どこのチェーンにも属さない、1店舗きりの店としてオープンしたハンバーガー専門店が人気店となり、2店目、3店目と出して成功していく。そうなると気になるのは、「その次」の展開だ。都内きっての人気バーガー店は一体、どこへ向かって行くのだろう? ズバリ聞いてみた。

  • ハンバーガー座談会の様子

    座談会の参加者は「BROZERS'」(ブラザーズ)の北浦明雄社長、「FUNGO」(ファンゴー)の関俊一郎社長、「FRESHNESS BURGER」(フレッシュネスバーガー)の船曵睦雄社長。座談会の進行と本稿の執筆はハンバーガー探求家・松原好秀

チェーン展開の話――BROZERS'の場合

松原:ブラザーズさんはチェーン展開をお考えですか? そもそも、「他人に任せられるものなのか」というのと、自分でやるとしたら「何店舗が限界」とお考えか、教えていただけますか?

北浦:僕は、「どこまでできるかな」っていう毎年のゲームを設定してるんですね。将来、「何十店舗が目標」ということじゃなくて、「今年、どのくらいまでできるのかな」というのを毎年、見ている感じなんですよ。

  • 株式会社ブラザーズ代表取締役の北浦明雄さん

    株式会社ブラザーズ代表取締役の北浦明雄さん。2000年に日本橋人形町にてハンバーガー専門「BROZERS'」を創業。当時、都内に数店舗しかなかった「グルメバーガー」業態を開拓し、今日のハンバーガー専門店ブームの礎を築く。2018年秋には日本橋高島屋S.C.のレストランフロアに出店。現在、都内で5店舗を経営

北浦:だから、今年であれば、品質のためにちょっと工場でも作ろうかとか、そうやって、ひとつひとつ上がっていくと、また新しい何かが見えてきて、それをクリアすると、さらに新しくなる。毎年こう、じわじわレベルを上げていきながら、ひとつ上に上がると、また違う風景が見えて、「じゃあ今度は、それをやろうか」みたいな、そんな感じなんですよね。

いま、ブラザーズは5店舗になったんですけど、5店舗なりの問題ってあるんですよ。どっちにしても上がるか、下がるか、どっちかじゃないですか? 商売に中途半端な状態ってないんですよ。

松原:現状維持は?

北浦:現状維持も「マイナス」です。で、ウチのスタッフは、みんな独立志向なんです。9割方みんな、独立志望なんですよ。今まで20人くらい独立してます。だから、「育てたと思ったら辞めていく」という、この悪循環が甚だしくて。でも、それも好循環なんですけどね(笑)。そんな中でも、ウチを好きになってくれて、独立の意欲はあったんだけど、「ブラザーズを支えていこう」と方向転換してくれるスタッフも中にはいるんです。

:あぁ、すばらしい!

  • 東京・両国の人気店「shake tree」

    ブラザーズで5年勤務した木村雄太さんは、店長を務めるなど、北浦社長の片腕として活躍。2011年に独立し、東京・両国に人気店「shake tree」をオープンさせた

北浦:でも、本当にごく僅かなんです。独立よりも少ないんですけど、10年選手とか8年選手とかっていうスタッフが、やっとちょこちょこ出てきているくらいで。だから、辞めた人にとって、「辞めなきゃよかった」という会社にしたいなと思いますね。

:同じです、うちも大体同じです。

松原:では、あらためて。ブラザーズさんは「何年後に100店」とか、そういう目標はお持ちでない?

北浦:店舗数がゴールじゃなくて、結局「自分」なんですけど、自分のレベルとか潜在能力とかね、「どこまで行けるのかな」っていうのを毎年、見ている感じです。

例えば、お金のコントロールなんか全然違うじゃないですか? 最初は2,000万円くらい借りて、次に億単位のお金を借りるとなったら、2,000万円とは違うレベルのゲームをすることになるんで、ビビりますよね? でも、それを乗り越えると、今度は何十億のゲームに挑戦できるようになるとか。そういう風に段階を踏みながら、それと向き合って、自分の「空間」を広げていく。手に入れる力を、ちょっとずつ高めていく感じですかね。

  • 東京・駒沢の「AS CLASSICS DINER」

    国内を代表する人気店、東京・駒沢「AS CLASSICS DINER」の店主・水上誠二さんは、ファンゴーの元店長。古巣のコンセプトを受け継ぎ、大きな公園のそばに同店を出店した

:すばらしい! じゃあこういうのはどうですか? ブラザーズの次は「シスターズ」……(笑)

北浦:そうそう、それね! ホントによくいわれるんですけど(笑)。「ブリトーもいいな」とか「サンドイッチもいいな」って思った時があるんですよ。ただ、ブラザーズの立ち上げでものすごく苦労したんで、5年くらいして、やっと土台造りができたっていうのもあるから、新しいものを「またゼロから」っていうんではなく、「ひとつのものを育てていく」という選択肢を取ったんです。それをさらによくして、強くして、っていう方が分散しないし、いいかなと。だから、多業態のファンゴーさんはすごいなと思うんですけど、そこはもう、「ひとつを愛する」というかね。もう、そこに自分のエネルギーを注いでいこうと。

――創業した西暦2000年、「ハンバーガーが10品あれば、同じ数だけサンドイッチもメニューにある」というのが、当時の一般的なやり方だったところを、ハンバーガーのみ30数品をズラリと並べて”特化”することで、今日のハンバーガー専門店のスタイルを確立した。そんな、ハンバーガーひと筋のブラザーズのお話。では、逆に、幅広くブランドを展開しているファンゴーはどう考えているのだろうか……。

チェーン展開の話――FUNGOの場合

:ブランドが違うのは、これはもう、ただ単に「子だくさん」と呼んでいて、だから僕は「ビッグダディ」みたいな感じで、ただ大変なだけなんです。トラブルしか起きないんです。それはもう子だくさんですから。

  • 株式会社ファンゴー代表取締役CEOの関俊一郎さん

    株式会社ファンゴー代表取締役CEOの関俊一郎さん。1995年、世田谷・三宿にサンドイッチ&ハンバーガーカフェ「FUNGO」をオープン。そのほか、"Farm to Table"がテーマのレストラン「bistro BARNYARD GINZA」、大人気のアップルパイ専門店「GRANNY SMITH APPLE PIE & COFFEE」など、計7ブランド、直営15店舗を経営

北浦:本当にゼロからやるって、すごいことだと思いますよ。

:まぁ「何でも来い!」っていってますけどね。でも、人間どこかに限界はありますから。

で、ファンゴーはいま24年目に入りましたけど、いままでもいっぱい出店だとか、いろんなチャンスはあったんです。が、「なぜできなかったのかな?」って、いま冷静に考えると、ひとつは、ウチの歴代店長は全員独立していて、店長じゃなくても独立して辞めていくスタッフがいて、だから、なかなか「文化」を引き継ぐ、つなげていくということが難しくて。

  • 「FUNGO」三宿本店

    1995年創業の「FUNGO」三宿本店。散歩ついでやドライブついでに気軽に立ち寄れる、世田谷公園向かいのこの立地を、関社長は8カ月かけて探し当てた

:もうひとつは「スタイル」というのがあって――。その店があることで、「新しいライフスタイル」を創り出すということなんですけども。

僕がファンゴーを始めたのは、米国へ留学していた6年間、「今日はパストラミだ」「BLTだ」って毎日のようにサンドイッチを食べていて、帰国後、そういう向こうの食べ物がすごく恋しくなったんですね。それで、どこか都内でハンバーガーを食べようと思ったら、「う~ん……これかよ」っていう味だったというところから、「じゃあ自分でやっちゃえ!」と思ったのが、ファンゴーというサンドイッチ屋の始まりなんです。

  • ファンゴーの「ベーコンチーズバーガー」

    ファンゴーを代表するバーガー「ベーコンチーズバーガー」(レギュラー1,650円・税込み)。直火で焼いたUSビーフ130gパティに、「ベーコンチーズバーガーのためだけに」作っているという極厚の自家製ベーコンが2枚!

:あとは、店の「世界観」ですね。店づくりの「コンセプト」のことですけれども、例えば、店にワンちゃんを連れて来られる、ゆったりできるような場所であったり、店の前にすごいクルマで乗りつけて、「湘南へドライブしよう」「じゃあハンバーガーでも買って行こうか」って大人がデートに使ってくれるような場所であったり、あるいは、公園が目の前にあって、テイクアウトして食べられたり……。

それらを詰め込んだ店が「ファンゴー」なので、すると、そういう立地もほかになかなかないし、ビルだらけの中だと、ちょっとね……というところで、2号店、3号店ってなかなかできないんですよ。出店するだけならできると思います。できるけど、23年やって、なかなかそこまではいけなかったので、やっぱり難しいかな。

  • アップルパイ専門店「GRANNY SMITH APPLE PIE & COFFEE」

    今やすっかり有名になった、行列の絶えないアップルパイ専門店「GRANNY SMITH APPLE PIE & COFFEE」。販売するアップルパイには40種類以上ものバリエーションがある

――「ライフスタイル」、そして「世界観」。立地条件の良し悪しだけでなく、そうしたさまざまな要素が深く関わりあって、店は成り立っている。だから、「ファンゴー」は2店目をなかなか出店できない。一方で、アップルパイ専門店「グラニースミス アップルパイ&コーヒー」は東京・神奈川・兵庫に現在8店舗と絶好調。この秋、マクドナルドの「McCafe by Barista」とのコラボ商品も発売された。まさに快進撃だ。

フランチャイズ展開の話――FRESHNESS BURGERの場合

――そんな中、現在全国190店舗を展開するフレッシュネスの船曵社長から、普段あまり聞くことがない「フランチャイズ」(FC)についての、こんな興味深い考察が……。

  • 株式会社フレッシュネス代表取締役の船曵睦雄さん

    株式会社フレッシュネス代表取締役の船曵睦雄さん。2014年にフレッシュネス入社。商品戦略やデザインコンセプトなどの既存事業のリブランディングを行う一方、「ベーカリー」「スイーツ」などの新事業も起ち上げ、規模を拡大。現在、全国に183店舗を展開(2019年8月末時点)

船曵:ブラザーズさんは、独立志向の人が9割っておっしゃってましたけど、飲食店って独立志向がすごく強いですよね。で、独立する人って、我々の社員とはタイプが全然違っていて、「自分で店の名前を決めたい」「メニューを決めたい」「ユニフォームを決めたい」「オレ流でやりたい」。だから、働いている店の大事なところを“盗んで”、吸収して、でもやっぱり「自分でやりたい」っていう人で。ハンバーガーに限らず、イタリアンでもケーキ屋さんでも、そういう人は多くいらっしゃると思いますが、我々の会社には基本的に、そういう人はあんまり「来ない」んですよ。

タイプが違っていて、フレッシュネスのブランドやチェーンとしての仕組みを使わせて欲しい。いろんな経営システムとか、食材の供給とか、情報システムとか、PRやマーケティングとかも本部が見てくれるし――という考え方で。だから、1人で何でもやりたい人、自分で1から10まで考えるのではなく、こだわりもその分、皆さんの会社の方々に比べると、またちょっと違うタイプなんですね。

  • 東京・代々木の「marger burger」

    そんなフレッシュネスにとってはレアなケースかもしれない。東京・代々木「marger burger」の店主・坪井真理子さんは、フレッシュネスバーガーの店長経験者だ。ブラザーズでも働いた後、2016年に友人と2人で同店をオープンした

船曵:だから、最近いる社員で「僕は将来、自分のハンバーガー屋をやりたい」という人や、「カフェをやりたい」って人は、すごく少ないですね。安定志向が強いです。いい意味でも、悪い意味でも。

松原:実は、フレッシュネスにも人手の問題があると聞きましたが?

船曵:2、3年ぐらい前に、ほかのハンバーガーチェーンのFCオーナーがみんな60代後半ぐらいになられて、「世代交代が……」というのを私も聞いてました。

フレッシュネスが店舗数を広げたのは、15年前、20年前です。そのころ、お金を持って「頑張ろう!」っていってくれた人たちは、当時で30代から40代だったので、FCオーナーの皆さんは大体、いま50代から60代ぐらいなんですよ。さすがに、若いころのような勢いはないので、そこから「もう5店舗出したい」という人は、なかなかいらっしゃらないです。そんな中、いま40代ぐらいかな? 新しいFCオーナーさんが増えてきた状況です。

それには業界の流れもあって、マクドナルドのOBがけっこう多いんですよ。いま、元マクドナルドのFCオーナーさんが増えてきていて、皆さん会社を辞めると、フレッシュネスとか同業界へ行くんですけど、マネジメントの優秀な方々が多いですね。

  • ハンバーガー探求家の松原好秀さん

    松原好秀。ハンバーガー探求家。評論家。2014年に「ザ・バーガーマップ東京」(幹書房)出版。ハンバーガー関連の企画でテレビ&ラジオの出演多数。映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(2017年)の公開記念キャンペーンも担当

北浦:「ブラザーズさんはFCやらないんですか? やらせて下さい!」っていわれたことありますけど、やっぱり、全く知らない人にやってもらいたくないな、っていうのはありますよね。さっきのスピリッツの話じゃないですけど。

船曵:FCを希望される方は独特の考え方があって、本当にオリジナリティを出したいオーナーさんとは違って、「自分でゼロからスタートするのはリスクが大きいし、時間もかかる。だから、成功しているビジネスモデルをFCでやりたい」っていう、もう入り口の考え方が違うんですね。

北浦:冒険せずに早く成功したいっていうか、収入を得たい、オーナーになりたいという人には一番、手っ取り早い、いい方法だと思います。

:「おんぶにだっこ」で全部、うまくいくと思っている人も多くないですか? 逆に怖いですよね。

船曵:FCというやり方にリスクがないということはありません。やはり、サラリーマンではなく経営者ですから、運営が悪ければ赤字になります。ただし、ゼロから独立するよりリスクは小さいと思います。

北浦:本部に何年か勤めてからやるとか、そういうシステムはないんですか?

船曵:基本的には、「外からいきなり」っていうのはないです。FCオーナーさんの店舗からの「のれん分け」はあるし、直営の店長からの社内独立なんかもありますね。

北浦:ココイチの創業者の宗次さん(宗次徳二さん)と仲よくさせてもらってて。ココイチは「夫婦でやる」っていうのがFCオーナーの条件だったんですよね。あれいいなぁと思って。結局やめないじゃないですか? 絆もあるから。ウチも夫婦なんですよ。専務が妻で、僕が社長で、もう十何年やってるんですけど。本当に助かってます。

:それは「夫婦円満」って意味ですか?

北浦:そういうことですね(笑)。もう24時間、毎日ずっと一緒にいるんで、普通の夫婦の何十倍も生きてるようなね、感じですけど、やっぱりぶつかる時はぶつかりますよ。でも本当にね、夫婦で力合わせたら強いですよ。本当に強いです。

  • ブラザーズ創業当時の北浦夫妻

    現在は専務取締役の北浦裕子さんとの2ショット写真。「創業時のブラザーズを支えてくれました」と北浦社長

多店舗、多業態、フランチャイズ……。1店舗からスタートした個人店の、その先の展開はさまざまだ。拡げること、大きくすること、人に任せること……。そんな話ばかりをしてきたが、この座談会最大のテーマは、忘れてはいけない、「長く続けること」である。

そこで、本連載の最終回となる次回は、話を最初のテーマに戻し、ハンバーガー店を「長く続けるには何が必要か」を再確認したい。さらに、大事な大事な「お金」の話。ハンバーガーの「価格」について、三者三様の角度から検討してもらったので、最終回もどうぞお楽しみに!

著者情報:松原好秀(マツバラ・ヨシヒデ)

ハンバーガー探求家。評論家。2014年に『ザ・バーガーマップ東京』(幹書房)出版。ハンバーガー関連の企画でテレビ&ラジオの出演多数。映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2017)の公開記念キャンペーンも担当