「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第117回のテーマは「心のケアは女の仕事だと思ってない? 」です。

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息子ができないことをやらせたいとき……我が家のパートナーはイライラしてしまい、不機嫌になり子どもに「圧」をかけてしまっていました。

隣にいる私はいたたまれず、なるべく息子をフォローしていたのですが……。第114回「必要なのは圧よりもサポート」の回でも書きましたが、息子が「怒られたくないがゆえに嘘をつく」という事態になり、根本的に話合いをすることになりました。

このとき、「息子はそもそも食べることに意欲が薄い。本人のモチベーションが高くないことには圧をかけるよりも、励ましたほうがいい」という話をしました。「絶対そっちのほうが思った通りの結果になると思う」という話をしたら……。

パートナーは「オレそういうの嫌いなんだよね」と言ったんですよね。

これ、さらっと出たけど、けっこう根の深い問題だなと思っています。私はここ最近、男性社会の「有害な男らしさ」について見聞きすることがあり、「男性は自分をケアすることがうまくできない」ということが社会の問題のひとつになっていると意識していました。私はこのパートナーの一言にも、男らしさの弊害が含まれていると感じてしまったんですよね。

この年代の男性は「強くあれ」とすり込まれているために、そもそも自分の「弱さ」を認識することが不得意になりがちで、自分が弱ってることが自覚できない。それゆえに、自分のことをケアできない。これが男らしさの弊害のひとつだと思います。自分のことをケアできないということは、他者が弱っていることにも意識が向きにくく、ケアをすることまで意識が届かない。より「男性的」であるタイプの人にはこういうことが多くあるのではないでしょうか。

パートナーは、私がいなくても1人で子どもの面倒がみられますし、子どもが病気になっても世話ができます。なので、かなりサポーティブでケアのできるタイプではあるのです。それにも関わらず、子どもの気持ちのケアについての話をしたら「自分よりも弱い存在に、優しく丁寧に接する」ということを「自分の仕事じゃない」と、拒否してしまいました。

これは子どもに対してだけではなく、つきあい始めのころは私に対してもあったのです。

パートナーは私の調子が悪かったり、落ち込んだりしているときに冷たいことがありました。なので私は、「弱っているときは『大丈夫? 』って言われたい」と伝えました。そのときも彼は同じようにイヤそうな顔をして、「『大丈夫? 』って聞くのって無意味じゃない? オレそういうの好きじゃないんだよね」と言いました。「気持ちに寄り添ってくれ」ということを言うと、1回必ずすごくイヤそうな顔をして拒絶するんですよね。

そのとき私は、「世の中の『女性』が、とか『普通』は、とかはどうでもいいけど、私は辛いときは『大丈夫? 』と言われたい。それによって心配してもらえてると思えて安心する。だから私と一緒にいたいならそうしてくれ」と話をしました。そう話すと「なるほど」と理解してくれて、以後はそのようにしてくれています。

一方で、パートナーは基本的に「男らしさ」を求められることを嫌います。ここで言う男らしさというのは、決断を迫られ責任を求められること。「なんでそれを男だけが背負わないといけないの? 」という考えの人です。私も「責任も決断も男女関わらず話し合って決めよう」というタイプなので、相性はいいです。

なので、我が家は家事を分担して経済的な責任や負荷も分担しています。ここまで「ジェンダーの平等」や「パートナーシップにおけるフェアさ」に対して意識を持っていても、まだまだ潜在的に「それは『オレの=男の』仕事じゃない」みたいなところがあるんだな……と感じてます。「男らしさ」の呪いの根深さ……!

ただ、パートナーはそういうことについて私がハッキリと伝えると、自分の中の価値観に照らし合わせてくれるんですよね。そして「それはそうだな」と納得すれば修正してくれます。

べつにパートナーも息子に圧をかけたり叱ったりしたいわけじゃない。スムーズに進まないことにイラ立ちを覚えるわけで、目的を考えれば怒るよりも励ましたほうがいい、ということに同意してくれました。パートナーは「合理的な判断」がしたい人なので、納得したら行動を変えてくれます。

彼自身、「気付きがあれば行動は変えられる」という考えです。私自身は嫌いなこと、苦手なことの理由をよくよく考えているうちにどんどんこだわりが減っていった自覚があります。心理的に「それは嫌い」と言って考えなかった選択肢も、「なぜ嫌いなのか」とか「本来欲しい結果は何か」と一歩踏み込んで考えてみたら、別にこだわる必要がなかったと気が付いたりすることもあるのです。

今回「子どもに優しく寄り添うことが嫌い」と反射的に思っていたパートナーは、その感情に明確な理由はなかったことに「気が付いた」のでした。

こうやってイライラの原因が解体されていくと、ストレスが減っていきます。子どもも大人も快適に暮らすために、「嫌い」「イライラ」の中身をひとつずつ確認していきたいなと思います。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。