アフリカに生息するイヌ科の動物・リカオン。よく似た外見のハイエナと混同されることもありますが、リカオンのほうがずっと小型です。そして分類上は、ハイエナはネコに近い仲間で、リカオンはイヌの仲間となります。

  • リカオンのチームワーク力&結束力

集団行動で助け合う

リカオンは、「イヌ科の中で最も社会的」といわれる通り、群れで暮らし、助け合いながら子育てをします。自然下では、大人と子どもからなる数十頭の大きな群れをつくることもあり、大人はオスもメスも、すべての子どもをわが子同様に分け隔てなく世話をします。

すらっと細身の体に小さめの頭、先が丸くなった大きくて愛らしい耳、それから長い脚……見た目も魅力的な動物・リカオン。「自然に近い群れで観察できる」と人気となっているのが、「富士サファリパーク」です。

群れごとに展示場を分けて、飼育・展示しています。走りが得意なリカオンのため、展示場を広くして、小さな池も設置。自由に走り回ったり、水浴びをしたりする様子が観察できます。

狩りの成功率が高い理由

リカオン担当の飼育員の堤夏奈人(つつみ・かなと)さんに聞きました。リカオンは肉食動物のなかでも、狩りの成功率がトップクラスと聞きますが、身体能力も優れているのでしょうか?

堤さん:えさをあげるとき、助走することなくその場から垂直に2メートル以上、ヒラリと跳びあがって上手にえさをキャッチするところが見られます。体高は1メートル未満なので、自身の体高の倍以上を跳べる計算になりますね。犬歯や臼歯が鋭く、鶏肉を骨ごとバリバリと音を立てて食べるのも迫力があります。

それはすごい! 人間だったら、3メートル以上跳びあがれることになりますもんね……。

リカオンは、自分の何倍も大きなヌーやシマウマのような大型の獲物をしとめると聞きます。ジャンプ力が優れているとはいえ、リカオン自体は小柄な動物です。狩りに成功するための秘訣はあるのでしょうか?

チームワークで勝負する

堤さん:自然下では、仲間同士協力して狩りをします。サファリパークで暮らすリカオンは狩りをする必要はありませんが、習性の名残なのか、隊列を形成して歩くことがあります。先を行く個体が通った場所を、同じペースでまったく乱れず見事な一列になって歩いていくんですよ。チームワークと仲間同士の結束力がうかがえる行動です。

そんなチームワーク力に加え、時速50km以上で30分を超えても走り続けるというから驚くばかり。スタミナ力にも感服です。

その一方で、寂しがりやなところも。続いて、獣医師の島田孝一さんがこう教えてくれました

島田さん:展示場で寝るときは、身を寄せ合い寄り添って寝ています。そのほか、獣舎に入れない仲間にえさを分け与えるといった、友情あふれる行動も。ケガや体調不良などの事情から、獣舎に1頭だけ残すと、寂しがっているのか遠吠えのように鳴き、仲間を呼ぶこともあります。

  • 寂しがりやのリカオン

体は小さくても粘り強さと、チームワークで勝つ。ビジネスだけでなく、人生訓としても心に刻みたいことです。

いつか叶えたい大きな目標を達成するためには、リカオンのように普段からの信頼関係やお互いの能力を補い合う結束力が大事ということですね!

●取材協力
富士サファリパーク
静岡県裾野市須山字藤原2255-27
055-998-1311