独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第10回となる今回は、六本木でパーソナルジム「ANDBODY」を開業された道端竜也さんにお話を伺いました。

  • 道端竜也さん

飲食店からパーソナルジム-畑違いの転職で勉強の日々

――トレーナー歴は長いそうですが、もともとは飲食店にお勤めだったのですね。

道端さん:はい、高校を卒業後は飲食店で社員として働いていたのですが、少しずつ体型が気になりだしまして。プライベートジムに通い始めたところ、そこのトレーナーさんに憧れるようになった、というのがきっかけです。それから飲食店を辞めるのに時間はかかリませんでした。すぐにアルバイトができそうなスポーツクラブを探して、採用を勝ち取り、トレーナー歴は9年目に入りました

――畑違いの業種から、トレーナーになるにはご苦労もあったのでは?

道端さん:トレーナーに転職してからは勉強の毎日でしたね。解剖学、栄養学、運動生理学など、今でも勉強することが尽きません。当時お世話になっていた上司からは、「それっぽっちの知識で全部わかったような気になるな」「100人いれば100通りの指導が存在する」など、愛ある助言をたくさんいただきました。

今では全米認定を含むトレーナー資格を10個以上保有しています。また今までに2,000人以上のダイエットやボディメイクをサポートし、一般の方からアスリート、アーティストまで、幅広い分野で年間1,500本強以上の運動指導を担当しています

決断と行動の速さで困難を乗り越える

――それは凄い。アルバイトからのスタートでトレーナー歴9年の方の実績として、は突出されているのではないでしょうか。よければそこから開業に至った経緯などお聞かせください。

道端さん:きっかけは、新型コロナウィルスによるパンデミックです。当時、真っ先に営業停止の要請措置が出されたのがスポーツクラブでした。僕はあっという間に働く場所がなくなり、収入もゼロになりました。仕事のアテもなく、いつ落ち着くのかもわからないコロナウィルスを気にしながら生活する毎日は、ただただ苦痛でしたね。

その後、「何もしないで待っていても状況は変わらない」と思って、トレーナー達が集まるコミュニティに参加してみたんです。そのコミュニティで企画された「箱根九頭竜神社参拝」で、現在のメンターである田中克成さんと出会いました。

コミュニティマーケッターである田中さんからは様々なご縁を繋いでいただいたのですが、この「ANDBODY」の開業も、そのうちの1つです。新型ウィルスのこともあって、「このまま大手スポーツクラブに依存して良いのか?」と考えていましたので、開業の話はまたとないチャンスだと直感し、決意しました

――いつもご決断と行動が早いですね! 開業を決められてから現在まではどのような道のりだったのでしょう?

道端さん:苦難と失敗だらけです(笑)。それまでトレーナーとして現場指導しか担当していなかったのに、今度は初めて数字を管理する側になり、大変苦労しました。

またオープン前のレセプションパーティーでも学びがありましたね。当初ジムのコンセプトを「ズボラでも通えるパーソナルトレーニングジム」としていたのですが、皆さんの意見を聞くと、「そもそもズボラな私はジムに行かない」「出来ないからズボラなのよ」と、予想とは大きく違うものでした。

ですが、この経験があったからこそ「あぁ、自分の売りたい商品を売ろうとしていたな。お客様の顔を見ていなかったんだな」と気づくことが出来ました。

そこからは、パーソナルトレーニングジムとしてはありえない、60分(トレーニング45分+カウンセリング15分)のパーソナルトレーニングを1,000円(税込)という利益度外視のキャンペーンを実施し、お客様の生の声を集めることに注力しました

開業1カ月、支えてくださる周囲の方々のお陰

――なるほど、スタートからいきなり困難に直面されたのですね。その困難を越えていく力になったのは何でしょう?

道端さん:前述の1,000円(税込)キャンペーンのやりがいは、凄く大きかったです。「好きな洋服を着るために綺麗になりたい」「鏡に映る自分を好きになりたい」「体力をマイナス30歳にしたい」などという、お客さまのリアルな声をいただくきっかけになりました。お世話になった上司の「100人いれば100通りの指導が存在する」の意味を改めて感じることが出来た、素晴らしい機会にもなりました。

開業してからまだ1カ月に満たない「ANDBODY」ですが、沢山の人に支えられているからこそ開業することが出来たジムだと感じています。開業できたからオッケーと驕らずに、常に周りの方への感謝を忘れずに営業していきます

「整えてから鍛える」を広めたい!

――困難があったからこそ、見えてきた景色ということですね。道端さんの今後の展望など、ぜひお聞かせください。

道端さん:ANDBODYでは「整えてから鍛える」という独自のメソッドを導入しています。例えばデスクワークが中心の女性の場合、パソコン作業の割合が多いため、腕の骨は前に移動し、猫背になりやすいと言われています。猫背になれば頭の位置も前に飛び出し、バストの位置は下がります。おまけにお尻も垂れやすくなるので、実年齢よりも老けてみえてしまうというのが現状です。

そのような状態で鍛ると、歪んだ骨格の上に筋肉をつけてしまうことになるので、どこかカッコ悪い体になってしまう可能性が高いんです。それではもったいないという想いがあり、このメソッドを開発しました。将来的には、これを広めるために多店舗展開をしていきたいと考えています。

――なるほど、「整えてから鍛える」ことが大切なのですね。最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

道端さん:開業には沢山のリスクがつきものです。ですが、そのリスク以上にあるのがやりがいです。周りに開業すると宣言すると、「絶対失敗するからやめておけ」「お前にはムリだ」という声も沢山あがります。ですが「あなたなら出来るよ」「応援するから困ったことがあったら何でも相談してね」という声をかけてくれる方も沢山います。

僕は開業をしたことにより、「僕の技術は皆さんから必要とされていたんだ」と、実感することができました。今の自分を変えたい。何とかしてみたいという方は開業に挑戦してみるのもアリだと思います!