社内の会議で、取引先との打ち合わせで、あるいはビジネスレターで、誤った敬語や言い回しを使ってしまった経験はないだろうか。そこで本連載ではビジネスシーンで陥りがちな誤用表現などを取り上げていきたい。

今回は、つい言い間違えてしまう言葉についてだ。

つい言い間違える言葉

つい言い間違えてしまう言葉と言えば、意味も語感も似通っている言葉に「おざなり」と「なおざり」がある。この2つの言葉を正しく使い分けることはできるだろうか。

「(おざなり・なおざり)なプレゼンをしたため、上司から叱られた」

「クレームが寄せられたが、(おざなり・なおざり)な態度で放置する」

■おざなり
「その場しのぎで取り繕う」「形ばかりで物事を済ませる」という意味。芸人が客の顔ぶれを見て"その座敷なりの芸"で適当に済ませる様子が「座なり」の由来で、皮肉を込めて敬語の「御」が付いたとされる。いい加減ながらも、やることはやる、それが「おざなり」。

■なおざり
「まともに着手せず放置しておく」「真剣に取り組まずそのままにしておく」という意味で、漢字をあてると「直(なお)去り」。文字通り、何もせずに立ち去ってしまうニュアンスで、いい加減ながらもやることはやる「おざなり」とは決定的に異なる。

正) 「おざなりなプレゼンをしたため、上司から叱られた」

正) 「クレームが寄せられたが、なおざりな態度で放置する」

また、つい誤って覚えてしまう言葉もある。例えば「のべつくまなし」「のべつまくなし」のどちらが正しい言葉か、すぐに判断がつくだろうか。

誤) 「のべつくまなしに、オフィスの電話が鳴り続けた」

文化庁のホームページには「国語に関する世論調査」の結果が公表されている。それによれば、有効回答数2,069人を得た平成23年度の調査では、「のべつくまなし」と誤用する人が32.1%にも上り、「のべつまくなし」と正しく使う42.8%に迫っている。「のべつまくなし」とは、休みなく続くという意味。幕なし、つまり幕を引かずに演じ続けることに由来している。

正) 「のべつまくなしに、オフィスの電話が鳴り続けた」