FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「豪ドル/円の動き」を解説します。

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リーマン・ショックまでの約1年の間に、パリバ・ショック、ベアー・スターンズ・ショックといった主に2つの大きな「ショック相場」がありました。その中で米ドル/円は、リスクオフの株安に連れる形で、着実に下落(円高)が広がっていったのです。

米ドル/円はそれまで約2年も、1米ドル=110~120円というたった10円程度の狭いレンジで、不気味な小動きが続いていました。2007年6月にかけて一時124円まで上昇し、ついにレンジを上放れたかといった動きになりながら、それから間もなく「パリバ・ショック」が起こり、下落へ急転換となったのです。

2007年8月にパリバ・ショックが起こると、米ドル/円は一気に110円割れ寸前まで急落となりました。かろうじて110円割れは回避されたものの、その後の反発は限られ、結局110円を割りました。そして2009年に入りベアー・スターンズ・ショックが広がる中、3月には一気に100円の大台も割れるといった具合に急落が広がりました。ところで、そんな米ドル/円に対して、豪ドル/円の動きはかなり違ったものだったのです。

FX界の「超人気通貨」オージー

2000年に1豪ドル=50円台だった豪ドル/円は、2007年に入るとついに100円の大台をも超えてきました。豪ドル/円の「夢の100円」突破となったのです。この頃の豪州の政策金利(中央銀行が金融政策の対象とする金利)は6%を超えていました。このことから、比較的高金利であり、長期的な上昇トレンドが続いていた豪ドルは、FXの投資家からも大人気となっていました。

  • 【図表】豪ドルドル/円の月足チャート(2000~2011年)(出所:マネックストレーダーFX)

    【図表】豪ドルドル/円の月足チャート(2000~2011年)(出所:マネックストレーダーFX)

ちなみに通貨には通称がある場合があり、豪ドルのそれは「オージー」です。オージーとは、オーストラリアやオーストラリア人の意味で、「オージー・ビーフ」などといいますよね。その意味では、豪ドルをオージーと呼ぶのは、そのまんまではありますが。ちなみに、同じオセアニア地域のNZ(ニュージーランド)の通貨、NZドルは「キウイ」と呼ばれます。

話が横道にそれましたが、本題に戻し、豪ドル/円、つまりオージー円の話です。「夢の100円」突破となったオージー円でしたが、さすがにパリバ・ショックに巻き込まれると、「夢の100円」を割り込み、勢い余って一気に90円をも割り込む暴落となりました。「怒涛のオージー快進撃もここまでか!?」と思いきや、違ったのです。

すでに述べたように、米ドル/円が着実に下値を切り下げていったことを尻目に、オージー円はなんとあっという間に「夢の100円」に復帰したのです。当時の感覚からすると、大人気、超人気の通貨だったオージーは、少しでも安くなったら買いたいと思っていた投資家の買いが殺到したのでしょうね。

さすがに、その後もベアー・スターンズ・ショックなど、世界的に株安、リスクオフが広がる中で、超人気オージーといえども、「夢の100円」を割れていくところとなったのです。しかしパリバ・ショックの安値を割れることはなく、そしてリーマン・ショック前には3度、「夢の100円」に復帰しました。

当時のオージーは、FX投資家の信頼を裏切ることのない絶対的存在のようになっていたのかもしれません。しかしそんなオージーが、リーマン・ショックの中で激変に見舞われるところとなるのです。