企業の経営層は、過去にどんな苦労を重ね、失敗を繰り返してきたのだろうか。また、過去の経験は、現在の仕事にどのように活かされているのだろう。そこで本シリーズでは、様々な企業の経営層に直接インタビューを敢行。経営の哲学や考え方についても迫っていく。

第25回は、株式会社フクシマ化学 代表取締役の福島康貴(ふくしまやすたか)氏に話を聞いた。

経歴、現職に至った経緯

福島氏は1971年10月5日、岐阜県関市で誕生。実家は1966年から製造業を営んでいた。岐阜県立関高等学校卒業後、大阪経済法科大学へ進学。大学卒業後、自分の可能性にかけ、渡米してプロゴルファーを目指すも、挫折を経験。

日本に帰国した1995年、23歳のとき愛知県の製造メーカー、株式会社タイム技研に入社。

「タイム技研では、モノづくりの基礎となる製造部門に配属され、ラインに入ることや品質保持についても学びました。無意識に将来を見据えていたのかもしれませんが、上司やリーダーの動きに注目し、どのような判断や指示を出すかを記憶していたように思います」

ところが翌年、先代の希望で後継者として実家の株式会社フクシマ化学に入社することに。

「1年余りの知識や経験しかなく、まだ早い気がしたものの、両親からの勧めもあり入社が決まりました。当時は若さもあり、大変未熟ながら『俺はできる!』とすでに経営者になるような気合いで入社したものの、現実は学ぶべきことの多さと道のりの遠さに自分のポテンシャルについて考える日々が多くありました」と福島氏。 入社後は、製造現場を1年ほど経験し、基本的な技術を学んだ。その後の3年間は、取引先や協力会社とのコミュニケーションが発生する生産管理部門を経て営業へ。社内での風当たりについて、当時をこう振り返る。

「後継者として見られる目は厳しく、単なる業務の域を超えた様々な対応が磨かれた時期でした。常に考えていたことは、いずれ来るバトンタッチに対して経営者とは、社長業とはなにか?を常に考えていた時でもありました」

入社から3年が経たないうちに、先代が逝去。福島氏を取り巻く環境にも変化が訪れる。

「生まれてから、常に目にしてきた製造の現場に対して、何も抵抗なくレールの上を進むような気持で日々を過ごしていました。これから必要になるスキルや人間学は先代から聞いてはいたものの、『社長業とは何ぞや』がわからず、言葉にすると『作業』をやっていました。社員にも支えられながら学んでいましたが、先代の後ろ盾がない状態で27歳の若造には風当たりの強いこともあり、苦労した部分もありました」と思い返す。

入社から11年後の2006年、社長に就任した。

株式会社フクシマ化学について

続いて、会社概要について伺った。

「プラスチック製造メーカーとして、主に水回りを軸に、自動車、美容機器、医療関係の製品の金型設計から製造販売まで一貫した製造プロセスで製品を提供しています」と福島氏。

自社ブランドとしては、シャワーヘッド “if”(イフ)シリーズの「ISOLA FELICE(イゾラフェリーチェ)」を展開。自社の企画力・技術力をいかして製品化した“重炭酸バブルシャワー”は、マイクロナノバブルを発生させるだけでなく、シャワーヘッド内に中性重炭酸入浴剤をセットできる。上質なシャワータイムが過ごせる、ワンランク上の製品だ。

社員数は100名程度。今年で創業55周年を迎える。社長として三代目にあたる福島氏は、経営面で心がけていることについて、こう語る。

「現在では、企業に欠かせないESG経営(※)にも力を入れ、環境配慮に関わる素材やプロダクトの提案、企画にも積極的に取り組んでいます」

環境に配慮する取り組みとして、環境マネジメントシステムを確立。二酸化炭素排出量の削減、3R(リデュース、リユース、リサイクル)活動を通じた廃棄物の削減や節水、環境配慮型商品・設備等の積極的な導入の推進を掲げている。

「環境問題に会社として取り組むことで、社員にも日常的に意識してもらいやすくなったのではないかと思います。社会性に配慮した企画も生まれるようになりました。創業55周年の記念パーティープロジェクトでは、クリスマスツリーに社員全員の環境に対する『私の約束』を短冊でそれぞれが飾りつけましたが、意識の向上につながっていると感じました」と手応えを語る。

商品開発においても環境配慮型製品の開発、改良、販売の促進を目指し、気候変動や環境破壊問題に配慮。労働環境面では、残業時間の削減などの取り組みが評価され「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進企業」に登録されている。社内報「Heroes」は毎月発行され、社内の取り組みや社員の活躍を共有。やりがいのある職場づくりに努めている。

※ESG経営とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)に配慮した持続的な成長のための時代に即した経営手法のこと。

中国に設立した法人は5年余りで撤退

失敗談について伺うと、こう話してくれた。

「大きな失敗というと定義が定めにくいものの、失敗は多々あります。若い頃から根拠のない自信だけで走ってきて、チャレンジングなことに常に挑み続けているせいもあるかもしれません。その中で、最も大切にしてきたことはパッション(熱意)。まだ見ぬ世界や知識をどんどん吸収していくよう努めてきました」

チャレンジの1つとして、2010年には中国での法人設立へ踏み切った。

「外部の環境や産業の構造を捉えきれず投資を行い、時代を読みきれず5年余りで撤退に至りました。ネットワークの構築から、政府との関わり方や独特の商習慣まで、国内では経験できないようなことが多くありました。日本の常識では考えられない文化の中で、日本的なコントロール方法では効果が出ませんでした。失敗に至った要因の1つだったと思います」と悔やむ。

メーカーとしてモノづくりに徹していたフクシマ化学だが、2010年に自社ブランドのシャワーヘッドを発表。その立ち上げにも苦労したという。

「当社にとって、自社ブランドの企画、設計、製造、販売、P Rと多岐に渡る事業内容はそれまでとは全く異なるものでした。大きなマインドシフトが必要となり、サービスにまでどれくらいのリソースをかけていくか、という非常に困難な判断が連続する状態となりました」と当時を振り返る。

失敗を経て、ビジネスを俯瞰的に見られるように

失敗やさまざまな困難を乗り越えた経験について、こう語る。

「経験から、ビジネスを俯瞰的に見ることの重要さを学びました。経営にはそれぞれのスタイルがありますが、専門家の知識やネットワークの構築力は大変重要な要素だと思います」と、独断で決定するよりも、専門家に意見を聞くことも大切だと語る福島氏。 さらにこう続けた。

「企業ドメインとステートメントをしっかりと持つことが重要なのではと考えています。それらがない事業は、取り組みが分散化されたり、表面的な動きになってしまったりすることを痛感しており、外部の専門家の力やプロフェッショナルに任せる部分は学びも大きく、事業を加速させられると思います」

福島氏は社長に就任して16年を経た今でも、謙遜さも忘れない。

「さまざまな要素の切り口からとことん考え抜き、ダイナミックにチャレンジしていくことを大切にしています。現在はさまざまな人材を横軸で集めたプロジェクトに取り組んでいます」と会社の展望を語る。

就活生・若手ビジネスパーソンにメッセージを

最後に、就活生・若手ビジネスパーソンに向けたメッセージをもらった。

「創る・作る・売るの三要素を複合的にアクションに結びつけられなくてはビジネスパーソンとは言えず、単なる作業者で止まってしまいます」と福島氏。

「創る・作る・売る」とは、それぞれ開発・生産・販売の過程を指す。大企業ではこの過程が独立して顧客のニーズとは異なる商品になってしまったり、サイクルに時間がかかりすぎるという弊害が発生してしまう。その過程を途切れさせずに、スピーディーに実施していくことと、一元的に見渡すことが重要だと言われている。

組織の中においても、全体を俯瞰して見渡し、直接は関わらずともエンドユーザーを意識してビジネスを考えることが必要だ。そのうえで、福島氏自身も実践している3つのポイントが大切だという。

「パッションを持ちダイナミックにチャレンジすること・失敗の本質をしっかり掴むこと・運を引き寄せる力を身につけること、の3つを心がけています。最も大切なことは、人生の目的やビジネスの目的を常に考え抜き、誠実にやり抜くことに尽きるのではないでしょうか」

そのうえで、就活生や若手はどのようにしたら「運を引き寄せる力を身につけられる」のか聞いた。

「まずは、質の良い出会いを増やしていくこと、そして誠実さ・謙虚さの上に徳を積み重ねることだと考えています。小さな徳を積むことは誰にでもできることで、それが思わぬ運につながってくるというのが私の信念です」と福島氏。

失敗の本質を掴めば次に生かすことができる。運ですら自分の行い次第で引き寄せられる。経験を糧にチャレンジし続ける福島氏らしい、パッション溢れるアドバイスを送ってくれた。