このコーナーでも何度か取り上げたことがあるが、海外FXの使い勝手について、今一度、検証してみる必要がありそうだ。

来年、いよいよレバレッジ規制が現実に行われ、日本のFX会社は最大50倍までのレバレッジしか認められなくなる。でも、海外FX業者は日本の規制で網をかけることができないため、レバレッジ規制などを受けずに済む。その魅力、注意点などを自分自身で判断し、興味があれば海外FXに口座を開設してみるのも、一興かも知れない。

まず、メリットから考えてみよう。

言うまでも無く、日本の規制対象からはずれることだ。結果、最大レバレッジが100倍、200倍、あるいは400倍というハイレバレッジの取引を、来年夏場以降も続けることができる。レバレッジ・ジャンキーかどうかはともかく、少額の証拠金を効率よく運用したいと考えている個人投資家にとって、この魅力は何者にも替えがたいくらい大きなものになるはずだ。

業者の信用力という点は、果たしてメリットに入れて良いものかどうか、いささか判断に迷う部分もあるが、ここではとりあえずメリットに入れておこう。海外のFX会社は、日本に比べて設立要件が厳しく、スイスのFX会社に至っては、銀行業の免許を必要とするところもあるという。

もちろん、すべての海外FX会社がそうだというわけではないので、玉石混交のところもあるとは思うが、事業継続性という点を考えると、最近のようにどんどん自主廃業を決めている日本のFX会社に比べれば、ある程度、長年にわたってビジネスを展開している海外FX会社の方が、安心できる面はある。

通貨ペアも豊富だし、なかにはCFD取引を扱っているところもある。どうやら日本では、CFDについてもレバレッジ規制が強化されるということなので、商品面での魅力が大幅に後退してしまいそうだ。この点、ハイレバレッジでのCFD取引が可能な海外FX会社は、商品の選択肢が幅広いという部分でも、大きな魅力を持っている。

一方、デメリットはどこにあるのか。

前述したように、海外FX会社は玉石混交であり、本当に信頼のおける業者はどこなのかというのが、分かりにくい。日本に在住する個人投資家向けに情報を開示している海外FX会社はなく、自分で実際にホームページにアクセスして、調べていかなければならない。これは、なかなか骨の折れる作業だ。

もし、口座を開くことができたものの、どうしても信用できないというのであれば、まず少額資金を預けて、実際に取引をしてみよう。ポジションを清算し、利益相当分を送金してもらえるかどうか、きちっと確認してみる。送金手続きが完了するまでに、異常に時間がかかったり、送金手続きをとってもらえなかったりするような海外FX会社とは、それ以上の付き合いをしない方が無難だ。

海外FX会社は、日本にいてはなかなか実態を把握することができないため、どうしても「怪しい」というイメージが付きまとってしまう。でも、最近ではZulu Tradeのような海外のシグナルプロバイダーを使った自動売買を行う際にも、まず海外FX会社に口座を開設することが前提条件になる。このところ、日本の個人投資家の間でも、Zulu Tradeが話題になってきたことを考えると、海外FX会社に口座を開設することに対する心理的なハードルも、かなり下がってきているのではないだろうか。

加えて、最近では日本人による日本語サポートを行っている海外FX会社もあるという。日本の居住者というよりも、海外に居住している日本人向けサービスと考えた方が良さそうだが、結局、口座開設手続きや実際のトレードはすべてインターネットで行う。つまり日本語対応の海外FX会社なら、居住地に関係なく使うことができるということだ。

実際、どのような海外FX会社が日本語対応しているのかといった点は、自分で調べてみよう。そんなに難しい方法ではない。Googleなどの検索エンジンに「海外FX」と入力して検索してみれば、かなり多くのサイトがヒットするはずだ。実際に解説を読んでみると、日本のFX会社に口座を開くのと大差がないことに気付くだろう。

レバレッジ規制の実施まで、残り8カ月程度。そろそろ、規制がスタートした後の投資戦略をどうすればよいのかなどを、具体的に考える時期に来ている。もし、どうしてもレバレッジを下げると、自分の投資戦略が成り立たないという人は、一度、海外FXについて調べてみてはどうだろうか。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。