連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
社会人3年目のOLです。他にやりたい仕事を見つけ、転職してパティシエになろうと考えています。まだ経験もないのでケーキ屋さんなどに就職して修行するのがいいのかなと思いつつ、転職して仕事に就く前に、フランスへの短期留学やHP制作の勉強などやっておきたいこともあり、その間一人暮らしを維持できるかどうかが心配です。今の仕事を辞めたあとの無収入期間をどうやりくりしていけばいいでしょうか? アドバイスお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 職業訓練学校は、受講すると失業手当の給付制限がなくなったり、給付期間が延長されたりする上、再就職に必要な技術を習得できるというメリットの多い制度です。雇用保険受給者等の求職中の方で再就職を目指す方なら、公共職業安定所(ハローワーク)の受講指示を得て利用することができます。

  • 一般的に不測の事態のために、生活費の6か月分から1年分を予備資金として置いておくことが理想と言われています。海外留学への費用等も含めると、竹内さんが貯めようと決められた300万円は、確実に用意してから会社を辞められた方が、将来の生活設計を考える上でも安心と言えるでしょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


将来の夢に向けて、しっかりと資金準備を進めています。家賃を支払いながら、手取りのおよそ22%の貯蓄を継続されていることから、夢への熱い思いが伝わってきます。無収入となる半年間の生活について経済面での不安がないようプランを考えていきましょう。

キャリアプランを実現するために

なりたい自分の姿が明確な竹内さんですが、それを実現すべく準備の段取りを改めて整理してみましょう。

竹内さんの将来のビジネス構想は、手作りのお菓子をインターネットで販売するお店を運営すること。そこに近づくために、職業訓練学校でホームページ制作を、フランス留学でお菓子の勉強をすることから準備を始めたいということですね。

職業訓練学校は、受講すると失業手当の給付制限(※)がなくなったり、給付期間が延長されたりする上、再就職に必要な技術を習得できるというメリットの多い制度です。雇用保険受給者等の求職中の方で再就職を目指す方なら、公共職業安定所(ハローワーク)の受講指示を得て利用することができます。無料で受講でき、訓練校までの交通費(上限あり)、日当(受講手当)の支給があります。失業手当の給付期間が過ぎても受講している間は給付されます。なお、訓練校への申し込みは、ご自分の住所地を管轄するハローワークへ願書を提出します。地域により実施される講座が異なるため、他県の訓練校を希望することもできますが、受講指示が出るような理由が必要となるでしょう。

※ 自己都合による退職の場合、通常、退職後3カ月間は給付制限期間があり、この期間が終わらないとは失業手当がもらえません。

また、国外へ留学する場合は注意が必要です。海外へ行くと定期的にハローワークに通うことができなくなるため、失業手当を受給するのは難しくなると考えられます。月に1回、指定された日にハローワークに出向き、定期的な職業相談を受ける必要があるからです。給付金の支給申請もこの日に行われます。

失業とは、「積極的に就職しようとする意思」があり、健康面と環境面の双方においていつでも就職できる状態であること、そして仕事を探している状態をいいます。そのため、給付制限期間に、海外に留学することは、その条件を満たしているとは言い切れなくなります。失業手当が受けられるのは退職した日の翌日から1年間であることに留意して、帰国してから、失業手当を受ける手続きをされることも考えてみてはいかがでしょうか。

資金の積立てに工夫を

では、退職後、このように次のステップまでの準備期間の生活費など経済的負担はどれくらいかかるでしょうか。一般的に不測の事態のために、生活費の6か月分から1年分を予備資金として置いておくことが理想と言われています。海外留学への費用等も含めると、竹内さんが貯めようと決められた300万円は、確実に用意してから会社を辞められた方が、将来の生活設計を考える上でも安心と言えるでしょう。

今までの貯蓄ペースをそのまま継続すると、4万円×12カ月→48万円

ボーナス時に60万円となり、これからの1年間で108万円積立てられ、預金と合わせると目標額に達します。とはいえ、もう少し目標額に到達する時期を早めたいとなると、

  1. 今よりも節約し支出を減らす

  2. 月当たりの積立額を増やす

  3. 運用利回りを上げる

といういずれかの方法を選択することになります。

ただ、節約にはかなり心掛けてこられたことが家計データからも読み取ることができます。住居費が家計に大きな負担となっており、家賃5万円に抑えられると尚よいですが、そのほかの支出を抑えることにより、月4万円もの積立が実現できています。

となると、残りの手段は、運用利回りを上げるということに。普通預金ではなく株式や債券などの証券投資を取り入れた運用によりお金を増やす方法です。これは、より高い運用利回りを追及する一方で、元本の保証がなく、状況によっては積立てた金額が減ってしまう可能性もあります。ただ、毎月コツコツと定額を積み上げることにより、値段が高いときには少ない数量を買い、値段が低いときには多くの数量を買うことができます。それにより1回の購入単価を抑え、平均的な運用利回りを享受することができる方法でもあります。

投資信託協会などが無料で開催するセミナーに参加し、資産運用の話を聞いてみても損はないと思います。ただし、そこで自分には合わない、まだ理解するのは難しいと感じたら、今回は「3」の方法を選ぶのは止めておきましょう。安心してお金を備えていくためには「よくわからない商品・方法は選ばない」が鉄則と言えます。

安心を優先させる資金準備

無収入の期間を支える資金は多いほど安心であることは言うまでもありません。ゆとりを持ってスタートをきるためにも、あと1年を目途に目標を定めてみてはいかがでしょうか。これまでの貯蓄実績から目標額は見えてきています。今は焦らず、将来の夢の実現に向けて準備期間を儲け、しっかりした資金準備を進めましょう。それがプラン実現への最良の近道になるはずです。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子

大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。