特例の概要を理解したならば、続いてメリットとデメリットについても把握しておきましょう。

メリット

・一定金額まで非課税である
・一括贈与により、相続財産を減らすことができる
・祖父母からの贈与は、相続を1段階ショートカットできる
・贈与を受けることにより、生涯収支が改善する

デメリット

・制度が期限付きである
・手続きとその後の引き出しなどが面倒
・使い切らなければ贈与税がかかる
・そもそも相続税がかからない場合は、相続財産を減らす必要はない(相続税を支払う比率は数%程度)
・将来の相続を配慮した贈与でなければ、争いの種になる可能性もある
・一括してまとまった資金を手にすると、それだけ生活の幅が広がりやすい。その都度使い方を確認し、暦年贈与をした方がメリットがある

今後は「不妊治療」へのニューズが増える公算大

結婚・子育て資金の贈与の受け取りが必要ということは、特別な場合を除き、人生設計が不十分だということにつながっていないでしょうか。そうした場合、一括贈与された資金が有効に活用できるかどうか大いに疑問です。

おそらくその場しのぎか、生活水準が上がっていくだけの可能性が高いように思われます。その都度、生活設計を確認しながら、暦年課税を利用して必要最低限を贈与していく方が、本人たちのためにもなるのではないかと思います。

「結婚・子育て資金贈与の特例」が比較的有効と思われるケースは、「不妊治療」への支援ではないでしょうか。「不妊治療」は金銭的、精神的負担が重いのが実情です。晩婚化が進み「不妊治療」のニーズも高まっていくと思われます。

贈与は金銭的に大いに助かるだけでなく、一括贈与をした後は本人の裁量に任せれば、精神的負担も少ないでしょう。そのほか、出産に関するケアなども有効に活用できそうです。

また、「子どもが大病を患った」などの場合で治療費が不足するとなれば、特例などを考える前に祖父母などは資金を提供するでしょう。こうしたケースに現実に贈与税が課せられるかどうかは疑問ですが、手続き的にタイミングに問題がなければ、念のために特例を利用しておきましょう。

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。