「無痛分娩だと愛情が湧かない」「離乳食は手作りがいちばん」――昔から育児当事者を苦しめてきた子育てにまつわる迷信や神話、さらにネット社会で広がる真偽不明の育児情報。

そんな育児の「これってほんと? 」について、ツイッターで人気の小児科医・ふらいと先生をはじめとする専門家たちが答える1冊が登場しました。この連載では、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)より、一部抜粋してご紹介します。

産後のお母さんはホルモンの影響で寝なくても平気になる?

  • ※画像はイメージです。

A. いいえ。

少しでも多くの休息、睡眠が必要です。授乳以外のことはすべてまわりがしてあげましょう。

産後の6週間を産褥期といい、体が元に戻るまでの期間だと考えてください。分娩時に骨盤や、その内側にある骨盤底筋群が大きくダメージを受けているため、そのなかでもとくに3週後までは歩き回ったり重いものを持ったりせず、横になって過ごすのが理想です。

産後のホルモンについていうなら、むしろ睡眠を必要とする状態になります。赤ちゃんがお腹から出ていったあとは、ほんの数時間以内に、女性ホルモン値が急激に下がり、閉経後と同じレベルにまでなります。心身ともに負担がかかるうえ、不安定になりやすいのです。

しかし母乳育児をするためには、産後すぐから頻回授乳をする必要があります。そうしないと母乳が分泌されるようにならないからです。この時期の頻回授乳、それにともなう睡眠不足や体力消耗のハードさは、もっと広く知られてほしいです。

そもそも、寝なくて平気な人はいません。育児がはじまったばかりの人にはとくに休息、睡眠が必要。産後ハイという言葉も聞きますし、寝なくても平気!と思っている人もいるようですが、これは産後の女性全般に当てはまるものではないですし、その状態がずっとつづくとも思えません。産後の睡眠不足で集中力が落ち、赤ちゃんを落としてしまうなどの事故も絶えず報告されています。

お母さんの睡眠不足は、本人だけでは解決できないものです。授乳以外の家事育児をまわりが担い、細切れでもいいので十分な睡眠時間を確保できるようにしましょう。

答えた人:産婦人科 宋美玄

東京・丸の内の森レディースクリニック 院長。2児の母。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的として活動している。著書に『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』(内外出版社)、『産婦人科医 宋美玄先生の 生理だいじょうぶブック』(小学館)など。Twitter:@mihyonsong

『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』

(西東社刊/1,430円)
もう悩まない、ふりまわされない! Twitterで正確な医療知識を発信しつづける"ふらいと先生"待望の書。子育ての常識は日進月歩。昔は当たり前だったことが今はまったく違う、ということはたくさんあります。また、ネット社会になり育児不安をあおるようなうわさやうそかほんとかわからない情報がSNSなどをつうじて広く拡散されるようにもなりました。いっぽうで、お母さんだけに負担を押しつけるような育児の迷信・神話は変わらず存在し、いまだ「呪い」のように育児当事者を苦しめています。そのひとつひとつについて「これってほんと?」と問い直し、専門家が最新の知見に基づいて科学的に答えていく一冊です。
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