社内の会議で、取引先との打ち合わせで、あるいはビジネスレターで、誤った敬語や言い回しを使ってしまった経験はないだろうか。そこで本シリーズでは複数回に分けて、ビジネスシーンで陥りがちな誤用表現などを取り上げていきたい。

「謙譲語」の誤用に注意

初回は敬語について。丁寧語、尊敬語、謙譲語のうち、特に謙譲語は誤用しやすい。謙譲語の役割は、自分を低める(謙遜する)ことで相手を高めることだが、この謙譲の意味が含まれている単語を、敬うべき相手の行動に対して用いてしまう間違いが多い。まずは以下の例文をご覧いただきたい。

誤) 「どの案にいたしますか」

クライアントに決断を促す場面だろうか。悪くない言い回しのようにも思えるが、敬語に誤用がある。気を付けたいのは、動詞「する」の謙譲語「いたす」、尊敬語「なさる」の使い分け。例文は、相手が主語のため「なさる」を用いなければならない。

正) 「どの案になさいますか。ちなみに、私ならこれにいたします」 同様に、以下の例文にも謙譲語の誤用がある。

誤) 「○○様が参られました」

取引先から担当者が来社した由を、取り次ぎの者が連絡してきた、そんな場面だろうか。「参る、伺う」は、動詞「行く、来る」の謙譲語。この例文も相手が主語なので、動詞には尊敬表現の「いらっしゃる、おいでになる」を使うのが正しい。

正) 「○○様がいらっしゃいました」「かしこまりました、すぐに参ります」

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日本語を正しく使う―― 。こんな日本人なら出来て当たり前のことが、ビジネスシーンでは途端に難しくなる。同僚、上司、部下、取引先、顧客と様々な立場の人間を相手に、表現を使い分ける必要があるからだ。社会人たるもの、正しい日本語を身に付けて仕事の信頼を勝ち取りたい。

次回は別の観点から、謙譲語を誤用してしまう背景について説明していく。