「JJ」2014年1月号

赤文字雑誌の「JJ」「CanCam」「ViVi」「Ray」

女性誌には「赤文字雑誌」というものがあります。「JJ」「CanCam」「ViVi」「Ray」の4誌が「赤文字雑誌」に入ります。もともとは、表紙にある雑誌タイトルのロゴが赤文字だったことからそう呼ばれるようになりました。

90年代などは、この4誌は女子大生をターゲットにしていて、程度の差はあれコンサバファッションが中心というのが共通項で、あまり雑誌を読まない人にとっては、表紙も同じ感じで(ロゴも赤いし)似たり寄ったりというイメージがありました。もちろん、ちゃんと読めば、それぞれの棲み分けはあったわけですが。

今の赤文字雑誌のロゴは赤文字ではない

ところが、今の「赤文字雑誌」のロゴは、赤文字ではありません。14年1月号で比べてみると、「JJ」は最初のJがサーモンピンクで後のJがゴールドの二色づかい、「CanCam」はショッキングピンク、「ViVi」はシルバー、「Ray」は甘い感じのピンクとそれぞれ違っていました。そして、中身も4誌それぞれかなり違ってきています。

例えば、「Ray」は甘いピンクがロゴなだけに、中身もキャッチも甘め。「愛されミニ」とか「マシュマロ肌」「プリンセス気分」などのキーワードからも、男の子が守りたくなるような女の子像が浮かびあがります。また、着回しページのストーリーも一人でなんでもやってしまうような女の子ではなく、甘え上手で女子力の高そうな女の子が主人公になっています。雑誌全体を見てもアイテムはパステル調のセーターやフレアースカートが多め。ちなみに、最近は現役のアイドルやタレントをモデルに器用することが多くなっていますが、「Ray」の場合は、乃木坂46の白石麻衣さんが活躍しています。

では、シルバーのロゴの「ViVi」はというと、ロゴの色とリンクしていてかなり辛口。スタッズのついた小物や豹柄のアイテムに、リップは赤で黒髪ブームと言われる今でも髪はかなり明るめ。流行の短めのトップスやペンシルスカートなどのコーディネートが多く、ちょっと強気な女の子の雑誌といった雰囲気です。モデルも、トリンドル玲奈さん、藤井リナさん、ローラさん、マギーさんなど、ハーフタレント勢が強いようです。アイドリング!!!の菊地亜美さんがこの雑誌の専属モデルオーディションのファイナリストの5名に選ばれて話題になったこともありました。

一方、ショッキングピンクのロゴの「CanCam」は、今のイチオシモデルが女優の山本美月さんで、元モーニング娘。の久住小春さんも頑張ってます。今月の特集では、黒髪と茶髪は半々と捉えているようですが、どっちかというと茶髪でも「ViVi」のような金髪に近いものではなく、コンサバで甘めな茶髪を想定していると思います。今流行りのボーイッシュなアイテムも取り入れつつ、でもやっぱりスカートはミニのフレアーだったりと女の子らしさは決して忘れず、「Ray」と同じく、「守りたくなる」女の子であることは基本のようです。

"もはや甘い女の子はモテない"が見える「JJ」

興味深いのはツートンカラーのロゴだった「JJ」です。最近の「JJ」は、強めで我が道を行く「ViVi」とも、守ってあげたくなる路線の「CanCam」や「Ray」とも違って、「もはや甘い女の子はモテない」ということに戦略的に気付いていて、この秋くらいから男の子と同じテイストの服を着る「彼カジ」を押しているのです。

2014年1月号にも「イマドキ 男のコの"いいね"って意外とカジュアル!」という特集があり、「最近は素敵なカップルの服はなんとなく似ている」「素敵な2人はお互いに自立している」ので、「愛され」や「かわいい」を追求したり、甘いアイテムで女の子らしさを武器にしても、もはやモテにはつながらない、イマドキの男の子に「女の子を守ってあげたい願望」なんてほぼないよ! と言っているように思えます。

そういえば、最近出版された酒井順子さんの『ユーミンの罪』では、1980年前後のユーミンの歌に出てくるのは、彼氏の運転する車の助手席に座っていたり、男の子がサーフィンやラグビーやスキーをしている姿を見ていたりするような女の子だったと書かれていました。

当時ユーミンを聞いていた女の子は、かなりの確率で「JJ」を読んでいたはず。でも、今「JJ」を読んでいるのは、彼氏が何かしているのを応援する女の子ではなく、彼氏とスポーツや趣味を一緒に楽しめる、プレイヤー的な女の子を目指す時代へと変化したのだなと、今月号を見て感じたのでした。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。