連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
子どもが小学生になるまでにマイホームを購入しようと思っていましたが、来年4月から消費税が8%にアップすると知り、来年の4月までに購入したほうがいいのかと迷っています。家となると金額も大きいので、消費税が変わると金額にかなり差がでるでしょうか?また、消費税アップにより、住宅ローンの金利なども変わってくるのでしょうか? 消費税アップ前とアップ後のマイホーム購入のポイントなどについて教えてください。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 「目標の1000万円に達する前に購入しても大丈夫か」というよりも今後の生活が大丈夫なのか、という視点が大切です。現在の支出総額は、ご主人の収入より上回っています。これは珠代さんが働き始めて、すこし生活が贅沢になった部分だと思います。珠代さんが働いている間は削る必要はないと思いますが、どこの部分で贅沢をしているのかはきちんと確認しておきましょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


あと2~3年のうちに家を買いたいと思われていた中での消費税の増税、気になりますね。増税前後でどのように資金計画は影響するでしょうか?

消費税増税の影響は…

先日見てこられた2800万円の物件、土地には消費税がかからないので、建物1400万円、土地1400万円だとしたら、建物だけに消費税がかかります。

  • 消費税5% 1400万円×5%=70万円

  • 消費税8% 1400万円×8%=112万円

おなじ物件を買ったとしても増税の前と後では42万円の差が出てきます。他にローン手数料や、引っ越し費用、家電や家具などを新たに購入すればそれらにも影響が出てきます。

それでは、増税と同時に変わる住宅ローン減税はどうでしょうか。住宅ローン減税は、10年間、年末のローン残高の1%にあたる金額を所得税・住民税から引くことができる制度です。現在は20万円が上限ですが、増税後は40万円になります。

住宅ローン減税の効果

現在の貯蓄900万円のうち、緊急予備資金を150万円、現金で用意が必要な諸費用を250万円と仮定して、残り500万円を頭金とし、2300万円を35年、金利2%で借りることとします。

年末のローン残高が2300万円だったとすると、1%は23万円なので上限の20万円が戻ってきます。所得税を20万円以上払っていない場合は住民税から引くことができます。増税後は上限が40万円になりますが、ローン残高の1%は23万円なので、23万円が戻ってくることになります。払っていない税金は戻ってこないので、現在いくら払っているのか確認してみましょう。

出典:相談者のデータをもとに筆者作成

ローン残高は毎年減り続けますので、あくまで収入も控除も一定の金額だったら、ということが前提ですが、消費税増税の前と後ではトータル11万円、増税後のほうが戻る税金は多くなります。

また増税後は、負担を軽減する処置として「すまいの給付金」が住民税(所得割)の額に応じて10万円~30万円を受け取ることができるので、対象になれば、消費税前と後での影響はとても小さくなります。

出典:国土交通省 すまいの給付金HPより

金利は上がる?

住宅ローンに限らず、金利は景気が上がれば高くなりますし、悪くなれば低くなります。政府は各種指標により景気が上向いているので、増税をしても景気が減退することはないというスタンスですが、消費税増税の影響で消費が冷え込み、景気が悪くなるという経済学者もいます。

2300万円を35年返済2%で借りたとして、総返済額は31,999,800円になります。金利が0.5%上がるだけで、総返済額は34,533,660円となり、差額が253万円にもなります。

1000万円を目標に貯蓄をされているとのことですが、あと100万円貯めている間に金利が0.5%上がってしまうと、努力は水の泡になってしまいます。

逆に景気が悪くなれば、需要が落ち込み、同じ物件でも大幅に値下がりする可能性もあります。

今後の生活をシミュレーションしよう

「目標の1000万円に達する前に購入しても大丈夫か」というよりも今後の生活が大丈夫なのか、という視点が大切です。

現在の支出総額は、ご主人の収入より上回っています。これは珠代さんが働き始めて、すこし生活が贅沢になった部分だと思います。珠代さんが働いている間は削る必要はないと思いますが、どこの部分で贅沢をしているのかはきちんと確認しておきましょう。

また、死亡保障に加入していないことが気になります。遺族年金の補完として、月々5万円を60歳までもらえる保険に加入したとして、保険料は月2000円弱だと思いますので、加入をお勧めします。

今の生活水準を変えず、300万円の車を3回目の車検時に買い替え、子どもは高校まで公立、大学は私立の文系4年制へ進学することと仮定してキャッシュフローを作り、見ててみますと、今購入しても、頭金を200万円上乗せして2年後に購入したとしても、それほど大きな違いはありません。残念ながら全体を通して貯蓄は伸びず、70歳時の車の購入で貯蓄がマイナスになる時期がでますが、どこかの時点で車検をもう1回通すことにしたり、もう少し安い車に変えたりすれば乗り切っていけると思います。

気になるのは、収入に対する住居費の割合の高さです。2300万円を35年金利2%のローンを組んだ場合、月々の返済額は7.7万円(収入の30%)になります。現在家賃が7.5万円ですし、お子さんが入園後に働き始めたということは、貯蓄の大半はご主人の収入から貯蓄されてきたと推察します。支出をみても住居費以外に注意する点もないですし、堅実に生活されてきたことが伺えます。きちんと貯蓄されていることからも杞憂かもしれませんが、住居費が少し高いように思います。珠代さんが今後ずっと働き続けるなら問題はないですが、二人目のお子様を望まれるとか、仕事を続けるつもりはないならば、20%~25%に抑えたほうが、老後の生活に余裕が生まれます。

ローンを2000万円内に抑えられればご主人の収入の25%になります。資金贈与が得られないか、予算を変えられないか検討してみましょう。

本当にほしい物件か焦らず検討を

新築一戸建てを購入されるのが「夢」とのこと。マイホームを購入する前に、一番大切にしてほしいことは、先日見つけた物件が理想に合っているかどうかです。消費税前でも後でも家を購入できる準備ができていると思いますので、本当にほしい物件なのかどうか、あせらず今一度確認してみましょう。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか

「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シミュレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。