独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第12回となる今回は、神戸市北区で高級食パン専門店「イケメン大集合」を経営されている、荒井洋介さんにお話を伺いました。

「もう終わりかも」から「新規開店」へ発想の転換

――地鶏屋さんからのパン屋さん、という異業種進出だと伺いました。そもそものきかっけは何だったのでしょう。

荒井さん:この神戸北店を開業する1年2カ月前に、小野本店をオープンしたんですけど、そのきっかけが、新型コロナなのです。もともと飲食店「地鶏屋」を経営していたのですが、その店がやっと起動に乗り出した頃に、最初の緊急事態宣言が出たんですね。これは長引く!と感じて、当時は本当に「終わりかも」とも思いました。

しかしすぐに「いや、これはチャンスだ」と気持ちを切り替えたんです。もちろんビジネスパートナー以外に、「チャンス」と口にした事はありません。感染された方やお亡くなりになられた方には、心からお悔やみを申し上げます」

――よく、ピンチはチャンスと言われますけど、まさにその発想だったわけですね。

荒井さん:はい。当時は人生の中でこんな世の中の変化に遭遇するなんて……と感じていました。新型コロナという感染症を変える力は私にはないけど、この出来事に対する捉え方を変える事はできる、と。

ほとんどの飲食店経営者さんが「協力金」をもらいながら耐えている中、私は「イケメン大集合 小野本店」をオープンさせたんです。結構無茶な挑戦ですよね。でも、“大きく変わる”と書いて「大変」じゃないですか。大変なときこそ変わるタイミング、開業は本当に自分を成長させ、組織を成長させる、大きな一歩です。本店、北店のスタッフ約40名とともにこの変化の時代を進んでいきたいと思います。

「会社は人の為にある」-お客様もスタッフも幸せな店に

――このご時世に複数店舗を経営されているわけですが、荒井さんを支えるやり甲斐みたいなものはあるのでしょうか。

荒井さん:開業って、実はキャッシュさえ作れば誰でも簡単にできてしまうのです。ですから、“たどり着いた感”より、スタート地点に立てた感じですね。やりがいはやっぱりお客様の声です。「何これ! 美味しい」「こんな美味しい食パン食べたことない!」「うちの子供イケメンパンしか食べないのぉ」って。地鶏屋もそうですが、本当に感謝されることが多くて、店を作って本当によかったと思います。

あと、会社全体で約60名のスタッフの仕事場を作れていることも、大きなやりがいです。お店のクレド(信条)に、「会社は人の為にある」という言葉があります。これが逆に「人は会社の為にある」となってしまえばブラック企業になってしまう、だからこの言葉から始めました。スタッフ全員が働きやすい職場を目指しています。

――お客様のことも、スタッフさんのことも考えられているからこその、お店の存続なのですね。よければ今後の展望などお聞かせください。

荒井さん:私は現在47歳です。56歳までに、会社を年商10億に成長させます。私は3年前、何もかもなくしてゼロから飲食業を始めました。いえ、ゼロどころか2400万円の借金からスタートしたんです。現在のビジネスパートナーがいなければ、自己破産をしていたかもしれません。それが昨年の決算では、コロナ禍でありながら年商9000万円までいきました。9年後には10億に成長させて、次の世代のリーダーがまた会社を成長させることになるでしょう。

カーネル・サンダースの哲学にならって、できることはすべてやる

――明確なビジョンと確信ですね、ここまで積み上げてこられたご実績も納得です。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

荒井さん:カーネル・サンダースは、無一文から65歳でケンタッキーフライドチキンの事業をスタートさせて、現在では世界中でフライドチキンを食べられるほど大きくなりました。カーネルのビジネス哲学は、「できることはすべてやれ。やるなら最善を尽くせ」という2つのルールです。さらに、「最も奉仕する者が最大の利益を得る。我が身の前に他人に奉仕せよ」、これもカーネルが何か行動するときの指針になっています。

私は43歳のとき全くの素人から飲食事業をスタートさせました。私もできることはすべてやります。やるなら最善を尽くします。我が身の前に他人に奉仕します。カーネルのビジネス哲学とともに、この変化の時代をみなさんと共に歩んでいきたいです。