「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第216回のテーマは「結婚10年経って好きの度合いは」です。
我が家は結婚生活10年目です。私の両親もパートナーの両親も金婚式を迎えました。つまり結婚生活50年。それに比べたら、10年は超ヒヨッコですね。でも私は初婚が3年半しか続きませんでした。それでも、元夫との関係はそれまでの人生では一番長かったのです。なので、10年は記録更新中ということになります!
我々夫婦はお互いがバツイチの離婚経験者。仲良くなったのはお互いの結婚生活の反省会をよくしていたからです。そんなわけで「失敗しないためのパートナーシップ」を最初からかなり相談してから再婚生活を送っています。最近は10年経った節目で、お互いの関係を振り返ってみることも多いです。
「もう離婚はしたくない」という目標で共同生活を始めたにも関わらず、何度か「もうダメかな? 」「なるほど、だからこの人は離婚したのね! 」という気持ちになったりして、「離婚」がチラついたときもあります。計画を立て、対策をして結婚生活を始めたとしても行き違いやトラブルはどうしても起こります。
でも「離婚しないための方法」というのは、問題が起こらないようにすることも大事ですが、そういう状態をいかに乗り越えるかなんですよね。再婚するときに初婚と一番違っていたのは、「離婚するかもしれない」という前提があることでした。「離婚するかもしれない」「でも離婚はしたくない」というテーマは初婚にはなかったものです。自分達がなぜ離婚したのかを検証し、それを避ける方法を考えることにしたのです。
まず私が考えたのは、いかに「フェアな関係を作るか」ということでした。どちらかが強い関係だと、弱いほうが我慢をすることになってしまいます。我慢は話し合いや問題解決を遅らせてしまい、夫婦の信頼関係の構築に支障をきたすことがあります。なので「我慢しないでいられる関係」を作らなければならないと思いました。
フェアな関係にするため、最初に「事実婚」にしました。初婚では姓を変えることによって、変えたほうが相手に“従属した”というような扱いを一部の人からされたことがありました。どんなに自分たちが「フェアな夫婦関係です」と言っても、先入観で「夫の稼ぎがメインで妻はサポート」だと思い込まれるのはストレスですし、自分たちの関係にも響いてきます。それだけでなく、改姓したほうが一々手続きをしなければならず、結婚・離婚のダメージが大きいのもネックでした。
次に財布を別にすることです。基本的に生活費は割り勘。どちらかがどちらかの経済力に頼るのを前提としていると、やはりお金が稼げないほうの立場が弱くなりがちです。かといって、お金をたくさん持っているほうが、少ないほうに同じだけ払わせるのはフェアではありません。なので「どうやって共同のお金を使うか」を事前にきっちり話し合いする必要があります。細かく話し合わずに家庭として共同でお金を使うというスタイルも楽だと思うのですが、同時に「あなたばかりが趣味にお金を使っている」とか、どちらかが「家庭を優先してお金を使えない」などというアンバランスさがあれば揉め事の理由にもなります。なので、我が家では毎回どんなに面倒でも話し合いと精算をすることにしています。
そして共同財産は持たない。私は初婚では夫婦共同で大きな買い物をする前に離婚してしまったのすが、パートナーは妻と共同でマンションを購入していました。持ち家は、離婚のときにかなり揉めるものです。「家を手放したくないので離婚できない」という夫婦のケースも聞いたことがあります。もちろん家があることで絆が深まる関係もあると思うのですが、元々パートナーが持ち家主義ではなかったのもあって我が家は家は買わないというのが今のところの方向性です。
子どもは共同で育てていますが、現在の法律では事実婚では共同親権がないので私だけが親権者です。しかし、親権は以前は20年、今年からは18歳が成人年齢になったので、今8歳である息子の親権は残り10年です。そして子どもと同居している限り、どっちが親権者であるかはほぼ問題になりません。親権がなくても親は親なのでそこは問題にしませんでした。
そんなわけで「いつでもお互いの生活を切り離せる」状態で10年暮らしてきました。夫婦には色々な形の絆があると思うのですが、私の場合は「一緒にいなくてはならない」理由がたくさんあるよりも、「一緒にいたい」という気持ちでいたかった。そのために話し合い、問題を一緒に解決し、お互いの認識のズレを修正することにたくさん時間を使ってきました。
その結果「いつでも別れられる」環境だけど、別れる必要がないという状態を今のところは作れているのではないかと思います。大きな労力を割いてお互いのことを知った今、他の人と1からまたこういった関係を構築するのは容易ではないな……と思うようになりました。
お互いことをよく知り、理解しあえるのは相手が「運命の人」だからではなくて、お互いが時間と労力をかけて努力したらそういう関係になれるのだと思います。……いや最初からケンカもせずに理解しあえる夫婦もいるのかもしれませんが、私達はケンカしてぶつかり合うしかなかったのです。
相変わらずくだらないことから、深刻なことまでケンカはしていますが結婚当初よりも、齟齬が減り「仲良く」なっている実感があります。これからも油断せず、気を緩めることなくお互いが「一緒にいてよかった」と思える関係を作っていきたいです。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。