この春、初めて一人暮らしを始めるという新入社員も多いだろう。新しい職場、新しい土地、新しい出会いに胸を躍らせているかもしれないが、防犯に隙が生まれやすいのもまた、この春の時期なのだ。空き巣などの犯罪に遭い、せっかくの新生活が台無しに……という悲劇を起こさないために、何をすべきか? セキュリティのプロこと「ALSOK」に、新生活の防犯対策について話を伺ってきた。

  • なぜ春は空き巣が増えるのか

    新生活に必要な防犯対策とは?

今回は「空き巣犯の手口」をテーマに、現代の空き巣事情を見ていきたい。

上層階も安全じゃない!? 現代の空き巣事情

空き巣と聞いても、「うちは3階だから大丈夫」「オートロックのマンションだから大丈夫」……などと考えている人も多いのではないだろうか? ALSOK広報部 主任であり、セキュリティ・アドバイザーの瀬戸拓郎さんいわく、その答えは「ノー」。「屋上や非常階段からベランダに侵入されることも多いですし、オートロックもマンションに入っていく住民のあとをつければ侵入できます」という。その証拠に、現代では以下のような空き巣も増えているそうだ。

・屋上や非常階段から上層階のベランダに侵入
・帰宅時に住民がドアを開けたと同時に押し入る
・SNSで旅行中の投稿を見て留守の住居に侵入

このように、つい安心してしまいがちな住環境でも空き巣は起こっている。常に防犯の意識を持つことが重要と言えるだろう。

空き巣が発生するメカニズム

被害に遭わないためにも知っておきたいのが「犯罪発生の3要素」というもの。例えば身近な「燃える」という現象にも「熱源」「可燃物」「酸素」の3要素があり、当たり前だがいずれかが欠けると燃えることはない。犯罪発生に関しても同様で、以下の3つの要素があるそう。

・「動機づけられた犯行者」
空き巣犯。

・「適当な標的」
長時間にわたって留守の家、手間をかけずに侵入できる家、周囲に気づかれず侵入できる家、逃走経路を確保しやすい家など。

・「有能な監視者の欠如」
人目につかない、証拠が残らない状況、空き巣の下見をしても住民から不審に思われない環境など。

例えば空き巣に置き換えると、「人目のつかない場所」に、「戸締まりが不十分な住居」があって、「空き巣を狙った泥棒」が通りかかったら、やはり犯罪発生のリスクは高まってしまう。

「特に冬~春にかけては空き巣被害が多くなりやすく、また新生活を迎えて防犯対策が不十分な住居が狙われることも多いです」と瀬戸さんは話す。

空き巣を防ぐための考え方

上記の3つの要素がそろうと犯罪発生のリスクが高まってしまうが、逆に要素を除去できれば、犯罪発生のリスクが減るとも言える。その対策の考え方は以下の通りだ。

・空き巣犯(動機づけられた犯行者)
→空き巣犯が恐れているのは、発見・通報・逮捕。そのため出来る限りリスクを回避し、証拠を残さずに犯行を遂げたいと考えている。空き巣犯を遠ざけるには、逆にリスクが高く証拠が残る環境をつくるべき。

・犯行を行いやすい家(適当な標的)
→留守を悟られないようにする、侵入に手間がかかるように思わせる、死角を減らす、防犯機器を設置するなど、空き巣が敬遠する家づくりを心がけるのが大切。

・発見・通報・逮捕されない状況(有能な監視者の欠如)
→常に「監視されている」「記録されている」と思わせる環境を作るのがベスト。そのためには近隣住民との連帯感などに力を入れることも重要と言えるだろう。

親と同居していると、防犯を強く意識したことが少なかったかもしれないが、一人暮らしでは自分自身で家を守らなくてはいけない。まずは、このように空き巣についての知識を深め、"どのような防犯対策が必要なのか"を考えることが被害に遭わないための第一歩。次回は空き巣犯の手口について解説してもらいたい。