FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「アベノミクス円安の最後の謎」について紹介します。
これまで、ほんの2年半で約50円もの大幅な円安が進んだ「アベノミクス円安」について見てきました。ただ、この「アベノミクス円安」は、これだけの歴史的大相場でありながら、ほぼ予想通り、大げさな言い方をするなら「予言がほぼその通りになった」結果だったのです。そこで、「アベノミクス円安」の「最後の謎」として、なぜ歴史的大相場は、ほぼ予言通りの結果になったのかというテーマをとりあげてみたいと思います。
予想通りだった2015年120円超の歴史的円安
事実として、「アベノミクス円安」のピークは、2015年6月の125円でした。「アベノミクス円安」が始まる前、2012年11月に80円を下回っていた米ドル/円だったことを考えると、短期間に記録的な円安となったわけですが、下記のようにそれは「ほぼほぼ予想通り」だったのです。
私は、2013年1月に「FXドリームチームが教える為替の鉄則」(扶桑社)という本を共著で出版しました。その帯は「円安時代がやってくる!」。これでまず分かるのは、その後の円安大相場にもかかわらず、この時点でまだ「円安時代」とはなっておらず、だからこそ、「円安時代がやってくる!」というタイトルには新鮮味があったということです。
さらに、この本の80ページには、「8年サイクルから、次の円安のピークは15年(2015年)」という、日本屈指のチャーティストで、私の「盟友」である宮田直彦氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券エクイティリサーチ部チーフテクニカルアナリスト)のコーナー・タイトルがありました。
そういったことを受けて158ページには、「円安は2015年120円になるのか」といった私のコーナー・タイトルが書かれていました。
これまでも見てきたように、記録的な円安大相場となった「アベノミクス円安」のハイライトは、2013年4月からの黒田・日銀総裁が主導した大胆な金融緩和だったとの理解が基本でしょう。その意味では、これまで紹介した「予想」は、そんな「黒田緩和」が実現する前のものでしたが、それが歴史的な「アベノミクス円安」としてほぼその通りになったということです。
ちなみに、私は2013年4月には「超円安・超円高の本命シナリオ」(カンゼン)という本を出版しました。これは、上述の黒田緩和第一弾とほぼ同じタイミングだったのですが、その本の帯は「2016年まで円安・株高は続く」でした。
この2013年春の頃には、株高・円安もかなり進み始め、より強烈な予想が期待され、私もそれがさらなる過激な株高・円安予想になった感は否めません。それはともかく、アベノミクスの歴史的な株高・円安は、ほぼ事前に予想された結果だったということです。それはなぜか、といった「最後の謎」について、次回考えてみたいと思います。