健康管理の一環として関心が高まっている「腸活」。バランスのよい食生活や適度な運動など腸内環境を整えることによって、体調や肌、ダイエット効果が期待できます。

今回、マイナビニュース会員に「腸活をしていますか(していましたか)?」と質問したところ、約6割が「はい」と回答。また、「はい」と回答した人に腸活方法について聞いたところ、「腸に良い食事をする」「ストレッチや軽い運動をする」「腸マッサージ」「腸活サプリ」などの回答がありました。しかし、「そもそも何から始めたらいいのか分からない」「この腸活方法で合っているのか」など、悩みを抱える人も多いようです。

そこで今回は、マイナビニュース会員から腸活に関する悩みを募集し、TOTO関西支社健康管理室産業医の甲斐沼孟先生にお答えいただきました。

便秘防止のために普段から食事に気を遣っていますが、牛乳やヨーグルトを摂るとおなかがゆるくなることがあり悩んでいます。 (女性/33歳)

ーー牛乳やヨーグルトなど、乳製品でおなかがゆるくなってしまう原因を教えてください

甲斐沼先生:乳糖摂取により生じる不快な症状を「乳糖不耐症」と呼びます。この状態になると、乳製品を摂取することで下痢や腹痛などの症状が認められやすくなります。

乳糖不耐症と聞くと、一見病気のように聞こえるかもしれませんが、哺乳動物に見られるごく自然な特性です。 母乳を授乳している乳児は、母乳内に含まれる乳糖成分を生命のエネルギー源として利用するためにラクターゼの働きが活発になっていますが、離乳した後はエネルギー源を母乳に頼る必要がなくなり、徐々に乳糖分解酵素が生産されなくなるのです。

乳製品に含まれている乳糖成分は、本来であれば乳糖を分解する酵素であるラクターゼにより分解されて小腸で吸収されます。 ところが、ラクターゼが体質的にもともと少ない、あるいは機能が低下していると、乳糖は小腸で分解されず、大腸領域へ進んだ乳糖成分が腸内細菌により分解される際にガスや酸が通常よりも多く産生されることになります。

乳糖は大腸内に水を呼び込む特性を有しているので、乳糖が大腸に流れ込むとその分下痢症状をもたらしやすくなりますし、ガスが大腸内部で大量に発生すると腹部膨満感などの症状が出現する原因となります。

ーー乳製品の摂り方や摂る量の工夫で、乳糖不耐症を発症せずに摂取できますか?

甲斐沼先生:牛乳やチーズなど乳製品を摂取して常にお腹が緩く軟便、あるいは下痢になる人の場合には、乳糖の含有量が少ない低乳糖牛乳を選ぶ、あるいは1回の摂取量を減らして数回に分けて摂取するなど、乳製品を少しずつ摂取することで乳糖が分解しやすくなって腹部症状が緩和できます。

また、冷たいものを摂取すると腸への刺激が強くなるので、ホットミルクやホットヨーグルトなど、温めてから摂取することで小腸への刺激が弱まります。 ただし、ヨーグルトは60℃以上に温めると本来含まれている乳酸菌やビフィズス菌が減り腸内環境を整える効果が減弱してしまうため、40℃以上に加熱しないように配慮しましょう。

コーヒーや紅茶にミルクを混ぜる、あるいはミルクにチョコレート成分を加えてココアにすることでラクターゼの働きも盛んになって下痢症状が起こりにくくなると考えられます。

さらに、乳糖の量を抑えた市販の乳飲料、あるいは乳酸菌の発酵により乳糖成分の30%程度が分解され乳糖の含有割合が減少しているヨーグルトなどは、牛乳などと比較して下痢が起こりにくいと言われています。

甘味料が含まれている乳製品にも注意が必要です。甘味料の中でもキシリトールやマルチトールなど、腸内で吸収されにくい性質上、大量に摂取すると下痢を誘発しやすくなる場合があります。製品を選ぶ際には確認をしてから選択するよう心がけましょう。

ーー乳製品以外で、腸活(便秘解消)におすすめの食材を教えてください

甲斐沼先生:便秘を解消して適切な腸内環境を保つためには乳製品を摂取する以外にも様々な方法があります。排便を促す腸内環境を日常的に整備するためには、便量を増やして排便リズムを整える効果を期待できる食物繊維を積極的に摂取するようにしましょう。

一般的に、食物繊維の成分には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類があり、前者は「水に溶けにくい食物繊維」、後者は「水に溶けやすい食物繊維」です。 例えば、わかめや昆布・ひじきなどの海藻類には水溶性食物繊維が豊富に含まれていますので、味噌汁や鍋・煮物などに海藻を取り入れることで便を柔らかくして排便をスムーズにする効果が期待できます。

また、腸管内で醗酵して腸のガスを発生させやすい食材であるイモ類には不溶性食物繊維が多く含まれているので、便秘傾向である人に積極的に摂取していただきたい食材の一つとなります。

さらに、えのきやしいたけなどキノコ類には不溶性食物繊維が多く含まれており、汁物や炒め物・煮物などさまざまな調理方法で料理できる食材なので日常の食生活で積極的に取り入れてみましょう。 キノコ類を摂取することで腸のぜん動運動を活発にして、便を順調に排出する効果がもたらされますし、便秘の方における腸活のみならず動脈硬化を予防する点でも役立つ食材であると考えられています。

便秘気味になると腸内にガスが溜って腹部が全体的にハリを感じて膨満感を自覚し、ケースによっては腹痛を感じるなどさまざまな不快感を味わって生活の質が低下することになります。普段の生活で便秘を解消して適正に腸活を送るために、乳製品を摂取する以外にも海藻類、イモ類、キノコ類などの食品を前向きに食卓に取り入れることで排便をスムーズに促進できるように努めましょう。

監修ドクター: 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生

TOTO関西支社健康管理室産業医。大阪大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長


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