「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第130回のテーマは「一緒にいるだけでもいいときもある」です。

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先日、愛用していた仕事用のPCが立ち上がらなくなりました……。私は本当に息ができなくなるかなっていうくらい動揺しました。なんといっても、PCに生活のすべてが入っていると言っても過言ではありません。仕事のデータも仕事用の連絡手段も、かなりPCに依存しているからです。

なにかに依存するのはよくない、などと日ごろは思っていますが、フリーランスの自宅PCというのは生活の依存度が高いのです。もちろんスマホやタブレットで多少のことは補えますが、少なくとも私にとっては「PCが使えない」というのは、「社会と繋がっている窓が閉じられた」くらいの衝撃があります……。

とりあえずバックアップは取ってあるし、クラウドにデータもあります。なので壊滅的な損害にはならなかったのですが、仕事は少し遅れてしまいました。仕事に影響があるとさらに落ち込みます。しかし、落ち込んでばかりもいられません。フリーランスはすべて自前でなんとかしないといけないのです……。

私はずっとフリーランスで仕事をしてきており、困った時は基本的に自分でやるしかありません。私は全然PC環境には詳しくないので、毎回毎回困ってから自分で調べてなんとかしています。その昔、知り合いのフリーランスの友人には手厚くサポートしてくれる友人がいるのを知りつつ、私は自分だけでやるしかなかったとき、「私って人望がないのかな」など半泣きになりながら自分でPC環境を復活させました。そんな思い出がトラウマとなり、苦手意識をさらに深めているような気がします……。

もちろん、私も友人に助けてもらったことも多々ありますし、いろいろと詳しい友人に教えてもらったりして今に至ります。とはいえ、私は誰かに助けてもらうのが苦手なほうで、誰に助けてもらえばいいのか……などと思いがちなタイプ。なので「最も苦手なことを自分でやらざるを得ない」という状況になりがちなのです。

しかし! 今は隣の部屋にパートナーがいます。パートナーもそこまでPC関係に強くはないのですが、私と同じようにフリーランスなので「自分でなんとかしないといけない」人です。そしてやはり自分のPCへの依存度が高いので、私と同じくらいPCの不調によるダメージを受けるのです。

私はパートナーと暮らすまで、こういうときに私の気持ちをわかってくれる人が近くにいたことがあまりありませんでした。元夫はデジタルに弱く、自分のPCは持ってない人でした。なので、デジタル関係のサポートはいつも私がしていたのです。

現パートナーは、「デジタルに強くてなんでもやってくれる」というわけではないのですが、「気持ちをすごくよくわかってくれる」人なのです。これがとってもありがたい……! 解決自体は自分でしなくちゃいけないことに変わりはありませんが、「自分のときはこうだったよ」とかいろいろと相談でき、「ああ……すごく心細いときにパートナーがいてよかった! 」と心から思いました。

ですが、パートナーには「別にさるころ自分でやってるし、そんなに感謝するようなこと? また“川の水”なんじゃないの」と言われました。我々の中で「川の水を飲んでいる」というのは、「喉が渇いてないから幸せ! 」と「川の水を飲んでいるのに喜んでいる」ような状態を指します。前の結婚生活で、私が金銭面でも家事でも精神面でも元夫に頼れないのに、「寂しくないから幸せ」と感じていた状況を、友人に「川の水飲んでるみたいだね」と指摘されたのがきっかけです……。

パートナーには「別にオレがPCのサポートしてあげてるわけじゃないのに、そんなに喜ばれても」と言われました。いや……でも、長年一人きりでなんとかせざるを得なかったことを振り返ると、ただ横で「わかるよ~、大変だよね~」と言ってくれる人がいることが、なんとありがたいことかと……! いつもピンチのときに、自分が何もしなくても助けてくれるような人がいたなら、感じ方も違うのかもしれませんが。

とはいえ、私にとっては「凹んでいる状況を分かち合ってくれる人」がいるだけでも充分嬉しいことなのでした。今回のことで、人が喜びを感じるポイントというのは、本当に人それぞれだなあ……と感じてしまいました。

我が家はお互いの苦手なことを補い合う、ということはやっています。それはパートナーシップをもち、共同生活をする利点だと思っています。ですが、苦手なことを自分でやるときに、互いの気持ちを理解して励まし合うというのも、パートナーシップの利点だなあ……と感じました。

もちろんパートナーがPCの不調で困っているとき、私も助けることはできないのですが、「わかるよ~頑張れ~」と励ましたり、私が自分で解消した問題を教えてあげたりすることもたまにはあります。この辺は持ちつ持たれつ、助け合いができてて良かったなと思うところです。

ちなみに今回のPC不調の前に夫婦ケンカしており、解決したもののちょっとどんよりとした雰囲気だったのですが……「パートナーがいてくれてよかった」みたいなタイミングが訪れたので良かったです。夫婦は悪いときもあれば、いいときもあるな、と実感した出来事でした。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。