのも、気候や気温の変化で、すぐ温泉は熱くなったり冷たくなったりしますよね。小さな子どもと同じで、こまめに見てあげないといけません。1年中、温泉と対話をしながら、最高の状態に仕上げる。これが最も大切なことだと思っています」そう語る佐伯さん。
5.温度を計測するのは、昔ながらの温度計
ちなみに、草津のお湯は酸が強すぎるので、何もしなくても電化製品が数年で壊れてしまうのだとか。これだけ酸が強いと、湯守が使う温度計もハイテクなものはすぐに壊れてしまうので、昔からガラス棒状のアナログ温度計が使われています。
6.いつまでも浸かっていたいお風呂の数々
大浴場は、形が違う「御汲上の湯」と「花の湯」の内湯、半露天風呂、創業以来から残る赤松の丸太風呂まで、種類が豊富。深夜に男女のお風呂が入れ替わるので、宿泊するといろんなお風呂に入れます。
12:30から14:00までは日帰りでも入れますが、時間が90分間と短いので、「うっかり時間が過ぎてた…!」なんてことがないように、気を付けてくださいね。日帰り利用だと、男性側が「御汲上の湯」、女性側が「花の湯」。赤松の丸太風呂があるのは女性側になります。
宿泊して「奈良屋」の湯を楽しむのがベストですが、まずはこの湯の素晴らしさを知ってもらいたいのが私の願い。仕事の関係で長逗留できなかったり、予算的に泊まるのが難しい方は、気軽に入れる日帰り利用もおすすめです。
7.奈良屋グループの社長に聞いた、コロナ後の展望について
小林さんは、温泉旅館「奈良屋」やリゾートホテル「草津ナウリゾートホテル」を運営しながら、3つの素泊まり専用宿(湯畑 草菴・源泉一乃湯・湯川テラス)をオープンさせ、「素泊まり」と「1泊2食」の2極化を推進してきました。
「温泉旅館、リゾートホテル、立地の良い素泊まり宿、暮らすように過ごせる素泊まり宿、プレミアムな素泊まり宿。5つの宿は、それぞれ個性的。宿の選択肢が増えたので、お客様の目的によって、使い分けてもえれば嬉しいです。」そう語る小林さん。
たしかに、一人旅や好きなものを食べたい人にとっては、素泊まりが最高。特に草津は、居酒屋もコンビニもたくさんあるので、素泊まりでも困ることがありません。逆に記念日など、プレミアムな旅行であれば、宿におこもりして食事を楽しみたいですよね。
コロナ不活化のニュースについても、力強く語ってくれました。
「どこの温泉地も転地療養や温浴効果はありますが、草津温泉は、入浴そのものが新型コロナウィルスを不活化させることが実証されました。これはかなり大きなニュースだと思います。」
「これからは、風呂屋としての立ち位置に戻って、お湯を楽しんでもらうことに加えて、お客様に安心感をお届けできるのはないでしょうか。」
現在、草津町と群馬大学では、温泉の“湯気”にフォーカスして、コロナ不活化の分析を行っているのだとか。もしこれが実証されれば、草津にいるだけで“感染予防をしている”ことになリますよね!草津は、まさに今の時代にぴったりな旅先だと言えます。
<恋の病も治す!?草津温泉で明日への元気と活力を>
昔から「恋の病以外ならどんな病気でも治る」と言われてきたように、さまざまな体の不調を和らげてくれる草津温泉。「恋の病は治らないのか…」とお思いかもしれませんが、実は「草津よいとこ~一度はおいで~」で有名な「草津節」には続きがあって、「好きな人と一緒に草津へ来ると、恋の病も治る」と歌われているんですよ。
ストレスが多いコロナ禍の日々。いろんなストレスでオーバーヒートした心や体を休ませたいときは、ミラクルなパワーを秘めた草津温泉へ。なかでも、「奈良屋」の湯は、草津の中でもピカイチの心地良さ。わざわざ行く価値大のお湯ですよ!