次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載ではビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第27回は「いまどき非常食」。
「いまどき非常食」って何?
豪雨、台風とあまりにも災害の多い、令和元年。日頃からできる災害対策として不可欠なのが非常食だが、非常食は「味気ない」「うまく被災時に食べられるのか疑問」「賞味期限のチェックが面倒でいざというとき期限切れになりそう」など、不安なポイントもある。
非常食としては熱源や水、鍋、缶切りやハサミ等の道具がなくても簡単に栄養が取れること、長期保存が可能であることが必須だが、さらに近年の被災者の声を生かしておいしさにもこだわった「いまどき」な非常食が登場している。非常時に少しでも食事を楽しめるよう様々な工夫が盛り込まれているのだ。
例えば、建築金物の商社である「杉田エース」が2014年に発売した非常食「IZAMESHI(イザメシ)」シリーズは、ご飯や麺、お菓子など普段の生活になじみのあるメニューが、開封してすぐ食べられるようになっており、人気を集めている。
同社は近年、東日本大震災での現地訪問の際に被災地の状況を目の当たりにし、「何か自分たちにできることはないか」と考えたという。「非常時こそ、日常的に食べられているおかずを食べていただけたらと考えている」(同社マーケティング戦略室 営業企画グループ 小島唯さん)そうで、普段と変わらない味で食べられることは、栄養面だけでなく、非常時の心の支えとしても大切だととらえている。
「いまどき非常食」はどこで買える?
杉田エースの非常食である「IZAMESHI」シリーズは都内・南青山の直営店「クラブエスタショップ」のほか、東急ハンズ、ホームセンターやネット通販でも販売されている。缶詰やパウチ、レトルト等いろいろなスタイルで、ご飯や惣菜、麺類やお菓子などをラインナップ。
前出の小島さんは「非常時だけでなく、登山やキャンプなどアウトドアの際や体調不良で料理ができない、弁当のおかずがもう少しほしいといった、小さな“日常のイザ”が発生した時にも使ってほしい」と話す。普段から消費しながら一定量を備蓄する「ローリングストック」という方法なら賞味期限が切れる心配がなく、食べ慣れた味であれば非常時にも抵抗なく食べられるからだという。
また、まったく逆の備蓄方法に沿った非常食もある。非常食を製造・販売するセイエンタプライズの「サバイバルフーズ」は、超長期保存が可能。なんと25年も保存できるというから驚きだ。
「サバイバルフーズ」は極限まで水分と酸素を除去するフリーズドライ加工で食材が腐敗しない状態にし、缶に密封したもの。「チキンシチュー」の他、「野菜シチュー」、「とり雑炊」、「えび雑炊」の4種とクラッカーがある。
こちらの商品はAmazonや楽天をはじめとするネット通販で購入することができる。同社マネージャー 福田孝二さんは「全メニューをセットで備蓄する人が増えていますね。近年備蓄している食品を食べる機会がより現実的になったためだと考えています」と話す。同社の商品は40年も前から企業や病院等でも利用されており、個人の備蓄としても25年も保存できると思うと、心強い味方になりそうだ。
「いまどき非常食」を食べてみた!
さて、紹介した「いまどき非常食」が本当においしく進化しているのかを確認するため、いざ実食。まず、25年保存できる「サバイバルフーズ」の「とり雑炊」から。
開封時、同商品はカラカラに乾いたフレーク状だ。非常に軽量だが、匂いは雑炊そのもの。熱湯を注いで5分待てば本来の食感に戻るわけだが、非常時に熱湯があるとは限らないので、水でも調理が可能。水の場合は10分で食べ頃だ。さらに水がない場合でも、フレーク状のままポリポリと食べてもOKだという。
フレーク状の一粒を食べてみると、サクサクと柔らかく、スナック感覚で軽く食べられた。雑炊として鶏肉の風味と出汁の味がしっかりついているので、これでも十分おいしい。次に熱湯を注ぎ調理すると、湯気から出汁のいい香りがしてきた。とろみがついた優しい口当たりで、ご飯粒も野菜も柔らかく、鶏の味がしっかり感じられて、申し分なかった。これなら、非常食としても子供から大人まで満足できるように思えた。
続いて、冒頭に紹介した杉田エース「IZAMESHI」シリーズから缶入りのマフィンを実食。
缶切りは不要で、缶を開けた途端に小豆の甘い香りが漂う。マフィン生地はふっくら、ざっくりとした舌触りで、香ばしい。軽食としてもおやつとしても満足感のあるおいしさ。これが3年も保存できると思うと驚きだ。
そしてもう1つ、IZAMESHIシリーズの「あんこ餅」も実食!
フリーズドライで水分が除去された餅6切れと、粉末あんこ、それらを戻すための水と割りばしまでが1セットとなっている。トレイに水を入れて1分で餅はプルプルに。粉末あんこも少量の水でペースト状にすると、パッケージとまさに同じおいしそうなあんこ餅が完成。これは楽しい!
食べてみると餅はプルプル、もっちり! 優しい甘みがあり、あっさりしたあんこペーストと合わせると風味豊かでなじみのある味わい。被災時にこんな甘い物が食べられたらホッとできるに違いない。
主食だけでなく、おかずやお菓子まで幅広くラインアップされている"いまどき"の非常食。おいしい食事が食べられることは、ストレスの溜まる被災時においてささやかな癒しになるかもしれない。災害が多い時代だからこそ、せっかく備蓄するのなら、非常食もおいしく便利なものを選びたい。