マイナビニュースの読者様にお聞きした「住宅ローン」についてのアンケート結果から、皆さまが気になっていることに対してQ&A形式でお答えしていきます。
第一弾は、「繰り上げ返済」についてです。
Q.繰り上げ返済をするべきか気になっています。繰り上げ返済をする前に知っておいた方が良いことはありますか?
A.結論からお伝えすると、利息負担を軽減する効果があるので繰り上げ返済をしても良いです。しかし、低金利の状況では積極的に繰り上げ返済をしなくても良いのではないかと思います。そう考える理由について解説をしていきます。
繰り上げ返済とは
そもそも繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別にまとまった金額を前倒しで返済する方法です。返済はすべて元金に充てられて、その分の利息を支払わなくて済むので、総支払額を減らすことができます。
繰り上げ返済の方法は、「返済額軽減型」と「期間短縮型」の2種類です。
・「返済額軽減型」:期間はそのままで月々の返済額を軽減するので、毎月の返済の負担を軽減したい人向きです。
・「期間短縮型」:月々の返済額はそのままでローンの期間を短縮するので、少しでも早く完済したい人向きです。
また、繰り上げ返済は基本的にはいつでも行うことができますが、最低金額や手数料の有無は、金融機関やローンの種類によって様々です。事前に確認しておきましょう。
繰り上げ返済前に知っておくべき4つのポイント
繰り上げ返済をするかどうか決断をする前に知っておいて欲しい、4つのポイントについて解説していきます。
(1)低金利で借り入れができている場合の利息軽減効果は限定的
返済中のローンに適用されている金利にもよりますが、低金利で借り入れができている場合は、そこまで大きな利息軽減は期待できません。
また、住宅ローンをいったん繰り上げ返済してしまうと取り消すことができません。
お子様の私立進学や住宅のリフォーム費用、医療費などで、思いがけず支出がかさんでしまうケースもあります。繰り上げ返済については、家族のライフイベント等を考慮しながら、資金不足に陥らないように無理のない金額で行うことが重要です。
(2)団体信用生命保険(団信)の保障額が少なくなる
団体信用生命保険は、万一時に保険金が支払われて、残りの住宅ローンが弁済される制度です。極端な例えですが、500万円の繰り上げ返済をした後に借主が亡くなってしまった場合、残りの住宅ローンは団信が効いて返済をしなくて済むので、繰り上げ返済をしていなければ、500万円が手元に残っていたということになります。
このように繰り上げ返済をすることで団信の保障額も少なくなってしまう点も考慮しておきましょう。
(3)住宅ローン控除の金額が少なくなる
住宅ローン控除は年末の借入残高に控除率を乗じて計算をします。
例:現行の制度0.7%で計算
・繰り上げ返済をせず、3,000万円の住宅ローンが残っている場合:控除対象額21万円
・500万円分を繰り上げ返済して、2,500万円の住宅ローンが残っている場合は:控除対象額17.5万円
このように繰り上げ返済をすると借入残高が少なくなるので、その分控除される金額も少なくなります。住宅ローン控除と繰り上げ返済のどちらがお得になるのかは確認した上で判断すると良いでしょう。
また、住宅ローン控除の適用を受けるには、償還期間が10年以上でなくてはなりません。繰り上げ返済をすることによって10年未満となる場合は住宅ローン控除自体を受けられなくなる点もご注意ください。
(4)繰り上げ返済しようとしている余裕資金を資産運用に活用
あくまでも資産運用は元本保証ではないので確実とは言えませんが、現在のような低金利の状況であれば繰り上げ返済ではなく、資産運用に回しておくことも賢い選択のひとつです。どのくらい運用での利回りを確保すれば良いのか計算をしてみました。
このデータから住宅ローン金利1.5%以下の場合は運用利回り1%以上、住宅ローン金利3%でも運用での平均利回りが2%以上で運用できれば、繰り上げ返済による利息軽減効果を上回ります。
まとめ
今回は住宅ローンの繰り上げ返済について、繰り上げ返済をする前に知っておくべき4つのポイントを解説してきました。
家族構成や状況次第ですが、低金利のうちは繰り上げ返済をせずに、まずは借り換えなどで効果が出ないかを一度確認することと、金利が上昇した時に繰り上げ返済できるようにしておくと、バランスが良いと思います。
それでも繰り上げ返済を行う場合は、ご家族のライフイベント等を考慮しながら、資金不足に陥らないように、無理のない範囲の金額かつ適切なタイミングを選んで行うことが重要です。