企業の経営層は、過去にどんな苦労を重ね、失敗を繰り返してきたのだろうか。また、過去の経験は、現在の仕事にどのように活かされているのだろう。そこで本シリーズでは、様々な企業の経営層に直接インタビューを敢行。経営の哲学や考え方についても迫っていく。
第11回は、株式会社ゼットン 代表取締役社長の鈴木伸典氏に話を聞いた。
経歴、現職に至った経緯
就職浪人中、創業者に誘われ1996年にアルバイトで入社。ゼットンのベンチャー精神に共感し、この会社の企業化に貢献したいと考えるようになった鈴木氏。店長、ゼネラルマネージャーを経て、2004年取締役副社長に大抜擢。2016年より代表取締役社長に就任。現在に至る。
「起業の道も模索しましたが、ゼットンを企業として導き、その後創業者から事業承継する道も悪くないと考えました。とかく外食の世界は“独立してなんぼ”の風潮があり、そんな通り一辺倒の業界に一石を投じる、経営者へのプロセスを示したかった」という。 a##会社概要について {#id2}kaji
続いてゼットンの会社概要について聞いた。
「ゼットンは1995年に飲食店としてスタートしました。経営理念は『店づくりは、人づくり。店づくりは、街づくり』。その理念に則り、飲食業で培った技術やノウハウを駆使し、サステナビリティ戦略を掲げた『公園再生事業』にチャレンジしています。
2019年の葛西臨海公園の再生から、現在は葛西海浜公園、また名古屋徳川園の再生を行っている真っ最中で、来年の春には横浜山下公園の再生も手がけ始めます」
難題と向き合わざるを得ない現実が立ちはだかった社長1年目
過去の失敗談を伺うと、社長1年目のエピソードを語ってくれた。
「2016年に創業者からゼットンを承継しました。当時、売上こそ100億の大台を越えたタイミングでしたが、大きな赤字で経営状態に苦しむタイミングでもありました。
業績低迷に加えて、創業者の株式売却により大掛かりな資本の入れ替えも合わさって、社長1年目は資本という企業の根本に大きな変化を受け止めながら、企業再生しなければならない難題と向き合わざるを得ない現実が立ちはだかりました」
コロナ禍における経営も非常に苦しい思いはしているが、事業承継当時の苦しさ難しさに勝る苦労はないという。
「事業承継の始まりから大きなピンチの連続でしたが、スタッフ一丸となり企業再構築に臨み3年で見事なV字回復を遂げ、次なる挑戦として持続可能な社会を創造する企業へと進化するため、「公園再生事業」のアイデアに繋がりました。
公園という街のシンボリックなエリアを魅力的に創り上げれば、その街の価値もあがり、街自体のブランディングに繋がります。公園を機能的に整え、心地よい時を過ごせる街のエリアにすることが僕たちの使命だと感じています」と話す。
苦難を糧にして学んだこと
「事業承継で大変な思いや経験はしましたが、大きな資本の入れ替わりは企業のイノベーションに大きく貢献するということを学びました」という鈴木氏。
「ともすれば資本の入れ替えはハレーションを起こし、企業の空中分解を引き起こすリスクもはらんでいますが、やはりそれの対処法は、人間同士のコミュニケーションです。経営という中において人の力は偉大であり、人間力こそが企業を前進させる重要なエンジンだと感じています」
就活生・若手ビジネスパーソンにメッセージを
最後に、就活生・若手ビジネスパーソンに向けたメッセージを伺った。
「社会に出れば苦しいことや悔しいことの連続は当たり前ですが、それを『笑顔と元気』で乗り切っていくことが、その人間の価値となり、自分にはね返ってくると僕は信じています。
『勝利の女神が好きなものは笑顔と元気』だと表現したプロ棋士がいましたが、まさに勝利はゲームを戦う心に宿るものだと感じています」
と語ってくれた。