2009年が終わり、2010年に入った。今年、FXで資産運用するためにはどういう点に注意すればよいのか。特に、8月からスタートするレバレッジ規制を前提にした場合、ポイントは下記の4点に集約される。2010年のトレードをスタートさせるにあたって、頭の片隅にでも置いていただければ幸いだ。

<ポイント1>証拠金は豊富に入れる

FXは「レバレッジ」という特性を活かすことによって、投資の世界にある種の革命を引き起こしたと言っても良い。従来、投資といえば「お金持ち」の資産形成手段と思われていたが、FXはわずか10万円の証拠金でも、レバレッジを数百倍まで膨らませれば、数千万円規模のポジションを持つことができる。そのため、年齢層の若い人を中心に、爆発的に口座を増やしてきたが、2010年8月から始まるレバレッジ規制によって、最低証拠金を増やす必要が生じてくる。

たとえば、これまでレバレッジ100倍の取引をする場合、10万円の証拠金で最大1000万円のポジションを持つことができたが、2010年8月から最大レバレッジが50倍に制限されると、証拠金を20万円にしなければならない。さらに2011年8月からの最大レバレッジ25倍になったら、必要な証拠金は40万円だ。

つまり、今までと同じポジション額を維持しようとするならば、それだけ多額の証拠金を納める必要がある。また、証拠金を増やせないという場合は、その分だけポジションを減らさなければならない。

いずれにしても、「少額資金で大きな取引」というFXの魅力は、相当程度、失われることになるが、逆にいえば、ギャンブル的なトレードは少なくなり、資産形成のための外貨投資という位置づけで、FXが注目される可能性が高まってくる。

<ポイント2>超短期売買が困難に?

ここ1~2年、FXのトレードの主流は、「スキャルピング」と呼ばれる超短期売買だった。 しかし、それはレバレッジを数百倍まで高められたからこそ実現できた技だ。これから最大レバレッジが50倍、そして25倍へと制限されれば、数銭程度の小さな値ざやを狙って超短期売買を繰り返すスキャルピングという技は、通用しなくなる。

したがって、これからのトレードスタイルは、中長期的なトレンドを取りにいくというのが主流になるだろう。

また、投資スタイルが変われば、おのずとトレードに際しての判断材料にも変化が生じてくる。超短期売買では、テクニカル分析が売買判断の重要な指標だが、中長期投資では、ある程度、ファンダメンタルズも加味していく必要がある。

特に、米国の通貨政策は、中長期的なトレンド形成に大きな影響を及ぼすので、米政府がドル安容認なのか、それともドル高支持なのかという点は、常に判断材料として頭に入れておくと良いだろう。

<ポイント3>安心できるFX会社を選ぶ

レバレッジ規制が行われることで、FX会社の多くが破綻に追い込まれるといわれている。それだけに、安心できるFX会社、破綻するリスクの小さいFX会社を選んで口座を開くことが肝心だ。

もちろん、信託保全が徹底されているので、自分が取引しているFX会社が破綻や廃業に追い込まれたとしても、証拠金など顧客資産は保全される。

ただ、破綻や廃業ということになったら、その時点でポジションは強制清算させられることになる。その時点で、自分が持っているポジションに含み損が生じていた場合には、含み損が実現損に変わってしまう。損失をリカバリーするチャンスが絶たれてしまうのだ。 そのリスクを回避するためには、信用力のあるFX会社を選ぶことが肝心だ。表は、預かり高と口座数のランキングだが、出来れば預かり高が、少しずつでも増加傾向を見せているFX会社を選ぶのが無難だろう。

<ポイント4>市場取引に注目

最後に注目したいのが税金だ。FX会社は店頭取引会社と市場取引会社がある。店頭取引会社の場合、FXの売買で得た利益は雑所得扱いで総合課税の対象になるが、市場取引会社であれば20%の申告分離課税で済む。

また、損失については3年間の繰越控除が認められることや、株価指数先物取引や、商品先物取引などとの損益通算が認められることなど、税金面だけを見れば、市場取引会社の方が有利になる。

レバレッジ規制が行われていない現時点では、高いレバレッジを用いたトレードが出来るということで、どうしても店頭取引会社が注目されるが、今後、レバレッジ規制が行われれば、店頭取引会社と市場取引会社との間に、レバレッジ面の差が無くなってくる。その時、市場取引会社の税制面のメリットがクローズアップされてくるだろう。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。