FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は女性のお金の専門家・ファイナンシャルプランナーの山根純子さんが、夫の病気休職によりライフプランの見直しを余儀なくされたなつきさんに対しアドバイスします。

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◆相談者さんのプロフィール

相談者

相談者 なつきさん(仮名)
女性/パート/50歳

家族構成

夫(会社員/55歳)、(子ども2人は独立)

◆お悩み

この春、次女が大学を卒業し、これから老後資金を貯めようと思っていたところ、夫が発病し休職することになりました。子ども2人の学費と下宿代を支払ってきたので貯金が少ない上に、住宅ローンも残っています。予定が狂い、これからの生活が心配です。

◆なつきさんの家計収支

収入

支出

現在の貯蓄額


月収は夫手取り35万円、妻手取り9万円の計44万円。ボーナスは夫手取り年間129万円。 月の支出は、食費6万円、住宅ローン7.2万円、水道光熱費2万円、通信費9,000円、保険3.9万円、医療費1万円、車関係費2万円、娯楽費2万円、小遣い7万円、雑費4万円、仕送り(現在は入院費)8万円となっています。

※支出は、夫発病前のもの

貯蓄状況は、定期預金が482万円、普通預金が92万円です。

(1)夫の病状と家計の補足

近々退院し、今後は自宅療養になる。復職はできそうだが、復職時期や復職後の賃金は未定。有給休暇はすでに消化し、現在は積立休暇を利用中。医療共済から、365日を限度に入院中は日額1.5万円、自宅療養中は日額1万円給付される予定。

住宅ローン残額が262万円。年金見込額は夫190万円、妻90万円。現時点での退職金予定額1,000万円、個人年金保険は満期で992万円。

(2)ボーナスの使い道

・保険年払い 14.2万円
・固定資産税・自動車税 21万円
・年払い(動画配信、ロードサービス等の年会費、NHK受信料等) 4.5万円
・夫小遣い 10万円
・交際費(帰省、冠婚葬祭等) 20万円
・雑費(娯楽費、家電の買い替え、被服費等) 25万円
・貯金 34.3万円

◆FPからのアドバイス

復職時期や復職後の賃金の見通しが立っていないことが大きな不安材料ですね。今後1年半休職し、復職後の手取りが30%減、60歳定年再雇用時の手取りがさらに30%減と想定しライフプラン表を作成してみました。

当面の生活費は医療共済と傷病手当金で賄えますし、個人年金や退職金もありますが、長い老後生活分の生活費を考えると早急の対策が必要です。

アドバイス1: 使える制度を確認しましょう

有給休暇・積立休暇を使い切り賃金の支払いが無くなった場合、健康保険から傷病手当金の支給が受けられます。これは、病気やケガで休職して賃金がカットされている場合に通算1年6か月まで手当金が支給される制度です。

給付額の目安は給料の約2/3で、課税対象ではありませんが、来年5月までは住民税の控除が続くことと、退職しない限り社会保険料の負担があるので、なつきさんのご家庭では実質使える金額は1か月約22万円になる見込みです。

医療費の自己負担分が高額になった場合は、年齢や収入による上限額までの負担で済む高額療養費制度も利用できます。

また後遺症がある場合、状態によっては障害年金の受給や、障害者手帳の交付を受け税金の控除を受けられる可能性もあります。

アドバイス2: リタイア後の生活を見据えて家計のスリム化を

まずは、なつきさん自身が収入を増やしましょう。正社員の仕事が難しければフルタイムで働けるところを探し、社会保険に加入できる働き方をすれば、将来受け取る年金も増えます。

また、収入を増やすことと併せて支出も見直しましょう。

もし、ご主人が病気にならなかったとしても、年金生活を見据えれば家計のスリム化は必要です。この機会に消費のスタイルを変えると後々楽になります。なつきさんが年収200万円の仕事に就けた場合でも、年間80万円を減らす必要があります。どこから手を付けていいのか悩むと思いますが、支出を再度洗い出して優先順位を付けてみてください。

固定費はすでに支出が抑えられていますが、車を1台に減らすことができるなら、維持費や次回以降の購入費が削減できます。また、気になるのが、お小遣い、娯楽費、雑費等という名目でされている支出です。「ちょっとご褒美」や「ちょっと贅沢」も積み重なれば「大きな贅沢」になります。

これらの見直しは、家族の協力が必要です。ぜひ、ご夫婦で一緒に進めてくださいね。

◆相談者さんからのご感想

作成いただいたライフプラン表を夫に見せ、今後についての話をしてみました。私がフルタイムで働くつもりだと伝えたところ、夫も休職中はリハビリを兼ねて主夫業をすると言ってくれました。夫婦で協力して頑張っていきたいと思います。