「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第119回のテーマは「親離れ子離れのタイミングについて」です。

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自分が子どもを妊娠したときから、「どういう親になりたいか」というイメージはあまり明確にはなかったのですが、「どういう親になりたくないか」だけはハッキリとイメージがありました。それは「子どもに人生捧げて、子どもに執着する親」です。

私は世話を焼くのも好きだし、誰かに何かしてもらうよりもするほうが好きです。まあ……実際今も息子に対して至れり尽くせりなところもあります。ただ、それを自分の生き甲斐にして、子どもが成人して親が老人になっても子どもに執着する親にだけはなりたくな~~~い! と思っています。

それゆえにまず、子どもの名前を「遠くに行けそうな名前」にしたくらいです。私のマンガなどに描くときは「マイル」という名前ですが、本名も意味合いとしては似た感じの「どこか遠くに行けそうな名前」なのです。基本的には親は先に死ぬので、自分の力で好きなところにどこまででも行ける子になってほしい……というのが、私の願望です。

私の親は結構ドライなタイプで、連絡も用があるときなどたまにしかありませんし、執着も干渉もあまりありません。かといって仲が悪いわけでもなく、ほどよい距離感と信頼関係があると思っています。にもかかわらず、なぜ私が「子どもに執着する親になりたくない」かというと、「気を抜いたら自分はそういう親になりかねない」と思っているからだと思います。

いや~実際に子どもを産んで育ててみると、めちゃくちゃ大変なこともあるのですが、私のような世話をするのが好きなタイプにはたまらない瞬間がたくさんあるんですよね。

子どもは親に甘えて頼ってきます。そして、こんなに全力でこちらのことを想ってくれる存在って、今までいたっけ? となります。この喜びは大きく、これを手放したくないために「子離れできなくなる親」がいるのも理解できる……とは思います。

ですが、私の周りには「子離れができない親」に困っている人達がたくさんいるのです。彼ら、彼女らの話を聞くと「子離れできない親……怖い!! 」とものすごい恐怖感に襲われてしまいます。

だって、もう子どもは成人して、親の庇護はいらないし自分の人生を生きているのに「親を大事にしろ~」と追いかけてくるんですよ。愛情のマッチングがうまくいってないことほど困ることってないですよね……。

私の思う理想の親は「自立しており、やりたいことがあって人生を謳歌している」ことです。これは実はパートナーにも、友人にもこういうタイプの人がいいなと思っています。

でも私は心のどこかで、パートナーに対しては「私がいないと死んじゃうくらいの人がいいな」と思っているところもあるのです。パートナーは大人なので、自分で人生の選択ができる。だからある程度はマッチングでいいと思うのですが、子どもに対して「いつまでも私がいないと死んじゃうままでいてほしい」というのは、親として失格だなと思います。

というわけで、ついつい子どもの前でも「子どもなんて、大人になったら年に一度くらい連絡してくれればいいよね」などと言ってしまいます。自分は年に一度、ということもないのですが。ちなみに2カ月に一度くらいは連絡はしてるつもりですが、これは多いのか少ないのか……? 私的には普通なんですが、我がきょうだい4人の中では最も「連絡しない」娘です。ちなみに子どもが生まれてから連絡する頻度は上がりました。最近は息子が「じいじとばあばに会いたい」ということもあるので、会う機会は増えています。

ところが、私がこんなことを言うので息子は「大人になったら年に一度しかお母さんに会えない」と思うようになっていたのです……。そして「大人になってお母さんに会えなくなったら、どうやって暮せばいいの? 」と言われてしまいました。6才児にこんな話しは早すぎた……と深く反省しました。

親が大きくなった子どもに依存するのが怖いと私が感じているだけで、大人になっても子どもが親に会いたい気持ちを否定しているわけではないんですよね。でも親との世界しか知らない子どもにはそんなことわからない……。

「大人になっても、マイルが困ったりしたらいつでも頼っていいし、甘えていいんだよ! マイルが40才のときはお母さんは78才だけど、助けてほしいときは絶対助ける! 大丈夫! 」と伝えました。

「困ってるときに助けられる親でいたい」というのと「子どもがいつまでも自分を頼る存在でいてほしい」は別ですよね。成長した子どもに対して親が「いつも関心をもっててほしい」と執着するのは、子どもの人生に悪影響があると思っていますが、親からちゃんと距離を取って、子どもが安心して暮らせるバックアップとして存在したい。というのが私の理想です。

子どもが大人になっても執着しないためにはどうしたらいいか、と考えるとやっぱり「自分の人生を謳歌する」ことだと思います。年を取っても友達をたくさん作って、やりたいことをやって、パートナーとも仲良く暮らしたいです。

今のところは、お母さん大好きべったりな息子ですが、小さいうちにたっぷり甘えてもらい信頼関係を構築して、離れていても大丈夫な親子になりたい。そして、大人になったら大きく羽ばたいて行ってほしい……と思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。