生命保険に上手に加入するための秘訣は?

今回は「金融リテラシー」と生命保険の関係について切り込みます。株式などで投資をすることに関しては抵抗を感じる人が多いのですが、生命保険に関しては1つの契約のみならず複数の契約をしている人もたくさんいます。ただ、「知人に勧められて保険に加入したけど、どのような保障内容なのか良く分からない」という人も非常に多いように感じています。

  • よく分からないまま生命保険に入っていませんか?

過去、何度か保険会社の保険金不払いという問題が露呈した際も、契約者自身が請求をしていないという件数が多かったことがそれを如実に表しています。

株式投資も生命保険も同じ

広い意味で、「将来の不確定」と向き合うという点では株式投資も生命保険も共通すると言えるでしょう。ただ、元本割れをする、つまり、損失が生じる可能性がある株式や投資信託を購入することにはハードルが高いようで、金融リテラシー調査(金融広報中央委員会 2016年)によると約7割の人が株式や投資信託を購入したことがないと答えています。

一方、生命保険への加入率はおよそ8割(生命保険文化センター)。多くの人が一定の保険料を払っていることが分かります。

例えば「保険期間10年で、その間に所定の状態になると保険金が給付されますが、その状態にならなければ保険料は掛け捨てとなります」という契約であれば、ほとんどの人が払った保険料が掛け捨てになるわけですが、この掛け捨てについてはそれほど抵抗を感じません。

そして何より前述したように、それなりの保険料を払っているにもかかわらず、どのような保障か分からず、保険給付事由に該当しても請求さえしていない。というのは「投資で損失」を計上するよりも、もったいないことかもしれません。

海外と比較しても興味深いデータがあります。日本人のGDPに対する保障総額は4倍以上に及びますが、アメリカ、ドイツ、イギリスはいずれも1倍程度であるという指摘(ニッセイ基礎研究所明田裕氏)もあります。

1人あたりの死亡保障額も日本は約1,600万円であるのに対して、アメリカは約600万、ドイツやイギリスは200万程度です。(1ドル100円換算)。日本人は他の主要国よりも過剰に生命保険に加入していると言えそうです。

都道府県別データから分かること

そこで筆者は過剰な生命保険も日本人の金融リテラシーの低さが影響しているのでは?と思い、都道府県別の金融リテラシー調査や生命保険に関するデータを用いて様々な調査を行いました。すると1つの傾向を見出すことができたのです。

金融リテラシー調査項目の1つに以下の質問があります。

Q1.「現在加入している生命保険を選ぶ際、他の生命保険と比較しましたか」

この質問に対して「はい」と答えた割合が高い都道府県と低い都道府県を5県ずつ調べたところ、以下の結果がでました。

Q1の回答 平均保険契約数 平均死亡保障額(千円)
「はい」の割合が高い上位5県 2.88 13,863
「はい」の割合が低い下位5県 3.45 17,311
全国平均 3.1 15,673

しっかり生命保険加入前に他の保険と比較したと回答している上位5県は全国平均よりも保険契約数、平均死亡保障額が少なく、その逆に、下位の5県はいずれも全国平均を上回る結果となりました。また、以下のような質問も金融リテラシー調査にあります。

Q2.最も有利と考えられる金融商品を選ぶために、他の金融機関あるいは他の金融商品と比較しましたか。

この質問に関しましても、さきほどと同じ調査を行ったところ、以下のような結果となりました。

Q2の回答 平均保険契約数 平均死亡保障額(千円)
「はい」の割合が高い上位5県 2.78 13,199
「はい」の割合が低い下位5県 3.24 16,154
全国平均 3.1 15,673

保険に限らず金融商品を契約する前に比較したかどうかという質問を用いた検証でも、上位5県と下位5県、同様の結果となったのです。

比較検討をすることが大切

金融リテラシーとは「お金に対する知識と判断力」です。しっかりと知識を身に付け、適切な判断をしていく必要があります。

都道府県別で2つのアンケート結果と保険加入状況から、比較することが過剰な保険契約を避ける傾向にあることが分かりました。比較することは、加入しようとしている保険契約内容を知ることにもなりますし、そもそも生命保険が必要なのか? 教育費や老後には一体幾らお金がかかるのか? ということと向き合うことにもなりそうです。

「適切な死亡保障が幾らなのか」というのは別の議論となりますが、私達は1世帯あたりで年間約38.2万円の生命保険料を支払っているのです(生命保険文化センター)。10年間にするとおよそ400万円。高級車が購入できる金額です。車を買う時、きっと皆さんはメーカー、車種、色などいくつもの選択肢の中からじっくり検討して、自分にあった1台を選ぶはずです。

ぜひ、生命保険も車を選ぶかのように、じっくり検討してください。保険に関する知識がなくても比較検討をすることで少しずつ知識も身に付くはずです。そして、こういったお金に対する行動意識が、金融リテラシーの向上につながっていくと思います。