「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第9回のテーマは「一声かけて」です。
これは少し前に我が家で勃発した問題です。
うちの息子は1歳半くらいから、徐々に「お母さんが好き」になっていき、4歳の今もスーパーママ大好きボーイです。そうなってくると、息子のほうから寝る前の仕上げ磨きなど、日々のお世話を「お母さんがいい」と指名されるように……。
まぁ「本人がそう言うから」しかたない。という感じで、だんだんとお世話のタスクがお母さん(私)に寄っていきました。こちらとしては毎日のルーチンは率先してやりたいわけでもないし、夫婦2人で協力できるのが理想なので、タスクの偏りは不本意です。
しかし気がつけば、夫は子どもが寝るギリギリの時間まで自室に籠もるようになり、「お母さんがいい」と言いつつ、素直に言うことを聞くわけでもない息子の世話は私一人が負うことに……。
あれ? おかしくない? 我が家は仕事も家事も育児もシェアする夫婦のハズなのに。
以前のコラムで「不満はお金で解消」という話をしましたが、これくらいの不満に関しては「お金で解決」というほどのことではありません。ただ気遣いがほしいし、当たり前だと思わないでほしいのです。
夫婦で共有できる「当たり前」をどこに設定するか、をお互いが納得できるところに設定しなければなりません。
夫にとって「自分がやると子どもに嫌がられるから、母親に任せる」のが当たり前のことになったとしても、こちらが「私がやって当たり前」と納得できてない限りは「不満」になってしまいます。
なので、私が夫に「お願い」したのは「家族がいるときに仕事や自分のことをしたいときは必ず申告してからやる」ということでした。
これ、ある意味考えてみれば「それくらいの気遣い」は当たり前だとも思うのですが、「気遣い」が些細であれば些細であるほどなかなか共有できないものだと思います。
本当に「まあいいか」と思えない限りは、小さな不満はこちらから表明しないと、相手からはわかりません。むしろ、不満は小さければ小さいほど口に出さないとわからないものです。そしてその些細な問題や不平感は「イライラ」という負債になり、夫婦関係をじわじわと蝕みます。
なので、私は毎晩毎晩しつこく「家族が一緒にいるときに無断で部屋に籠もらないで」と言い続けました。そしてその結果、今は「一声かけて部屋にいく」ということが「当たり前」になりました。
夫の仕事が忙しい時期だったとしても、「今晩も寝る前の準備任せるね、お願いします」「仕事させてくだい」と夫からちゃんと「お願い」してもらえるようになりました。お願いされれば、イライラもしないし不満もありません。
実際のタスクをやる、やらない以上に「子どもの世話は、本来自分もやるべき仕事である」という当事者意識が薄れることのほうが、私にとっては問題です。当事者意識があれば、お願いや感謝も「当たり前」のこととして本人の口から出てきます。お願いや感謝は、人間関係の大きな「報酬」なので、夫婦間できちんとやりとりができるとストレスが激減します。
声かけするのは面倒で、それだけでも十分コストなのですが、長期的にみると「報酬」を得られることになり、精神的に楽になりました。自分の中の些細な不満をやり過ごさず、夫婦の「当たり前」を設定できるように日々気をつけています。
著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。